10月21日
イグBFC3の出品作を読み、投票をした。
応募時に読んで衝撃を受けた、ユイニコール七里『私と父とそんなに知らないおじさん』を投票に際して再読し、やっぱりとびきり「ヤバい」小説だなと改めて思う。かつて福田和也が、中上健次より川端康成のほうが断然危ないと書いていたのと同じ意味の「ヤバさ」。
ツイッターで感想を漁っていると、この作を「普通」とする旨の評価を見かけたが、ある意味で「普通」に見えるところも川端的と言えるのかもしれない。
しかし、応募時に他の作品と比べて反響が小さかったように見えたので、一回戦で消えるのかもしれないと憂いていたが、今のところブロックで一番の票を獲得していて勝手にホッとしている。単純に、この作品、この作家がどのように読まれるのかを、もっと見たい。自分の理想とするような文章だから。
それはそうと、石川淳の小説は表面のぶっ飛び方に反して本質的には至って安全なものに過ぎないとする福田和也の文章を最近読み、石川の文章に「不良サラリーマン」的な常識性を嗅ぎ取って唾吐いてる俺としては頷きながらも、しかし一方で『マルスの歌』が傑作であることは疑えない、とも思った。
もし石川淳に狂気があるとすれば、それは破壊的な性質のものではなくて、なにものも破壊できない不能性のようなものとしてあるのかもしれない。