「楽しいから、やめない」 下妻唯一のサーフショップ・K2 SURFBOARDSが、内陸の地で見据えるサーフィンの魅力
下妻に “サーフショップ” があることを、読者のみなさんは知っていますか? 「THE 内陸」といった印象(実際にそうですよね)が強く、サーフィンに関しては、プレイヤーはおろかサーフィンのためだけのショップがあるという事実に驚いてしまう方も少なくないのではないかと思います。
わたしたちサヌマー編集部、ならびに取材陣も、取材前は正直少しばかり不安(!)でした。ただ、下妻唯一のサーフショップ『K2 SURFBOARDS』を営む店主・小口さんのお話を聞いて、その不安は杞憂だったことに気づかされたのです。ぜひ、彼の想いや信念に触れてみましょう。
“悔しかった” からこそ、今があるのかもしれない
ーー小口さん、本日はどうぞよろしくお願いします!
よろしくお願いします!
ーー早速ですが、一点気になることが。そもそも「THE 内陸」の下妻市でサーフショップを営むのには、どういった理由があるのでしょうか?
2010年に『K2 SURF BOARDS』をオープンしたのですが、そもそも、このお店は元々僕の実家なんですよ。
ーーほう。
この店がサーフショップになる以前は、インテリアショップだったんです。親が営んでいる店だったのですが、この場所を継いで良いことになったので、大好きなサーフショップにリノベーションしました。ちょっと話は逸れてしまうかもしれないですが、内陸に住んでいるサーファーって、結構いるんですよ。
ーーてっきり、海沿いにしかいないものだと思っていました(笑)。
いやいや、そんなこともない(笑)。
ーーちなみにですが、そもそも小口さんがサーフィンを始めたのは、幼い頃ですか?
いえ、サーフィンは大学生の頃に始めました。
ーーあ、そうだったんですね。幼い頃に始めて長年関わっているのかと思っていました。
僕が大学生の頃、友達のお兄ちゃんが『サーフィンやってみる?』と誘ってくれたのがきっかけですね。やる前は「正直余裕でしょ」と思っていたのですが、実際波に乗ってみると、全然上手くいかなくて。
ーーなんとなく、共感します。「やれるっしょ」と。
高を括っていたんですよね。「いやいや、簡単でしょ」と。で、全然できなくて、自分に腹が立っちゃったんです。
ーーなんとなくですが、失敗した時に諦める人って、多いような気がするんです。「もういいや」って。ただ小口さんは、腹が立った、と。
そうですね、きっとそれが原動力となって、今があるのかもしれません。技術も無いし、波の状態であったり、波に乗る仕組みだったり、基本的な事項を一切理解していないまま始めてしまったからこそ、失敗したんだろうな、って。
ーーうん、うん。
当時は友達のお兄ちゃんがサーフィンの “さわり” の部分を教えてくれていたのですが、やっぱり何よりも重要なのは “適切な指導” だなぁ、と思いましたね。
ーー小口さんは、今、サーフィンスクールを通じて指導者の立場になることもありますよね。
そうですね。「親子体験スクール」では、「親子でサーフィンに挑戦してみたい」「将来一緒にサーフィンできるようになりたい」「家族の想い出にしたい」といった想いを持つ親子に対して、波乗りの楽しさをはじめ、ルールや注意点、実際の乗り方などをレクチャーしています。
ーー初心者の方へのスクールもあるそうですね。
「サーフィンには興味があるけれど、実際始めるにはなかなかハードルが高いんじゃないか……」と思っているような方の背中を押すサービスとして、ですね。道具のレンタルもおこなっているので、手ぶらで来ていただいても大丈夫なんですよ。
ーー他には、「レベルアップスクール」と題して、中級者向けの指導も。一点気になったのですが、「オンラインスクール」というのは、何をするのでしょうか?
スクール生が実際にサーフィンをしている姿を撮影してもらって、そこに対してアドバイスするような形ですね。ただ、もちろんそれ自体には効果があると思っているのですが、画面上ですべてを理解することは、正直不可能だと思っています。
ーーうーん、たしかに。
フィジカルのスクーリングを体験していただいて、その後にオンラインで自分のスタンスを見直していただく、そんな形でご利用いただくことが多いですね。海の状態はいつも違いますし、何より、画面上の上下・左右だけではわからないことがたくさんありますから。いわばX・Y軸だけでなく、奥行きとしてのZ軸があるんです。だからこそ、それを理解してほしいからこそ、自分の身体を通じて海を感じるのがベストだ、という想いはいつも持っています。
ーーそれはきっと、“小口さんが初めてサーフィンに触れた時のような感覚” とも近いのかもしれませんね。
まさに。正しいステップを踏んだ上で、サーフィンを楽しんでほしい。そう願っていますし、その手伝いができるといいなぁと思いますよ。しっかりと背景を伝えて、このトレーニングは何のためにやっているのか、と “理由” を伝える。そうすることで、よりサーフィンライフをエンジョイできますから。
心と、技術と、道具。その3つが揃ってこそ、良いサーフィン体験が生まれる
ーーサーフィンスクールを通じて、技術を伝達する。それに加えて、小口さんはサーフボードのオーダーカスタムもおこなっていますよね。そこには、どういった想いがあるのでしょうか?
僕自身、最初に手に入れたサーフボードは、友達のお兄ちゃんから譲り受けたものだったんです。その後サーフィンにハマって、1年も経たないうちに、自分専用のサーフボードを注文したんです。身長や体重、どんな乗り方をしたいのかを代理店に伝えて、オーダーするような形で。
ーー代理店、というと?
僕が今おこなっているような手作りのサーフボードではなく、機械で量産するようなものですね。乗り手は自分だからこそ、初めて使った友達のお兄ちゃんからのボードと、自分でオーダーしたボードとで、違いがわかってくるんですよ。
ーー違い、ですか。
見た目で言えば、サイズが違いますよね。まずは。それから、特徴がなんとなくわかってくる。このボードだとこういうことがやりやすいんだな、こっちはああいう動きができるんだな、と理解できるようになってくるんです。
ーーほうほう。
それで言うと、僕がカスタムオーダーを通じてオーダーメイドのサーフボードを作る際には、お客さまと一緒に作り上げるんですよ。お話をたくさん聞いて、どんな乗り方をしたいのか、どんなサイズのものを求めているのか、それらをすべてヒアリングした上で、形を作り上げていくんです。その情報をもとに、サーフボードを形づくる “芯材” を削っていくんです。形を作っていく。
ーーなんだか、スーツのテーラリングにも似ているような感じがしますね。スマートに見せたいなら、シャープなラインが際立つように細身のスーツにする。威厳を示したいなら、ダブル合わせでどかっと太めのシルエットにする。そういったような感じがします。
まさにそうだと思いますよ。それも、最後はやっぱり “作り手の腕” にかかってくる。だからこそ、気を抜けないですよね。乗り手の心をしっかり反映したボードを生み出さなきゃならない。ただ、極論、道具は道具でしかなくて。
ーー道具は、道具でしかない。小口さんの口からその言葉を聞けるのは、すごいことだと思います。
結局、乗るのは人ですから。人の心があって、技術があって、それを支える道具がある。その3つがぴったり揃うことで、サーフィンがより楽しくなると思うんです。何より大切なのは、やっぱり “楽しむこと” だと思うんですよ。じゃなきゃ、続けられないから。
楽しいから、やめない。楽しいから、続けられる
ーー最後に、一番大きくてぼんやりとした、概念的な質問になってしまうのですが、小口さんにとって “サーフィンの魅力” とは、何だと考えていますか?
「自分の力なんて、微々たるものなんだ」と気づくんですよ。海に入ると。波の力を上手く使ってライドしなければ、自分ばっかり疲れてしまう。
ーー波の力を上手く利用する、というか。
そうですね。そもそも、水の上に立つ感覚って、他のスポーツでは絶対に味わえないじゃないですか。
ーーたしかに。
独特なんですよ。やってみなきゃ、わからない。それがどういう楽しみなのかと聞かれても、正直、答えられないんです。「楽しいんだよ」と言うしか無いんですよね。
ーーすごくわかるなぁ。
上手くいかないことも含めて、楽しいんですよね。それを克服していくための努力を続けられたら、きっと、最後にはとても楽しい体験が待っている。海に教えてもらうことはたくさんありますよ。大きな波に巻かれてしまった時なんかは、苦しい時も結構あるけれど、でも「やめよう」とは思えないんですよね。楽しいんだから。
ーーなんだか、“楽しい” には勝てないのかなぁ、と感じますね。それを小口さんはワクワクした顔で話してくれる。
階段を登っていくような感覚ですよね。これができるようになって、じゃあ次はあれに挑戦してみよう、って。そこで、できない自分に気が付く。そもそも根本の部分を直した方がいいのかな、とか。レベル7のことをしようとするときに、直前のレベル6ではなく、レベル3から見直してみたり。そういうのをスクーリングで伝えていきたい。数字だけで判断できないことがたくさんある、海について、みんなで考えていきたいと思っています。みんなで楽しんでいきたいですね。
◯K2 SURF BOARDS
茨城県下妻市長塚184-4
☎︎ 0296-44-6606
Instagram:https://www.instagram.com/k2surfboards/
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HP:https://k2surfboards.jp/
取材・執筆:三浦希
撮影:宮澤優輝
取材月:2023.2
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