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「よあけ」

作・画 : ユリー・シュルヴィッツ
訳 : 瀬田貞二
出版 : 福音館書店

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おじいさんと孫が静かな湖畔で夜を明かす、その一晩を描いた絵本です。

「夜明け」自体を主役とし、そのなかに人間が置かれる構成から、私はこの絵本を読んでいると、自然の大きさに抱かれる人間の小ささを感じることができ、心がゆったりしてきます。

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【お話】

静かな湖畔に月が出て、辺りを静寂が満たす。
時にそよ風が湖の水面を揺らす。
明け方が近づくと靄が立ち込める。

夜の静かな時間の移ろいと、大きな自然に抱かれるように、おじいさんと孫が控えめに居る。
自然の前では人間も、湖畔に暮らす生物の一種にすぎない。

夜明け前、
おじいさんと孫は湖をボートで漕ぎ出す。

夜明け。
すべてのものを朝の光が包みこむ 。

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夜の空気の冷たさや水辺の肌寒さが伝わってくるような深い色彩と、おじいさんが孫の身体に手を触れること、毛布、たき火、朝の光といった温もりあるものの対比が魅力的です。

夜の湖畔の静かな時の流れや、おじいさんと孫の折目正しい静謐な佇まい、自然や人間の素朴な美。絵と言葉によって、こういう抽象的な質の美しさもこうして表現できるのだと、この絵本を通して知ることができました。

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大切な人に贈る絵本として選ばれることも多いこの絵本。

書店でアルバイトをしていたころ、クリスマスシーズンは特に忙しく、「こんなにもたくさんの人が本を贈るんだ」と驚き、同時に自分が本を個人的なもの(選ぶのも読むのも自分)と決め込んでいたことに気がつきました。

それから
私も本をよく贈るようになりました。

贈る本を選ぶ時間、もしくは自分が本をいただいた時に「相手はどうしてこの本を選んでくれたのかな?」と色々想像してみる時間も含めて、本を贈るって素敵な文化だなと思います。

これからも、多くの本が人と人の間で行き交いますように。

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