国会議員の「良識」と「身の処し方」について
2021年6月18日(金)、MRT(宮崎放送)は以下のニュースを動画で報じました。
これは、宮崎県内最大の政治団体である宮崎県農民連盟が、次期衆院選で現職3議員を推薦することを決定したというニュースです。
宮崎県選挙区の現職3議員とは
宮崎県選挙区の現職3議員とは以下の三人になります。
武井俊輔(宮崎県第1区):元外務大臣政務官
江藤 拓(宮崎県第2区):前農林水産大臣
古川禎久(宮崎県第3区):元財務副大臣
宮崎県は日本有数の農業県であり、平成29年の統計では、農業産出額全国5位となっています。それゆえ、政治による農業振興は必須です。
3議員の中でも特に、江藤拓議員は第4次安倍第2次改造内閣の際に農林水産大臣を務めており、その際、日本の農林水産の普及促進のため、YouTube公式チャンネル「BUZZ MAFF(ばずまふ)」を立ち上げ、日本初の国家公務員YouTuberを生み出した立役者であり、農民連盟の推薦については何の問題もない(むしろ当然)と考えます。
この中で問題があるのは武井俊輔議員です。
武井俊輔議員の何が問題なのか
武井議員のこれまでの国会議員としての活動や成果はこの際、問題にはなりません。問題は議員が「当て逃げ事件」を引き起こし、その当該車両(議員所有の車)が車検切れ、自賠責保険切れのままであったことです。
起きたことは仕方のないのことです。いくら罵詈雑言を吐き、死ぬほど批判したところで、起きたことはなくなりませんし、取り返しもつきません。だからこそ、その後の対応が非常に重要になってきます。
しかし、6月18日(金)のNEWポストセブン(週刊ポスト)、および6月19日の日刊ゲンダイDIGITALが、この当て逃げ事件の被害者のコメントを以下の通りに報じております。
「事故の瞬間、プリウスを運転していた秘書と目が合い、私は『危ないだろう!』と大声で怒鳴りました。車はその時、スピードを緩めた。秘書は実況見分で『接触に気がつかなかった』ととぼけましたが、車のフェンダーには30センチほどの傷もあった。実況見分した警察官は『気がつかないはずないだろう!』『まずは被害者に謝りなさい』と怒っていましたね」
「議員は車から降りてきても無言のまま。私が『何か言葉はないのですか』と訊ねても、『私は関係ないので』と言うばかり。『車の所有者か使用者であれば関係ないことはないでしょう』と問い質すと、『まぁ……』とつぶやいて私と距離を置きました。記者会見では“お騒がせしてすみません”と深々と頭を下げていましたが、誰に対して謝っているのかと白けました。いまだ議員から直接の謝罪はありません」
「事故の時、急に車をよけて体をひねったので、左足にねんざと打ち身、しびれがあります。すぐに病院で診察を受けましたが、武井議員から事後対応を任された弁護士は“治療費は立て替えておいてほしい。領収書は弁護士事務所に持参するか、郵送して”と。上から目線にもほどがある」
出典元:上記「NEWポストセブン」の記事内から
「止めた車の前方部に回り込んだ際、国会の入館証が見えたので、運転手は秘書かなと思いましたが、(武井)議員本人が乗っているとは思いませんでした。その後、警察を呼んでやり取りしていると、後部座席のドアが開いて降りてきたので、『議員さんですか』と聞くと、(武井議員が)『まあ』と。『何か(言うことは)ないんですか』と言うと、左手の掌を上に向けながら(事故を起こした)秘書の方に誘導する仕草を見せ、無関係を装うそぶりを見せたので『えっ』と、びっくりしました」
男性は武井議員に「ドライブレコーダーを確認しましょう」と何度も迫ったものの、武井議員は「私は見方が分からない」と言うばかりだった
「警察官が(秘書に向かって)『この傷で(運転手が)気付かないわけがないでしょう。被害者にまず謝りなさい』と大声で言ってくれました。すると、秘書はいったん謝ったものの、すぐに携帯電話でどこかに電話を掛けようとしたため、その様子を見た警察官が『心から反省しているのか』と怒ってくれました。武井議員はこの時も離れた場所から黙って立って眺めているだけでしたね」
「事故の翌朝に秘書から電話があり、『申し訳なかった』というものの、相変わらず『(自転車に)気が付かなった』と。その翌日、『弁護士に電話してほしい』というので、電話すると、その(代理人)弁護士は『今後は(武井)議員と話をしないでくれ』『治療費の領収書をまとめて郵送か持ってきてほしい』と言うのです。(議員)本人からは一度も謝ってもらっていないのにですよ。この誠意のない態度は何なのだろうと思いました」
出典元:上記、日刊ゲンダイDIGITALの記事より
いずれも週刊誌レベルのメディアであり、そこの書かれていることを100%その通りだと信用することはできません。被害者の弁明も食い違っている部分がありますし。ですが、この2つの記事を総合すると
1、被害者は怒っていること
2、武井議員は現場で「自分は関係ない」という態度をとったこと
3、警察官から叱責をされるほどの対応だったこと
4、すべてを弁護士に一任され、武井議員に直接連絡が取れず、被害者が謝罪を求められないこと
この上記4つは間違い無いかなと思っております。
先程、私は「起きたことは仕方がない」と書きました。そして「事後の対応が重要」とも書きました。しかしながらその事後対応は極めて残念な内容になっているようです。
良識なき政治団体に存在意義があるのか
この記事の冒頭で書きましたが、宮崎県の政治団体「宮崎県農民連盟」は現職3議員を次期衆院選で候補として推薦すると表明しました。江藤議員、古川議員の推薦は問題ありませんが、武井議員までもを推薦したことは正直信じられませんでした。
なぜなら、前述の通り、彼は法律に抵触する行為を行なっているからです
前述の「当て逃げ」そのものは運転していた秘書が起こした事件ですので、武井議員本人の責にはよりません。ですが、当該車両が車検・自賠責切れでそれが武井議員本人の所有のものであった場合、これは法律に抵触すると考えます。
道路運送車両法は車検について以下の通りに定めています。
第58条 自動車(国土交通省令で定める軽自動車(以下「検査対象外軽自動車」という。)及び小型特殊自動車を除く。以下この章において同じ。)は、この章に定めるところにより、国土交通大臣の行う検査を受け、有効な自動車検査証の交付を受けているものでなければ、これを運行の用に供してはならない。
「運行の用に供してはならない」とは「道路を走らせてはならない」という意味です。今回の事件は、国会議員の公設秘書が運転している以上、車を運転することは仕事であり、後部座席に議員本人が乗っていたことを考慮すると、それは国会議員としての業務であると考えるのが妥当です。
となった場合、秘書に車の運転を拒否する権利は(無免許とかでない限り)原則としてないと考えるべきで、車検切れの車を公道で走らせるようにし指示したのは武井議員本人になります。これは法律に抵触する行為になるのではないかと考えています。
このような現在グレーの状況で、のちのち法律に抵触して有罪となる可能性のある人間を、「国民の代表を決める」次期衆院選で国政に送り出すことを決定した宮崎県農民連盟の代議員の方々の良識を疑います。というか正直、呆れます。
今回の当て逃げ、ならびに車検・自賠責切れの司法の判断が下されて、その結果贖罪も完了している状態であるならば、何も言いませんが、法に違反した可能性があり、贖罪も済んでいない人間を「国政」に「推薦」とか、私には農民連盟の代議員の皆様の頭がおかしくなっているとしか思えません。
また、宮崎県農民連盟の代議員の方々は、今回の決定をご自身の子供たちにどう説明されるのでしょうか?小学生では疑問には思わないかもしれませんが、中学生、高校生ともなれば、いやでもマスメディアのニュースやネットニュースで知ることになります。そうなった場合、胸を張って、武井議員を推薦することにやましいことがないと言い切れますか?
もし言い切れるというなら、あなたがたの組織はもう根っこから腐り果てているのではないでしょうか。
次回の衆議院選挙の公認について
自民党宮崎県連は2021年6月24日(木)の役員会までに意見を集約し、今月27日の選挙対策委員会で方針を固める予定になっています。
ここで自民党宮崎県連が武井議員を公認申請するとしたら、宮崎の政界には良識のカケラもなかったと揶揄されても仕方ありません。多くの宮崎県人は全国のもの笑いのネタにされて、ずっと恥ずかしい思いをしなければならないわけです。
武井議員に本当に「お詫び」の気持ちがあるならば、まず自ら公認候補から下りることを表明し、県連に自らの進退の全てを委ねるのが物事の筋であり道理だと私は思います。
なぜかそこまでしなければならないのかと言えば、武井議員が宮崎交通という地方公共交通会社の出身者であるからです。
今回の一件について、ある地方公共交通会社の重役の方に話を聞く機会を得ました。その方はこうおっしゃられました。
我々バス事業者は、万が一、車検切れ運行などを起こた場合、事業用自動車の使用停止処分や、情状が重いと事業停止処分になるという極めて重大な事案になります。バス業界の常識からいえば、彼の議員生命が終わってもおかしくない位です。
そして武井議員は、宮崎県選出議員ではありなおかつ我々「バス業界の代表」の立ち位置もあります。そんな彼の場合「普通の議員とは違った身の処し方」が当然であり、その姿勢がないことは、著しく業界の不信を買うことに他なりません。
さらに観光業界から見れば、「宮崎観光の父」である岩切章太郎氏の名前が辱められたという極めて厳しい意見も受けました。
武井議員は、ことあるごとに岩切章太郎の名前を出しています。本当に岩切章太郎を尊敬しているのであれば、今回の事象がどれくらい重たいことかわかるはず。もし、彼が今回のことで何も自らを律しないのであれば、今後岩切章太郎や宮崎交通の出身者を名乗って欲しくないと思います。
一国民として、知らなかったとはいえ不法行為に及んだのですから、相応の責任を負うべきです。一度出馬を断念し、野に身を置いて選挙区回りをした上で、次の衆院選にようやく公認候補に立てる。それぐらいじゃないでしょうか。
交通業界出身の国会議員であるならば、その出身分野においての不祥事は「より重い十字架を自ら課さねばならない」ということでしょうね。
自民党宮崎県連もこれらを受けて公認候補を立てるのを止め、武井議員は「無所属」として立候補するべきだと思います。
政党の公認を自ら下ろし、無所属となって立候補する姿は、有権者には自ら退路を絶った「背水の陣」に写ります。それでも有権者が「もう一回頑張ってこい!」と背中を押すならば、再び政界に返り咲くことができるでしょう。そうなった誰にも文句を言われることはありません。それが有権者の民意ですから。
しかし、政治団体の推薦や政党の公認はそういうわけにはいきません。
法律に抵触する人間を国政に相応しい人間としてのお墨付きを与えるなど、法治国家の根幹を否定するような行為です。
宮崎県農民連盟が武井議員を推薦するような状況でそれを嬉々として喜んでいるのかどうかはわかりませんが、彼自ら公認を下りるという声は聞こえてきません(私が知らないだけなのかもしれませんが)。
仮に他の政治団体から推薦を受け、さらに自民党県連から公認を受けた場合、それで当選して、本当に禊になるのでしょうか。
武井議員には今一度、自らの身の処し方を考えていただき、特に未来の子供たちから後ろ指を刺されることのないように、行動していただきたいとつくづく思います。
本来はこのあたりを後援会長や秘書や事務所スタッフがうまく立ち回って対応するはずなのですが......。