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正しい道より楽しい道を、最短距離より寄り道を楽しんで行く。

14年半勤めた会社を辞めた2021年の冬、自分のなかから出てきた言葉に助けられている。生き急ぐ自分に、何度も言い聞かせてきた。ことあるごとに、この言葉を思い出す。最短距離を爆速で。それが正だと思っていた。生き急いでいたあの頃の私は、急いでどこへ向かっていたのだろう。何をしたかったのだろう。その日のマストを終わらせるためだけに生きていたのだろう。

昨日、東京で資格試験の実技を受けた。北海道から受験しにきていた方と帰りのエレベーターで一緒になった。北と南から飛んできて、東京で出会う。なんだか嬉しくて彼女の友人が迎えにくるまでの間、近くにあったドトールで、お茶をした。札幌と福岡の街のこと、お互いの仕事のことをサクサク話した。彼女の友人も合流し、しばしおしゃべりをして別れた。オンラインも便利でいいけど、わざわざこの場所に来たからこその出会いがある。

福岡に帰る前に、東京都現代美術館に足を運んでみることにした。坂本龍一の展示が見たかった。調べると、清澄白河駅から歩いて行けるらしい。さっそく大門駅で半蔵門線と大江戸線を間違えた。地下へ降りてはのぼりを繰り返す。東京の地下は深い。

美術館ではチケット売場で40分並び、窓口で学生無料デイであることを知る。入場まで80分待ちと聞いて、美術館を諦めて空港へ向かうことにした。せっかく来たのに、40分並んだのに……という気持ちはなく、知らない街を歩けたこと、40分並ぶ間に見えた景色、その時間で考えたことに満足した。

福岡についてからは、空港から博多駅まで地下鉄に乗り、博多から最寄り駅までのJR線。ふたつも前の駅で降りてしまった。改札を出て、タクシー乗り場に向かう途中、いつもと違う景色に気付いた。ここどこ?頼りになるものを探す。出てきた改札の向こう側に駅名が書かれた看板を見つけてガーン。降りるのが早すぎた。ここでもふと思う。この駅に降りることもそうそうないから、いいか。「寄り道」をテーマに生きていると、へマする自分も許せてしまう。

ようやく家に帰り着くと23時。リュックが重くてクタクタだった。夫と娘が食べた夕飯の皿がそのままテーブルに広げられていた。料理に使ったフライパンや包丁もキッチンに。その様子を見て、さすがにゲンナリした。

風呂から上がると、夫も娘も寝ていた。食べたものはそのままにして。はぁ、とため息が出る。

食器をシンクに移動させ、寝ることにした。朝になると、嫌な気分はおさまっていた。これも寄り道のおかげなだ。急がないから、一旦寝ることができる、皿を洗ってしまう前に。できる時にやればいいのだ。寄り道するには、時間が必要だ。今の私には、時間がある。なによりそれが、大切だ。

ガチガチに編み込んでいたセーターは、3年かけてゆるくゆるく解けている。解けた毛糸は空気をたくさん含んでいる。ゆるゆるの毛糸でセーターを編み直す。ゆっくり好きなかたちに、時間をかけていい。昔から編み物をするときの、図案はない。全体のかたちをイメージして、目を減らしたり増やしたりして編んでいく。行き当たりばったりでも、かたちになる。

小さなコリスに赤鬼風の帽子を編んだ

今、ただ、編むことを楽しむ日々。いく先々で見つけたものを編み込んで、ゴワゴワした不恰好なセーターを編んでいく。どんなセーターができるのか、楽しみだ。




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サオリス・ユーフラテス|正しい道より楽しい道を。最短距離より,寄り道を楽しんで。
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