2024 夏2
移動中
昔の歌で都会には空がないという
今東国を北へ進んでいる
確かに空が現れたと思った
ここは空がある
中国やトルコで見たのと同じ空が
魂をどこまでも遊ばせる空を見て私も消えてしまいそうだ
立秋
朝起きると太陽が少し遠くに感じた
それだけで木々も草花もどこか大人になったような気がした
昼にすべて蒸発してしまったみたいに葉をよじれさせたイネ科の草が
夕方黄昏て見える
どこかの誰かが忘れたサンダルが植込みの端からこちらを見ている
まだ内臓を煮えたぎらせるような夏が横たわっている
今年の蝉は
いつの間にか蝉も現れている。鳴き声を聞くが姿はあまり見ない。弱って横たわっているのをたまに拾い上げる。どうだろうか?
こんなに蝉が目に入らない年というのは初めてかもしれない。アブラゼミのチョコレート色の羽がアスファルトに溶けたかのように広がっている。
善男善女の夏の逢瀬は今や日が暮れてからだ。もし風が夜半に涼を運ぶなら降り注ぐような蝉しぐれと一緒に空を眺めていられるだろう