30代の留学で一番腰が引けること
30代の留学で一番腰が引けるのは、年齢を友人たちの前で言う瞬間です。複数人で集まると大抵の場合、そこに一人か二人は初対面の人がいます(友達の友達は友達)。「どこから来たの?」「フランスは何年め?」「なんでフランスを選んだの?」など開始1時間ほどはみんなが気になる基本的な質問とその回答が次々に飛び交います。
場が打ち解けてくると「ところで、みんな何歳?」と誰かが言い出して「19歳」「ハタチ」「25歳」と順番に言っていくんですが、私の数字に対して返ってくる反応だけがいつも「驚(😳)」で、それに対してどう返すのが適切なのかが毎回わからず、その結果このやり取りごと避けたくなってしまいました。年齢を言うことは全く問題ないけれど、返ってくる反応に対する反応に困るので、いっそテクノロジーで年齢をおでこにでも最初から表示しておいてほしいくらいです。
私は30代で、修士ではなく学士の、しかも1年生で留学していて、その情報は年齢より前に公表することになるのが常なので、若く見えるバイアスがかかっていると思います。もし私がオフィスカジュアルの格好で名刺交換から始まる出会い方を彼らとしていたら、いくら外国人の年齢を見分けるのが難しいとはいえ年相応に見えるはずです。
先日、日本人、韓国人、アラブ人、フランス人の5人でピクニックした時もこの質問が放たれました。答えたくない私は唯一私の年齢を知ってる友達に助けを求め、その子が代わりに「この子は18歳!」と大嘘をついてくれました(ちゃんと否定して正直に言いました)。そのあと「私、だいたいいつもビックリされるから言うのに抵抗ができちゃった」と言うと「外国人、とりわけ日本人の年齢を推測するのは難しいと思うな〜」とやはり言われました。確かに、私も前回のフランス語学留学で同じクラスだったベトナム人の男性をずっと20代前半と思っていたら最後の最後で「42歳」と言われて驚いたことがあります。
留学は学生のうちにする人が多いので、なぜ30代で留学することになったのかを、年齢を言うときに合わせて説明するといいのかもしれません。「フランスの文化、とりわけ美術が好きで趣味で始めたフランス語を、次は仕事に活かしたい」。「でも渡仏前はまだ道がはっきり決まってなかったから学士1年生から始めた。卒業まで最低3年はあるからその間に語学力を上げて、じっくり準備して、チャンスを見つけたい」というように。
フランス語の文脈では、それが母語の人もそうでない人もみんなよく喋るのでこれくらいは話した方がむしろ私のことを知ってもらえて交友が深まる気がします。
私の小さな、でもいつもそこにあるモヤモヤをつらつら書いてきましたが、渡仏して1年経った今、優しい友人たちに囲まれて過ごす時間を定期的に持てています。だから、年齢はただの数字。これがもはや成句のようになっているのは、年齢を気にする社会的な圧があることの表れだとも思います。30代でまた青春のような日々を過ごせる人生になったことに感謝して、素敵に年を重ねていきたいです。