『遊びをせんとや生まれけむ』不動産屋へ転身した元公務員がいつでも忘れない『遊び心』
電脳賃貸という、一風変わった名前の不動産屋さんをご存知ですか?
今回は電脳賃貸の萩原さんに、仕事のことはさておき(?)遊び心についてお聞きました!
ー楽して儲かるんじゃないかって(笑)
ーー萩原さん、よろしくお願いします。『電脳賃貸』さん、不思議な名前だなあってずっと気になってたんです!(笑)
そうですか(笑)目立つかなあって思ってつけたので、そう言ってもらえると。
ーーとても目立ってると思います。
普通の不動産屋さんって入りづらいじゃないですか。今でこそネットで見れたり綺麗なお姉さんがいたりしますけど、昔は怖い不動産屋さんもあったりしました。
だから〇〇商事とか〇〇不動産みたいな名前じゃなくて、『賃貸』ってつけたらわかりやすいかなと思ったんです。
ーーたしかに何となく柔らかくなるかも。
『電脳』は筒井康隆の電脳筒井線っていうエッセイが元なんです。毎週寄せられる読者からのアイデアを筒井康隆さんが取り込んで作品にしていく朝日新聞の『朝のガスパール』っていう連載小説があったんですけど、それの裏話とかが書かれた本なんですよ。
面白かったし、『電脳』って言葉にインパクトがありましたね。
ーーへえ〜!筒井康隆さんの作品はたくさん知っていますが、まさかのエッセイ…!しかも会社の名前にするくらいのインパクトだったんですね。面白そう…
あとはインターネットを駆使して不動産やったら楽して儲かるんじゃないかって(笑)
ーーなるほど(笑)気持ちは分かります(笑)
当時は今みたいにネットで不動産見れるところも少なかったですけど、思ったようにはいかなかったですね(笑)
ーー『電脳賃貸』って名前が気になって来る人もいるんじゃないですか?
昔は看板とかも出してたんですけど、いろんな人が来ましたよ。
レンタルPCのお店だと思って入ってきた中国の方もいましたね(笑)
ーー電脳を賃貸するってことか…分かるような気がします(笑)
ーまあ、人生ってそんなものかなって
ーーそういえば、萩原さんは下妻のご出身ですか?
そうです。生まれも育ちも下妻です。
親も親戚も農家が多いですね。
ーー下妻は農家さんが多いですもんね。でも萩原さんは不動産屋さんを始められたんですね。
あ、いや。不動産屋の前は公務員だったんです。
ーーそうだったんですか!どちらで公務員を?
高校卒業して22年くらいは研究学園にある高エネルギー物理学研究所で働いていました。
研究者ではなくて、研究施設を作るための電気設備の仕事をしていたんです。
ーーおお!高エネルギー物理学研究所、聞いたことあります!
高校卒業後は親のところで働けばいいかなんて思ってたんですけど(笑)
まあ一旦は外に出てみようかなと思って就職することにしたんですよ。
でも普通の事務員とかはつまらなそうだなって思って、趣味でアマチュア無線とかやってたんで電気系の仕事に応募したんです。
ーーじゃあ元々興味はあったんですね。
それがね、最初は文部省の施設だってことも分かってないし、何をするところなのかもわかってなかったですよ(笑)なんか良さそうだなくらいなもんで。
ーーそれで飛び込んじゃうのはすごい(笑)
面接試験の時に希望する配属先を聞かれるんですよ。覚えてるのは『泡箱』『ビームトランスポート』とか…とにかくで訳の分からない言葉が並んでるんですね。
その中に『施設課』って言葉があって、これなら何となく分かるなと思って施設課を希望しましたね(笑)
ーー本当に知らない言葉ばっかり…な、なんなのか全く想像もつかない言葉ばっかり…でもたしかに施設課なら何となく予想できますね(笑)
まあ人生ってそんなものかなって(笑)
ーーでも、そこから不動産屋を始めるわけですよね。かなり珍しいような…
当時も『なんで?』って言われましたよ。
ーーそうだと思います。どうして不動産だったんですか?
どうしてっていうか…もともと定年まで半分くらいたったら他の仕事しようって思ってたんですよ、なんとなくね(笑)このまま働いてもつまらないな〜というか、ワクワクすることしたいなと思ったんです。
一番やってみたかったのは、仕事で海外に行くことで、輸出入とか旅行代理店みたいなこととか、仕事を口実に海外に行けることがやりたかったんです。でもなかなか難しくて。
ーー海外、ワクワクしますよね!でも難しかったのか…
ちょうどその時期、バブルで実家の土地の評価額も上がってて、いつか自分が管理することになるだろうなあと思って不動産の資格を持ってたんです。
それで不動産に。とにかく何でもいいから他の仕事をしたかったんですね。
ーー既に資格を持っていたんですね!
でもね、バブルが弾けた頃に公務員やめて不動産を始めたもんですから、周りには「お馬鹿さん」だと思われていたかもしれませんねえ(笑)
ーーいやいや、それでも一歩を踏み出せる力があるって、すごいことだと思います。
ーお金を稼ぐのって大変だなあ
ーー公務員として研究所の施設を管理するのと、不動産屋さんでは全然違う世界のような気が…します。
本当に全然違いますよ。特にお金のこととかはね。
公務員の時は発注する側、お金を払う側だったので、領収書の書き方も知らなかったです。
不動産の仕事も最初はなかなか大変で、会社を登記して初めて領収書を書くまで3ヶ月くらいかかりました。
ーーその最初の領収書はどんな内容だったんですか?
先輩にのアパートを紹介して、その手数料で3万円くらい頂いたんです。
公務員の時は工事発注とか大きな金額のものばかり見てたもんですから…、最高で32億円の発注とかもやりました。一行、一項目で何千万円とかね。
ーー32億と3万…それはとんでもないギャップがありますね…
だから初めて手数料を頂いた時に「お金を稼ぐのって大変だなあ」って思えるようになりました。
ーーお金の重みの感じ方が一変するような体験だですね…
不動産を始めてしばらくは会社の家賃を払うのも大変で、お金がないってこういうことかって身をもって知ることはできましたね。公務員を続けていたら分からなかったと思います。
ーーでもやっぱり、公務員をやめるとなると反対されそうな気もします。ご家族からの反対は無かったですか…?
かみさんはそんなに反対しませんでしたね。むしろ同僚や先輩の方が『何考えてるんだ』くらいの感じでした(笑)
ーーご家族の協力があったのは大きいですね!
でも長男に『うちにはお金が無いんだから』みたいなことを言ったら、『おとうが公務員やめたからだ!』って言われたことはありますね(笑)
ーーわあ、それは耳が痛いっ…
その長男は公務員になってます(笑)
ー遊びをせんとや生まれけむ
ーーご長男は公務員に!萩原さんの影響を受けてそう…(笑)
どうですかね。次男はうちに戻ってきてくれてます。予想外でしたけど(笑)
ーー予想外だったんですね。でも嬉しいんじゃないですか?
ははは(笑)このままかみさんとこの会社と一緒に朽ち果てていくつもりでしたから(笑)
ーー今までの話を聞いてると、タダでは朽ち果てていかなそうだなと思ってしまいます(笑)
まあ楽しいことはたくさんやりたいですね。趣味というか。
ーー萩原さんのご趣味ってどんなですか?
うーん、創業してすぐはお金が無かったので、山を歩いてました。
靴があれば出来る趣味だろうって。
ーー山歩きですか!確かにお金はあまりかからないかも。
あとは自転車とか、バイクとか、不安定な乗り物が好きみたいで(笑)
仲間と組んでもてぎの7時間耐久レースに参加してみたり、オフロードバイクに乗ってみたりしてます。
ーーすごい!温厚そうな萩原さんの雰囲気からは想像もしてませんでした。
とにかく遊びが好きなんで、その準備は早いんですけどね。
カミさんには「遊びのことになると早いのに仕事は遅い」って怒られます(笑)
ーーそれは怒られて仕方ないです(笑)バイクや自転車の趣味は昔からですか?
昔からオートバイは好きでしたけど、もてぎの耐久レースも、オフロードを始めたのも、50代過ぎてからです。
ーーええ!!すごい!どんどん新しいことにチャレンジしていってるんですね。
せっかく仕事を変えたんだから好きなことをやろうって思いはあります。
『遊びをせんとや生まれけむ』ですね。
ーー年齢を重ねるほど、自由に自分の人生を遊んで楽しむ姿、かっこいい…!
萩原さん、ありがとうございました!
◯電脳賃貸
〒304-0062 茨城県下妻市下妻戊316
☎︎ 0296-30-5330
HP:http://www.denchin.com/index.php
取材執筆・写真:宮澤優輝
編集:纐纈翼
取材月:2022.10
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