大器晩成は難しい
年を取るごとにいい言葉だなと思ってくる言葉がある。それは「大器晩成」だ。これは僕だけではなく、みんなが勇気を貰える言葉なんじゃないか。
年を取ってからでもチャンスはあると思えるし、人生はまだまだこれからだと思える。何も人生の前半で若くして成功する必要なんてないのだ。
人はどうしても美しい物語を求める傾向があり、中年以降の年寄りの物語よりも若者の美しい物語がメディアでは取り上げられる傾向にある。
「人生は短い」「若いうちに」といった言葉を聞くたびに、年を取ってきている側は肩身がどんどん狭くなってきてしまう。
しかし、世の中には本当に大器晩成とも言える偉人がたくさん存在し、彼らの成果を見渡してみると、本当に人生はいつからでもチャレンジできるものだと思うことができる。
マクドナルドを世界的なチェーンにした男、レイ・クロックがマクドナルドのビジネスを始めたのは何と52歳である。50歳を過ぎてから、あの世界的なハンバーガーショップを築き上げたのだから、年齢が挑戦の言い訳にならないことは彼に証明されている。
やなせたかしも、アンパンマンがヒットしたのは69歳で、それまでは代表作のない作家だったというのは有名な話だ。
これらを聞くと「人生まだまだだな」と思うことができる。
しかし、それはそれで良いことなのだが、大器晩成をポジティブに捉えるにも条件が要ると思う。
まずひとつは、長生きしなければいけないことだ。そして長生きするだけでなく、60歳を過ぎたとして仕事に熱中できる体力と忍耐が必要になる。
僕は20代前半にがんを経験したので、早くも大器晩成のチャンスが奪われてしまうところだった。「大器晩成」なんて簡単に言うが、健康に老齢まで生き続けることそのものが物凄く大変で幸運なことであるのは、肝に銘じておきたい。
そして、もうひとつは、結局のところ猛烈な努力をする必要があるということだ。
レイ・クロックにしても、やなせたかしにしても、老いを感じさせることなく果敢にチャレンジをして仕事に取り組んでいる。大器晩成を掲げて長期的な成長を目指していたのではなく、50歳を過ぎてから、たまたまチャンスを掴むことができたと考える方が妥当だろう。
だから「大器晩成」という言葉からポジティブな未来を思い浮かべつつも、結局のところ厳しい現実を生き抜いてこその「大器晩成」だと言う事は忘れてはいけないと思う。
「長生き」を目標にするとして、「長生き」そのものが、本来は物凄く難しいものだからだ。