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静かなわたしたちが、「華やかなコミュ力」にうろたえないために

転職して2ヶ月ほどが経った頃、こんなことを言われるようになった。
「さぬきさんってコミュ力高いですよね〜」

こ、コミュ力……!?この私が!?

自慢ではないが、私はどちらかというといわゆる「コミュ障」を自覚している。喋るのが苦手。飲み会はもっと苦手。大学のサークル時代も交流会みたいなものが超苦手で、端っこでお酒を飲みながら壁を見つめていたタイプだ。
だからこそ、「コミュ力」というワードとは縁遠い存在だと自覚していたのだ。

それなのに、コミュ力が高いと……。
しかもその時だけではなく、他の先輩からも「コミュニケーションが得意ですよね」と言われるようになった。

そしてそう言われるたびに、「いや、そうじゃないんですよ……」と、私から説明していたことがある。

私がどうとかではない。
職場の人が、圧倒的に話しやすいのだ。

前の職場は広告代理店。所属していたのがクリエーティブ関係の部署ということもあるのか、周囲は常にピリピリギスギスしていた。迫る締切、続く修正依頼、ひっくり返される前提事項……。

当時の先輩方はみんなストイックで、作品のためであれば食事も睡眠もなりふり構わずズンズン進むタイプだ。納期が限られる中、強い言葉で周りを突き動かさなければならないときだってある。そして、いわゆる「関西のノリ」が激しい。ストレートな物言いを好み、ネタにしてあげることこそが愛である。

「ほんまダサいねん」「やれ言うたらやれ」など鋭い関西弁が飛び交う中、私はもうビビり散らかしてぎゅうぎゅうに背中を丸めながら働いていた(思い出すだけで半泣きになる)。

今の職場はというと。
なんと、イライラしている人が全然いない。話しかけても舌打ちされない。敬語率が高く、トラブルを報告したときも「まず報告してくれてありがとうございます」とむしろ感謝される。さらにチャット文化であり、「今5分ほどよろしいでしょうか……?」なんて震えながら話しかけなくても良いのだ。

まさに天国……!私はうれしすぎて色んな人に懐き、いろんなチャットに顔を出し、他部署と自部署をつないだり、社外の情報を社内にどんどんフィードバックしたりした。どうやらその結果いつの間にか、「コミュニケーション能力が高い人」として挙げていただけるに至ったらしい(※自分では決して高いと思っていない)。

そこで、思った。
コミュニケーションには、スタイルがある。
例えば「歌が上手い」だって、「オペラが上手い」「ロックが上手い」「詩吟が上手い(?)」など、それぞれ全くちがう。
「コミュ力がある」というのも、もしかすると、あまりに一括りにされすぎているのではないか。

スピード感のあるやり取りが好きで、わーっと盛り上がるのが得意な人。
情報整理能力が高く、こまめな連絡で安心感を与えるのが得意な人。
直接のやり取りより、とにかく成果物で語るのが得意な人。
それぞれのスタイルに、重宝される場所があるのだ。

人間は、ネガティブなことをより強く記憶するという。
飲み会のようなスピード感あるやり取りが苦手、すぐに言葉が出てこないような「わたしたち」の多くは、コミュニケーションについて指摘され、悔しい思いをしたことがあるのではないのだろうか。「ノリ悪いな」「気にしすぎやろ」「おもんないな〜」など……(泣)。
そしてそうやって、苦手意識がどんどん刷り込まれてしまっているのではないか。

それでも考えてみれば、こうしてnoteに文章を公開して人に読んでもらうのだって、立派なコミュニケーションである。
「なんやノリ悪いな〜」に言い返せなかったって、家に帰って「【確かに】ノリ悪いと言われた件【それはそう】」という記事でも公開すれば、それはもうノリノリなのではないか(?)。

「コミュ力がない」という文章を公開している時点で、それはひとつの「コミュニケーション能力が発揮された形」なのだ。

これからも、なんとなく理想的と思い込まされている「明るく賑やかで華やかなコミュ力」にうろたえず、自分らしい形でコミュニケーションしていきたい。いくぞ〜。

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