見出し画像

踏んだり蹴ったり、勝ったり負けたり|幸せと笑いについて

人生は不確実なもので、何か良いことが起こると次々と良いことが起こり続けることがあり、強い者はより強く、富めるものはより富んでいく傾向があります。

反対に、何か悪いことが起こると、次から次へと悪いことが起こるのもまた事実です。

こうして世の中は二極化していっているのかもしれません。残念ながら世の中は平等ではなく、要するに個人の人生は「勝ったり負けたり」というのが現実です。

行動経済学の用語で「損失回避」という言葉があります。人間は利益を得ることよりも、損失を避けることに対して強い感情を抱く傾向があるとわかっており、例えば、1000円を失う痛みは、1000円を得る喜びよりも強く感じられることが多いとされています。

これを踏まえると、おそらく多くの人が、次から次へと起こっている悪いことにばかり焦点を当てて辛い思いをしている様子が想像できます。僕も自分の生活を簡単に振り返ると「あの時はしんどかったな」と思うことの方が、相対的に多いと感じます。

こんな気持ちで生活をしていると、仕事においてトラブルが発生したり、そんな時に限ってプライベートもうまくいかないことが起こると、まさに「踏んだり蹴ったり」と思ってしまうことがあります。

先日、人手不足である職場を何とか立て直そうと様々な取り組みを並行して行い続け、ようやく新しい人材の配置の目途が立った時に、既存の社員から退職代行会社経由で退職希望の連絡が入り、更なる欠員が発生する状況になってしまいました。元々の人手不足の原因も先月発生した退職代行経由の欠員だったので、何らかのネガティブな連鎖が起こっている様です。

こうして、また振り出しに戻ってしまい、そんな時にも当然上司からは「それはお前が悪い」と叱責を受け、傷んでいる心を更に攻撃されることとなります。その間、現場は欠員で人手が足りず、自らが穴埋めすることとなり本来やるべき仕事に手を付けることができません。

「踏んだり蹴ったりだなぁ」と思いながら、何とかその日の仕事を終え、仲の良い同僚とお互いの心境を吐露して話をして仕事を終えました。

その会話では、あまりに「踏んだり蹴ったり」な状況を振り返っていたので、しんどさを通り越して全ての事象を笑いに変えて話し、ふたりで大笑いをして仕事を終えました。これでだいぶ気が楽になり何とか持ちこたえています。

その時に、辛いことを笑いに変えるという考えは、昔から身に付けていた力強い考えでもあったことを思い出します。

僕は20代の頃に胃がんに罹り明確に死を意識した経験があり、その後の治療では食事ができないという辛い経験を長い期間過ごしたことがあります。

こういった「不幸な若者」といったブランドを携えていると、少なからず応援してくれる人は現れ、その体験に感動してくれることもあります。

しかし、当時の僕は、感動してもらう以上に笑ってもらうことを意識してコミュニケーションを取っていました。笑ってもらった方がシンプルに対等な関係で仲良くなることができるからです。

その時に気づいたことが「泣かせることより笑わせることの方が難しい」ということです。不幸な経験というのは「笑っていいものかわからない」ものでもあるため、そう簡単に笑ってくれるものではないのです。

だからこそ、積極的に自分の不幸をネタにして笑ってもらうよう努めて生活をしてきました。

その経験もあって、今の僕は仕事でなにかとんでもないトラブルが起こった時も、自分の周りで次から次へと人がいなくなってしまっても、大抵のことは笑いに変えて何とか過ごすことができています。この感性が身に付いたのだとしたら、当時の辛い経験も良い勉強だったと思えるほどです。

僕の友人に17歳の時に白血病に罹り、20歳の時に再発してしまった経験を持っている人がいます。17歳で罹患するだけで相当な経験ですが、その後再発をしてしまったとは、「踏んだり蹴ったり」という言葉では言い表せない不幸だと思います。

しかし、彼も当時のことを笑いに変えたエピソードで話してくれます。そして今は元気に働いていますが、仕事で発生するトラブルのことも、いつも笑いに変えて話してくれます。

また別の友人が好んでいた言葉でこんな言葉があります。彼女も若くして白血病を患ってしまった若者です。

「幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せ」

本来は順序が逆な気がしていましたが、実際に同じような生き方をしていた経験から、現実はそうなのだと強く思います。

踏んだり蹴ったりな状況が続いたとしても、笑えるところを探してまずは笑ってみれば、状況に関わらず幸せな気持ちになれるものです。幸せになれることを待ってばかりいても、なかなか幸せにはなれないのでしょう。

冒頭で書いたように、世の中は決して平等ではなく、人生は「勝ったり負けたり」です。そのなかで「踏んだり蹴ったり」になってしまう人も多くいるはずです。

だからこそ、何か辛いことが続いた時も、泣くのではなく笑いを探そうと心掛けていれば、勝っても負けても幸せな気持ちで過ごすことができるはずです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?