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「音楽で盛り上がる下妻を見たい」互いをリスペクトする調律師親子と、想いを乗せたオオムラサキのストリートピアノ


駅前の商店街を抜けると見えてくる、大きなピアノの看板が特徴的なコンドー楽器さん。
楽器屋さん、音楽教室として通った人も多いのではないでしょうか。
今回はコンドー楽器の池田和彦さん、海音(かいと)さん親子にお話をお伺いしました。
親子揃ってピアノの調律師として近隣地域を飛び回るお二人の調律師トークはもちろん、新しくお披露目されたストリートピアノに込められた熱い想いも必見です!

ー 「コンドー楽器」その屋号の秘密



ーー和彦さん、海音さん、よろしくお願いします!

お二人:よろしくお願いします。

ーーいきなりこんなことを言うのもあれなんですが…コンドー楽器さんなので「コンドウさん」が店長さんなのかと思ってました…(笑)

和彦さん:あぁ~(笑)それはね、コンドー楽器を開業した私の祖父が水戸にあった「コンドー楽器」さんで働いていたものですから、下妻で店を開くときに暖簾分けのような形でそのままコンドー楽器になったみたいです。

ーーなるほど。

大きなピアノが目印です

和彦さん:あと、父は6人兄弟の次男だったんですが、長男が筑西市で4男が常総市で「コンドー楽器」を営んでました。現在は事務所兼音楽教室で店舗は下妻店だけです。

ーーそんなにたくさんあったとは知りませんでした…。

和彦さん:現在水戸のコンドー楽器さんはお店を畳まれてしまいました。

ーーそういうことだったんですね!スッキリしました(笑)
お祖父様が今のコンドー楽器さんを始めたとのことでしたが、当時からピアノの調律をしていたのでしょうか?

和彦さん:祖父は学校や取引先に販売に行くバリバリの営業マンでした。当時ピアノはまだ高級品で珍しく調律も少なかったのでしょう。店内も今のようにいろいろ楽器が置いてあったわけじゃないみたいです

ーー今とは全然違う雰囲気だったんですね。

これぞ楽器屋!


和彦さん:私の父の時代はバブルの煽りもあってドンドン新品のピアノが売れていたみたいですが、祖父の頃はまだオルガンとかが主流だったんじゃないかなあ。

ーーピアノのこと、あまり詳しくないんですが、日本で普及したのは割と最近のことなんですね。

和彦さん:キッカケはそれこそバブルですね。高級品でも飛ぶように売れてましたから。私が調律師になったのはバブルが終り頃だったので、メーカーも販売店も大変でしたね(笑)

ーふとした時に気が付いた「楽しさ」



ーーコンドー楽器さんで調律を始められたのはいつ頃なのでしょうか?

和彦さん:父からです。うちを継ぐ前にヤマハで調律の勉強をして、ヤマハ銀座店で働いてたんです。

ーーそれで、跡を継ぐ形で和彦さんも。

和彦さん:そうですね。時代的なものもあって、そうなるのが当たり前だと思ってました。だから私の場合はどうしても『仕事』なんです。

「バンドブームの時は学生さんもよく来てくれていました」と、和彦さん


ーー海音さんも、跡を継ぐつもりだったのでしょうか?

海音さん:大学3年生頃まで考えて無かったです。普通にどこかで働いて、そのうち戻ってくるかもなぁ、くらいで。

ーーなにかキッカケが?

海音さん:コロナの影響でリモート授業になって、家にいる時間が増えたんです。その時に店の手伝いをしていて、楽器を触るようになったんですよ。

ーーそれまでは楽器には触れてこなかったんですか?

海音さん:ピアノを習ったりドラムをやってたりしましたけど、そんなにですね。身近にあるのが当たり前だったんで、惹かれなかったのかもしれないです(笑)

ーーなるほど(笑)

海音さん:楽器を触るようになったと言うのも、演奏じゃなくて修理とかで。バラしてみたり、直してみたりしたら楽しかったんです。

ーーほうほう。

調律する海音さん。かっこいい〜!

海音さん:それで、ピアノの調律師をやってみてもいいかなって。

ーーそ、そんなに簡単になれるものじゃないんじゃ…?

海音さん:試験もあるんですが、最初はピアノの音の違いなんて分からなかったです(笑)

ーー音を聴きわける能力って、あとから備わってくるんですか?

海音さん:知識とか技術はある程度まで教えてもらえますが、最後は経験しか無いかもしれません。

ーお互いに口を出さない『リスペクト』

ーーピアノ調律師のお仕事って想像つかないなぁ…やっぱりクラシック音楽をたくさん聴くんですか?

海音さん:実際はそんなこともないです(笑)調律師を志す前はクラシックなんてほとんど知らなかったですし。この前もONE OK ROCKのライブに行きました。

和彦さん:私は下妻スポーツクラブさんで音楽にあわせて身体を動かす『ボディパンプ』っていうのを長年やってるんですけど、それの音楽ばっかりです。

海音さん:EDMみたいなやつです。車でいつも流れてるんで、「またこれかぁ」って思うこともあります(笑)

ーーEDM!?ギャップがすごいな…
クラシックは聴かないんですね。

海音さん:聴かないってことは無いですけど、どうしても音が気になっちゃうんですよ。

ーーもう職業病ですね。

和彦さん:私も同じです。あとは息子の調律したピアノの演奏を聴くときも、意識しないようにしたりしてます。

ーー和彦さんは調律師の大先輩でもあるわけですが、やっぱり気になるところがあるんですか?

和彦さん:というよりは、もう好みの問題だと思います。それぞれのこだわりがあって、相性もありますし。それに、もしおかしな部分があったら本人が一番気付いてるはずだし、一番悔しいと思うんですよ。だからお互いに口を出さないようにしてます(笑)

ーープロ同士、それぞれの想いでそれぞれの仕事を全うする。すごく素敵な関係だと思います。

調律で使う道具のほんの一部。初めてみる形ばっかりだ…

和彦さん:さっき私は調律を『仕事』だと思ってるって言いましたけど、息子は楽しくて調律してるんで、それは本当にいいことだなと思います。

ーー海音さんの中では、「仕事だからやってる」みたいな感覚は薄いわけですね。

海音さん:むしろ最近になってようやく『仕事』だと思えるようになったかもしれません。それまでは本当に趣味の延長線上のような気持ちでした。

ーーそんな仕事に就けるなんて、最高じゃないですか!本当に調律することが楽しいんですね。

ー下妻を羽ばたく「オオムラサキのストリートピアノ」


ーーそういえば、先日見せて頂いたストリートピアノ、ついに完成したんですね!!

和彦さん:仕事の合間を縫って少しずつでしたが、完成しました。

和彦さんの想いがこもったストリートピアノ。ぜひ実物を見てみて欲しい!


ーーまさか廃棄寸前のピアノがこんな姿で生まれ変わるとは、驚きです。

和彦さん:ピアノは基本的には直せば何年でも使えるんです。今回のピアノも外見はボロボロだったんですが、調律してあげれば問題なく弾けました。あとは見た目も綺麗にしようと思ってたんですが、せっかくなら何か面白いことができないかなと。

ーーこのオオムラサキのデザイン案も和彦さんが?

和彦さん:そうなんです。やっぱり楽器屋さんなので、下妻がもっと音楽で盛り上がってる姿を見たいんです。だからみんなに親しみをもってもらえるものを考えて、下妻ならオオムラサキだろう、と。


ーーうん、うん。オオムラサキをみると下妻が思い浮かびます!

和彦さん:最初はこんなにこだわるつもりじゃ無かったんですよ。壊れても仕方ないかって思えるピアノが手に入ったので始めたんですが、今はもう愛着が湧いちゃって壊れないように慎重に運んでます(笑)

ーーここまで丁寧に作りこんでいったら、かわいくて仕方ないと思います(笑)

和彦さん:ピアノって持ち運ぶように作られてないので、動かすのも一苦労なんです。もちろん調律にも影響しますし。
だから運搬用の牽引トレーラーまで買っちゃいました。これは仕事じゃなくて趣味なので、もう好きにやれるんです(笑)

ーー
ストリートピアノにかける情熱がすごい…!

和彦さん:やっぱりたくさんの人に音楽に触れて欲しいんです。触れるきっかけが無いと音楽を始めることってなかなか難しいし、いまはそういう機会も減っていってると思うんです。だからストリートピアノを触ってもらって、たくさんの人に楽しんでもらえたら嬉しいですね。

ーー触らなければ分からない魅力、たくさんありそうです。

海音さん:ピアノのいいところって、触れば誰でも音が出せるところだと思うんです。曲は弾けなくても、音は聴こえるじゃないですか。

ーーたしかに。鍵盤を押すだけであんなにいろんな音が鳴る楽器ってすごい。

親子でパシャリ。本当に仲良しなのが取材をしていて伝わってきました。

和彦さん:これからも色んなところにストリートピアノを置かせてもらえるようにするつもりです。もし見かけたら気軽に弾いてみて欲しいですし、写真を撮ってもらえたらもっと嬉しいです。

ーー楽器としての魅力だけじゃなく、フォトスポットとしても多くの人に楽しんでもらえると思います!このストリートピアノをキッカケに音楽の道を志す人が現れるかもしれませんね。

和彦さん、海音さん、ありがとうございました!


◯コンドー楽器 下妻店
〒304-0068 茨城県下妻市下妻丁1
☎︎0296-43-2155
HP:http://www1.odn.ne.jp/kondo/


取材・撮影・執筆:宮澤優輝
編集:纐纈翼
取材月:2023.4


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