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恩着せがましくなさ

招魂祭前夜祭』というものに行って来た。

職場から徒歩10分圏内にある打吹公園内の鎮霊(しずみたま)神社の社殿を使ったプロジェクションマッピングとライブだ。

これが、とてもとても良かった。何がこんなによかったのだろうとずっと考えていたが、「終始、恩着せがましくなかったところ」だという結論に至った。ライブも、映像も、勝手に自分のペースで自由に感じさせてくれる余白が最高に気持ちよかった。

今まで私が見たことのあるプロジェクションマッピングといえば、わりとメッセージ性が強いものが多かったように思う。ディズニーランドで見たものは、ワンダーに溢れた音とハッキリとした映像がぐいぐいとその世界観の中に引き込んできたし、東京駅で見たものも立ち止まってしっかりと見つめないといけない気がした。もちろんワクワクはするのだけど、「提示された世界にどっぷりと浸からないといけないような義務感」を感じた。

でも、昨日のライブは、なんというか、勝手にやっている感じがとてもよかった。波田野州平さんのプロジェクションマッピングの映像は抽象的で、模様に近く、強烈には主張してこない。倉吉出身のギタリスト・中村好伸と岡山の打楽器奏者・岩本象一さん、ウクレレ奏者のzerokichiさんの奏でる音楽も、インストで心地よく音に身を委ねられる。

お洒落な人がたくさんいる場はちょっと気後れしてしまうが、会場も暗くて自分の周囲3mくらいしか見えないので、人の目も気にしなくていい。地元のおじいさんらしき人も結構おられて、音楽に合わせて宴会のような音頭をとった手拍子をしていた。超自由。

そんな状況だから、自分の思考の世界にどっぷりと入り込めた。もちろん、雑念が山ほど介在する余白アリだ。

鎮霊(しずみたま)神社って名前、相当パンチ効いてるな…どのへんがしずみたまなのだろう…ていうか、猿山の上にこんな神社あったんか…普段は相当鬱蒼としてそうだな。桜の花見なのに、この辺はあんま花ないな。下はあんなに人でごった返しているのに、ここは穴場だ。また仕事終わりに来てみよう…。おっさんの手拍子、宴会風でおもろいな…、あ、エアピアノ弾いてる。微妙に歌ってるし。私も鼻歌っちゃおう。こういう年齢層がごっちゃな雑多なイベントはいいよね。どうやって集客したのだろう…云々。

職場からほんの10分という身近さも最高にいい。ほんの30分前まで働いていたのに、今は野外で気持ちよく音に酔っているという事実も爽快だった。いやはや、仕事終わりに生スチールパンの音を聞けるとは。

こういう時間を投げ銭ライブで味わえるのは、最高に贅沢だと思った。行ってよかった。余白は大事だ。