魔王城の掃除婦【試し読みver.】
プロローグ
手のひらがやけにぬるぬるとすべった。それがもう命が助からない量の血だと気づくのにしばらく時間がかかった。そして、ようやく倒れた体を揺するのをやめた。
勇者様も他の仲間もみんな死んで、なんで自分だけが助かったのか分からない。心の中を占めたのは、この疑問と魔王への圧倒的な恐怖だった。魔王に勝てなかったという絶望よりも、ずっと強く、仲間のように無惨に殺されたくないという恐怖が体を支配していた。なぜ生き残ったのかという疑問だけが、唯一、かろうじて私の理性を保たせていた