酒は百薬の長ではない
「酒は百薬の長」という言葉がある。酒を飲むことで体調が良くなるケースがあるのだろう。
僕も酒を飲むので、わからなくもない気がするが、言い過ぎな気はする。まぁ、こういった印象に残る言葉は人々の心に残り、そして言い伝えられて独り歩きしているのだろう。
きっと、現代の基礎となる医学が生まれるまで、人々は神や仏に祈ることで病気を治癒していたので、酒の様な神聖なものにスポットが当たったのかもしれない。
身体に痛みや苦しみが生じた時に、酒を飲んで酔っ払ったら少し気が紛れるだろうし、神様が憑依したと感じる人もいたのではないだろうか。
ただ、酒も薬も飲む僕が断言するが、酒は百薬の長ではない。酒を飲むよりも薬を飲んだ方が体調は改善する。酒を飲むと気分は良くなるが、体調は悪くなるのだ。
薬というのは凄いもので、患者側は処方されたものを義務的に飲んでいるだけかもしれないが、それらは製薬企業が何年もの月日を掛けて研究開発と試験を行い続けた結晶なのだ。
数年前、ひどい貧血の症状に陥っていた時期がある。原因がわからず不安な時期を過ごしていたが、血液検査をしたところビタミンB12が不足していたことが原因だった。詳しくは理解できていないが、ビタミンB12が血液を生成してくれているらしい。
僕は若い頃に胃を摘出してしまっているので、ビタミンB12を身体に吸収することができない。胃から分泌される物質とビタミンB12が結合されて腸に送られることで、ようやく身体にビタミンB12が吸収されるのだ。
だから僕はビタミンB12を補給する薬を毎日飲んでいる。これさえ飲んでいれば、貧血になることもなく健康な身体で生きていられるのだ。
この症状で悩んでいる時、医師が原因を指摘してくれるまで、原因がさっぱりわからず、ただただ悩んでいた。
その当時は、まるで医学が勃興する以前の人類のように、僕も酒を飲んで気持ちを紛らわしていた。しかし、当たり前だが一向に体調は改善されず、次第に酒を飲むのもしんどくなってきたのである。風邪を引いている時に脂っこい飯を食えないのと似ている感覚かもしれない。酒を美味いと思う体力がなかったのだ。
しかし、処方されたビタミン剤を飲むだけでみるみるうちに症状が改善されていった。身体のだるさは消えて仕事もはかどり、プライベートでも好きなことに集中ができるようになった。
たった一粒のビタミン剤で、ここまで生活が変わるのだから、やっぱり薬というのは凄い発明なのである。
この経験から、迷信めいた言い伝えよりも、現代の医学を信用することにしている。もちろん昔もそうだったが、あらためてそう思ったんである。
だから、体調が悪いと思った人は、まずは病院に行って検査をし、医師の指示に従って対処するようにしよう。
「百薬の長」として酒を飲むのではなく薬を飲み、症状が治ってから飲む酒の方がきっと何倍も美味いはずだ。