次なるステージへ:地域イノベーションの持続的発展に向けて~せとうちビジネスコンテスト3年間の実績と新たな挑戦~
地域イノベーションがもたらす、私たちの未来
学生や若者のビジネスコンテスト。
一見すると「若者の応援」や「教育支援」のように見えるかもしれません。しかし、この取り組みは、参加する若者だけでなく、地域全体に具体的な価値をもたらします。
地域企業にとって
若い感性による新たなビジネスチャンスの発見
次世代の事業パートナーとの出会い
自社の課題に対する新しい視点からの解決策
若手人材の発掘・確保
市民にとって
地域の課題解決による生活の質の向上
街の活力向上による資産価値の維持・向上
新しいサービスやビジネスによる利便性の向上
世代を超えた地域コミュニティの活性化
行政にとって
若者の地域定着促進
地域課題の新たな解決手法の創出
創業支援による税収基盤の強化
地域ブランド力の向上
このコンテストは、単なる「起業家支援」ではありません。収益性だけを追求するのではなく、地域課題の解決を目指す若者たちの存在が、私たち一人一人の生活をより豊かにしていく―。それが、せとうちビジネスコンテストが目指す地域イノベーションの本質です。
~せとうちビジネスコンテスト3年間の実績と新たな挑戦~
私は長年、せとうち地域で学生や若者向けの創業機運醸成事業に携わってきました。6年前にU24高校生大学生創業体験プログラム「Sta-sh」を立ち上げ、3年前にはせとうちビジネスコンテストの発起人として運営に関わっています。
この間、数多くの若者たちと接する中で、彼らの中にある「何かやりたい」という想いを、具体的な行動へと導くための仕組みづくりに取り組んできました。
はじめに
「自分たちの手で街を変えていきたい」
「地域の課題を解決したい」
そんな若者たちの熱い想いが、せとうち地域に新しい風を吹き込んでいます。
第3回せとうちビジネスコンテストの会場に集まった若者たちの目は、かつてないほど輝いていました。全国から集まった34チームの中から選ばれた10チーム。その発表は、単なるビジネスプランの提案を超えて、地域の未来を描く力強いメッセージとなりました。
特に印象的だったのは、参加者たちの多様な視点と行動力です。東京の高校生が福山城の新たな魅力を提案し、地元の大学生が環境問題に革新的な解決策を示し、若手の専門家が地域の子育て支援に新しいアプローチを提案する―。これらは全て、若者たちが「自分ごと」として地域の課題に向き合った結果でした。
このコンテストが目指すのは、若者たちの「やってみたい」という想いを、実際の行動へと導くこと。そして、その過程で生まれる気づきや成長が、次の挑戦者を育てていく。そんな好循環を、せとうち地域に作り出すことです。
今年は34チームのエントリーがあり、その半数が学生チームでした。最終選考に進んだ10チームのうち9チームに学生が参画するという結果は、若い世代の地域への関心の高まりを如実に示しています。
特筆すべきは、参加者の地理的な広がり。東京や大阪からも多くの応募があり、なかでも東京の高校生が福山城の魅力に惚れ込んで優秀賞を受賞したという事例は、地域の可能性を再認識させてくれました。
私たちが大切にしていること
このコンテストが重視するのは、必ずしも即座の収益性ではありません。
むしろ、以下の3つの価値を大切にしています:
新規性:従来にない発想で課題に取り組む姿勢
革新性:既存の枠組みにとらわれない解決策
地域貢献性:せとうち地域をより良くしたいという想い
アントレプレナーシップ教育としての意義
支援金という形式を取るのには理由があります。単なる賞金ではなく、アイデアを実際に形にするための第一歩として活用してほしいからです。
「考えて終わり」ではなく、実際に動き出すきっかけとなることを目指しています。
3年間の軌跡
エントリー状況の変遷
第1回:38チーム(学生9チーム)、そのうち学生エントリー数22名
第2回:38チーム(学生15チーム)、そのうち学生エントリー数38名
第3回:34チーム(学生17チーム)、そのうち学生エントリー数48名
年々、学生の参加比率が高まり、提案の質も向上しています。
参加大学の広がり
早稲田大学、慶応大学、立教大学から地元の広島大学、福山大学まで、全国各地の大学生が参加。この多様性が、新しい視点とアイデアを生み出す源泉となっています。
過去参加学校(抜粋)
■首都圏
早稲田大学/慶応大学(SFC)/立教大学
■関西圏
京都大学/関西大学/大阪芸術大学/滋賀大学/同志社大学
■中国・四国地方
広島大学/県立広島大学/福山大学/広島工業大学/叡啓大学/就実大学/岡山理科大学/松山大学
■その他
名古屋大学
また、高等学校や専門学校からの参加もありました:
佼成学園高等学校(東京)/近畿大学附属広島高等学校福山校(広島)/福山市立福山高校/穴吹ビジネス専門学校(広島) など
これらの教育機関からの参加があり、年々参加校が増加している傾向にあります。
また、U24高校生大学生創業体験プログラム「Sta-sh」(6年間継続実施)との相乗効果も生まれています。Sta-shでアントレプレナーシップの基礎を学んだ学生が、次のステップとしてビジネスコンテストに挑戦するという成長の流れが確立されつつあります。
今年の受賞プロジェクト
今回の受賞プロジェクトは、環境・観光・社会課題など、多様な切り口から地域の未来を描いています。
最優秀賞
hope 『冷熱活用プロジェクト』
代表:荻野舜樹(広島大学)
LNG基地から放出される未利用の「冷熱」に着目し、バイオガス発電と組み合わせた画期的な提案。現場の課題を深く理解した実現性の高いプランが高く評価されました。
優秀賞
GOGO侍 『福山城まるごと戦国街歩き没入イベント』
代表:住田爽太(佼成学園高等学校)
東京の高校生が趣味で訪れた福山城の魅力に惚れ込み、その想いをビジネスプランへと昇華させました。参加者が侍となって街を巡る体験型観光の提案は、単なるアイデアに留まりません。東京在住ながら徹底的な事前準備と現地調査を重ね、自身の「好き」を地域課題の解決へと結びつけました。
プレゼンテーションでは、綿密な実現可能性の検証と具体的な実装プランを、自分の言葉で力強く発表。東京からせとうち地域の課題解決に挑戦するという行動力と、若者らしい斬新な発想力が高く評価され、優秀賞に選ばれました。
審査員特別賞
oystar 『牡蠣で海を守る』
代表:鈴木祐太(立教大学大学院 社会デザイン研究科)
牡蠣養殖の副産物を活用し、海洋環境の保全と循環型社会の実現を目指す革新的な提案。環境と経済の両立が高く評価されました。
広島イノベーションベース賞
「Family Plus One」
『ママに笑顔と安心を 新生児預かりサービス』
代表:山本浩子(県立広島大学大学院)
助産師の専門性を活かした産後支援の新しいカタチ。現場で働く専門家自らが行動を起こす実践的なアプローチが評価されました。
コンテストを支える想い
このコンテストは、地域の大学教員、高校教員、行政職員、経営者など、様々な立場の有志によって運営されています。本業の傍らでの運営は決して楽ではありませんが、せとうち地域の未来への想いが、私たちを動かしています。
継続的な発展に向けた重要課題
せとうちビジネスコンテストは3年間で着実に成果を上げてきましたが、このままの運営体制では継続が困難な状況に直面しています。
今後の存続と発展のために、以下の課題解決が不可欠となっています:
財政基盤の確立
地域企業との連携強化
全国規模でのスポンサー企業の開拓
運営資金の安定的確保
※現状の運営ボランティアベースでは限界があり、持続可能な財政基盤の構築が急務
支援体制の本格化
受賞者への実効性のある継続支援
実務経験豊富なメンター陣の確保
起業・事業化に向けた具体的支援
※形式的な支援ではなく、実践的なサポート体制の確立が必要
通年プログラムとしての確立
単発イベントからの脱却
教育機関・創業支援機関との実質的連携
年間を通じた育成システムの構築
※現状の単発イベント形式では、真の人材育成が困難
実働運営体制の整備
実務を担える運営スタッフの確保
持続可能な組織体制の構築
専門的知識を持つ実働部隊の形成
※ボランティアベースの運営には限界があり、専門的な運営体制が必要
行政との実効性ある連携
効果的な広報連携の実現
具体的な支援施策との連動
地域全体での創業支援の連携
※形式的な連携から実質的な協力体制への転換が必要
実践的な事業創出の仕組み作り
企業とスタートアップの実質的な協業機会の創出
具体的な事業化につながるマッチング
地域経済への実効性ある貢献
※理念的な取り組みから実践的な成果創出への転換が必要
これらの課題は、せとうちビジネスコンテストが地域イノベーションの真の推進力となるために避けて通れません。ボランティアベースの熱意だけでは限界があり、専門的かつ持続可能な体制構築が急務となっています。
この状況を乗り越え、真に価値あるプラットフォームとして発展させていくために、より多くの方々のご理解とご協力が必要です。
主催:一般社団法人スタイリィ
企画/運営:第3回せとうちビジネスコンテスト運営委員会
共催:福山市、一般社団法人ひろしまイノベーションベース
特別協力:福山ロータリークラブ、ソフトバンク株式会社
協賛企業:株式会社ドリーム・アーツ・株式会社エフピコ・株式会社アクティオ・株式会社福山臨床検査センター・株式会社三倉屋・株式会社かこ川商店・株式会社一富士興業・有限会社山陽不動産・株式会社リゾーム・株式会社仲心・株式会社三菱UFJ銀行・ 4FUL株式会社・篠原テキスタイル株式会社・株式会社 虎屋本舗・株式会社アイデアル・株式会社RevComm・株式会社Salt design・福山電業株式会社・学校法人広島加計学園・有限会社藤井印刷・麻生康司税理士事務所(敬称略)
持続可能な地域イノベーション基盤の構築に向けて
せとうちビジネスコンテストは、単なるビジネスプランの競争の場ではありません。これは、地域の未来を創造し、実現していくための実践的なプラットフォームとしての可能性を秘めています。
現在、広島県ではスタートアップエコシステムの構築が本格的に進められています。この動きの中で、3年間の実績を持つ本コンテストは、若い起業家の発掘から事業化支援まで、重要な役割を果たせると確信しています。特に、全国からの参加者と地域企業との協業による新規事業創出、教育機関との連携による起業家育成など、具体的な成果を生み出せるプラットフォームとしての機能を強化していきたいと考えています。
しかし、この可能性を現実のものとするためには、運営基盤の強化が不可欠です。より多くの企業や団体の皆様との協力関係を構築し、資金面での支援はもちろん、メンタリングやビジネスマッチング、さらには投資や融資につながる具体的な支援の仕組みを作っていく必要があります。
おわりに:共に創る、せとうちの未来
これからの地域を創る、アントレプレナーシップ教育
「起業家を育てる」その先にあるもの
日本における起業家の少なさが課題として指摘される中、私たちは長年、学生や若者向けの創業機運醸成事業に取り組んできました。しかし、ここで目指しているのは、単に起業家の数を増やすことではありません。
私たちが大切にしているのは、若者たちが「自分の関心のある地域の課題を、自分のアイデアや想いで解決したい」と思えるようになること。そして、その想いを実現可能にするために、ビジネスの視点を学び、持続可能な形にしていく力を育むことです。
アントレプレナーシップ教育が育むもの
このような学びは、必ずしも起業という形だけにつながるわけではありません。
地域や日本への深い愛着と理解
社会課題への主体的な関わり方
解決策を実現可能にする思考力
周囲を巻き込んでいく行動力
これらは、企業に就職しても、地域で活動するにしても、かけがえのない力となります。現代社会が求める「主体性」と「創造性」は、まさにこうした経験から育まれていくのです。
地域から、日本を変えていく
「誰かの大きな一歩」を待つのではなく、
「みんなの小さな一歩」で未来を創っていく。
この言葉には、地域から日本を変えていきたいという私たちの想いが込められています。一人一人が自分にできることから始め、それを継続的に育んでいく。そんな人材を地域で育て、支えていくことこそが、この地域、そして日本を良くすることにつながると信じています。
地域の課題を「自分ごと」として捉え、解決に向けて行動を起こせる人材。その育成に共感してくださる方々と共に、このプロジェクトを育てていきたい。それが、せとうちビジネスコンテストに込めた私たちの想いです。
これからの展望
このビジョンの実現には、地域全体でのエコシステムの構築が不可欠です。教育機関、企業、行政、そして地域の皆様と共に、若者たちの「小さな一歩」を支える基盤を作っていきたいと考えています。
それは必ずしも容易な道のりではないかもしれません。しかし、この3年間で見てきた若者たちの成長と挑戦は、確かな手応えを私たちに与えてくれています。
共に、次世代を育て、地域の未来を創っていきませんか。
なお、本コンテストへの参画・支援にご関心をお持ちの企業・団体様は、ぜひ運営事務局までご連絡ください。具体的な協力方法について、ご相談させていただきます。
【お問い合わせ先】
せとうちビジネスコンテスト運営事務局
Email:info@fukuyama-shachu.com
これまでご支援、ご協力いただいた全ての皆様に心より感謝申し上げますとともに、新たな挑戦に向けて、より多くの皆様のご参画を心よりお待ちしております。