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サトウのごはんと土鍋のごはん|イケアに学ぶごはんの価値
基本的に自炊する時は土鍋でご飯を炊いて食べています。
これはご飯にこだわりを持っているからというよりも、過去に引っ越しをした時に必要な家電をたくさん買い揃えていたら金がなくなってしまい「炊飯器ってそもそもいらないんじゃないか」と考え、安い土鍋を買ってごはんを炊くようにしたところ、自分の暮らしにおいてはこれで充分だと気づいたことによるものです。
土鍋でご飯を炊いたあとはすぐに冷凍をしてしまい、食べるときはレンジでチンをして食べるだけなので、これで充分なのです。炊飯器があれば保温などの便利機能がありますが、それが冷凍とレンジで要が足りる人は土鍋でよいのでは、と思います。
こういった理由で続けている土鍋ごはんですが、やっぱり土鍋でごはんを炊くとシンプルに美味しいという理由もあります。つまり安くて美味しいからなのです。
しかしその一方で、僕は「パックご飯」も時々愛用している事実があります。このご飯の矛盾を整理して考えてみることにしました。
サトウのごはんが実現している土鍋ごはん
土鍋でごはんを炊くのは主に休日であり、休日に忙しかったりするとわざわざ土鍋でご飯を炊いて冷凍しておく作業時間が取れないことがあります。
そういう時に僕は「サトウのごはん」を買って食べるのですが、これがびっくりするくらい美味しくて驚いてしまいます。
テレビ東京のカンブリア宮殿でサトウ食品が取り上げられていたことがあり、その美味しさの秘密が紹介されていました。
過去に売り上げの低迷に陥っていたサトウ食品の社内で、従業員が水筒を持参してきていたことに気づいた社長がわざわざ水筒を持参している理由を尋ねたところ「水道水はカルキ臭いから」という理由だったことがわかりました。
これを聞いた社長は「わが社は従業員にカルキ臭いと言われるような水を使っていたのか」と改心し、食品の品質を高めることを決意します。
その後、サトウ食品は新潟に米を直火で炊くための工場に莫大な設備投資をし、無添加で土鍋で炊いたようなふっくらとしたご飯を大量生産できる体制を構築します。
ご飯を鍋で炊くときは「はじめちょろちょろ中ぱっぱ」という言葉が使われるように、初めは弱火でじっくり炊いて中ごろは火を強めて蓋は決して開かないようにするプロセスが必要になります。
これをなんと60メートルもある工場の生産ラインで実現させているのです。これは大企業であり尚且つ米の炊き方にこだわりを持っている組織でなければ実現できない方法です。
インタビューでサトウ食品の社長は「売り上げ日本一と言われるよりも、日本一美味しいごはんと言われたい」と言っていました。名言だと思います。どうりで美味しいわけです。
イケアエフェクトに見る土鍋でごはんを炊く理由
しかし、大手企業にここまでのことを実現されてしまうと、僕が自宅で土鍋使ってごはんを炊く意義が脅かされるようになります。サトウ食品が遠い新潟の工場で「はじめちょろちょろ中ぱっぱ」を実現して我々消費者のもとに届けてくれているのであれば、自宅でわざわざ土鍋を活用する意味はありません。
それでも、何だか自分で土鍋を使って炊いたごはんの方が美味しい気がします。これは自分の行いに正当かしたい認知バイアスなのでしょうか。
しかし、これは自己正当化ではなく、それとは別の現象が関係していることに気づきました。行動経済学で説明される「イケアエフェクト」です。
世界最大の家具量販店であるイケア(IKEA)が、過去にホットケーキミックスを販売した時のことです。
粉に水を混ぜて焼くだけで、誰でも自宅で簡単にホットケーキをつくれることが売りだった商品が、なぜだかあまり売り上げが伸びなかったことがあります。
そこで、水だけを加えてつくる商品から、あえて卵や牛乳も加えるひと手間を加えさせたことで、なぜかホットケーキミックスの売り上げがアップすることになったのです。
これは「あえて卵や牛乳も加えた」というひと手間をプラスしたことで、消費者が「自分でつくった」という実感を得ることになり、商品に対する愛着を持つことに繋がったからです。
これがイケアエフェクトと呼ばれる認知バイアスのことです。
時には人の助けを借りるというスタンス
つまり僕が土鍋で食べると美味しいと思っているのはイケアエフェクトによって生じた愛着なのです。
確かに今や僕は弱火で土鍋がコトコトと揺れる様子を眺めることで精神的な落ち着きを感じるようにもなっています。土鍋でごはんを炊くその過程に愛着を持っているのです。
これからも休みの日には土鍋に火をかけてふっくらとしたご飯が出来上がる過程を見守り続けることでしょう。
そして忙しい時にはサトウのごはんの助けを借りるというスタンスにします。結果的にどちらも直火で米を炊いている美味しいご飯を頂くことができるわけです。
自分の行動に愛着を抱くか、サトウ食品の凄さに思いを馳せるか、それらを交互に繰り返せば、今後も飽きることなく美味しいご飯を食べ続けられることになります。