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実りの秋に、落つるもの
十勝の村、中札内に短期移住しているわが家。
移住2年目でも飽きることのない素敵な暮らしが現在進行中。
いつのまにかどんどん季節が進み、実りの秋を迎えた十勝での体験をつづる。
かぼちゃの謎
ある朝、玄関を開けると、そこには透明なビニール袋に入った大きなカボチャが2つ
誰がおいてくれたのか全く見当がつかないが、
どうぞというように、どでーん、と玄関に置かれている。
とりあえず土間に入れて、様子を見ていたらそのまま数日が経った。
いったい誰が、置いてくれたのか。
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お隣さん?お向かいさん?
それとも、知り合いのHさん?
などと考えを巡らすが、どうやら誰も違うらしい。
さらに、山村留学仲間のお母さん方と話していると
うちと同じ「玄関にカボチャが2つ」の怪現象が、あちこちでも発生してることが判明。
誰かの畑でめちゃくちゃカボチャができて
それをお裾分けしてくれた、
と想像するものの
山村留学生の全家庭に2つずつ
まるでクリスマスのプレゼントのように
朝起きたらそっと玄関に置いてあるというサプライズ演出は、いったい誰が?
村の人はどこのお家も畑をやっているし、カボチャの実り具合はすごい。
放っておくとどんどん実るので、「カボチャをもらう」はこの村のあるあるかもしれない。
昨年うちも学校農園にカボチャを植えてみたら、思いのほかたくさん実ってびっくりした。
食べきれないからおすそ分けしようと思い、カボチャいらない?と声をかけるも、
「うちも作ってる」or「すでにもらってたくさんある」の2択で全員にやんわり断られた経験を思い出す。
いったい誰が
というカボチャの謎は誰にも解けぬままだが、
ありがたくいただくことにしよう。
かぼちゃを丸ごと配り歩くことのない都会では絶対考えられないような、
実り豊かな十勝の村での、わりと普通の出来事。
ちなみに、その後さらにお向かいさんからも2ついただいて
わが家のカボチャストックは計4つに。
煮物、カボチャスープ、カボチャマフィン、…
今のところそれくらいしか思いつかないが
4つ食べ切る頃にはきっとカボチャのレパートリーが増えているに違いない。
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少しずつ品種が違うみたい
いもについて
農家の夏は忙しい。
小麦の収穫が終わったかと思えば、枝豆の収穫。
その後9月から10月にかけてはじゃがいも収穫と、
夏から秋にかけて、畑には常に忙しく働くトラクターがいる。
日が落ちるのが早くなっても、暗い畑でライトをつけ働きつづけるトラクターたち。
芋畑はどんどんと収穫が進み、畑の脇にパンパンにじゃがいもを詰めた金網カゴが積み上がる。
荷台にじゃがいもカゴを何段にも積んだトラックが道をゆく。
去年は興味津々に見つめたそんな光景も、2年目になると“今年もそんな時期が来たな”
と わりとゆったり眺めている。
しかしあるとき
更別あたりの道路を運転していると、道路になにか丸いものが落ちている。
歩道じゃなくて、「車道」の脇のほうに。
1つ、2つ、3つ
立派なじゃがいもが、落ちているのだった。
道にじゃがいも?
どういうことかと一瞬思考が止まり
数秒おいて、じゃがいもトラックから勢いよく転がり落ちるお芋が思い浮かんで、つい笑ってしまった。
ファインディングニモならぬ、ファインディングイモか。
トラックからポロリ飛び出して逃げ出したイモが、道路に3つ。
さらに、数日後に別の道にて
道の真ん中に大きなにんじんが転がっているのを発見する。
道に作物が転がっていくのって、わりとあるあるなのだろうか?
じゃがいもですでに洗礼を受けていたわたし。
へえ、この辺ではにんじんも作ってるんだ〜
と、
わりと普通に受け止めてしまったのだが
よくよく考えると運転中に目前に横たわるにんじんを見つけるのも、結構レアな体験か。
さて
じゃがいも3個、にんじん1本
ときたら
どうしても次は玉ねぎを期待してしまうのはわたしだけ?
ないだろうと思いつつも、運転中、目前の道につい何かを探してしまっている自分がいる。
おかえりポテト
北海道のじゃがいもが、全国へ出荷されていく。
今年、JR貨物に不正が発覚して点検のために貨物輸送が一部止まる…という騒ぎがあったのを覚えているだろうか。
時はまさに9月。
再点検で貨物が全部止まる、となった翌日の新聞には「収穫期の十勝を直撃」と心配な見出しが踊った。
収穫後、生食用のいもはどんどんと貨物で本州へ送られるらしい。通常の貨物輸送に加えて、9月〜10月前半には「馬鈴薯列車」という専用便が組まれるという。農産物の収穫時期はずらせないから、とれたものが運べないとなると、いもは腐るし農家の収入に大打撃なのだとか。
北海道がじゃがいもの産地なのは知っていたけれど、採れたいもが列をなして本州へ輸送されているのを想像すると圧巻。
近くの畑でどんどん収穫がすすんでいくようすを見ながら、頑張れ貨物よ!と祈る。
あたりの畑のいもがほぼほぼ収穫を終えた頃
スーパーでふとポテチコーナーをみたら
ポテトチップスのパッケージに
「新じゃが解禁」
の文字が大きく踊っていた。
今やポテチのパッケージが旬をうたうほどになっていることに、まずびっくりする。
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どこからともなくやってくるポテチ、年中棚に並ぶポテチ。
新じゃが解禁!で都会の人が旬を感じるのだとしても
今並んでいる袋の中の薄いカケラが、ほんの数週間前まで土の中にいた芋から生産されている、ということをリアルに想像できる人はどれくらいいるだろうか
昨年までじゃがいものの花を知らずに生きていたわたし。わたしも、この村に暮らさなければ、たぶんその言葉だけを食べていた。
ポテチのパッケージが
ただいま帰ってきましたとばかり輝いて見える。
十勝の畑で育ち実り、トラックで出て行ったいったおいもは、すっかりと姿を変えてポテチの袋におさまり、今すまして棚に並んでいる。
それを思うと、なんだか微笑ましい気分。
おかえり、ポテチよ。
「新じゃが解禁」のパッケージの向こう側、
広がる畑とポテトトラックの思い出がまぶしい。
いもほり
![](https://assets.st-note.com/img/1729603821-14I0lUnDKO7WeFRhdNYcAE9w.jpg?width=1200)
わが家の畑にも、今年はじゃがいもを植えた。
今年の畑の作物決めの際、何植える?と聞いたら、即座に子どもたちからリクエストがあった。
去年学校農園でできたじゃがいもほりが楽しかったらしい。
ホーマックで買った種芋を、ネットの情報を頼りに半分に切って乾かしてみる。全く芽が出ない。
シワシワになった種芋をそのままとりあえず植えてみるものの、やはり全く芽が出ない。
諦めてそこに違う作物を植えていたら、忘れた頃にじゃがいものツルがどんどんと伸びてきた。
わさわさと葉がしげり、白い花を咲かせ、そのあとしなしなと萎びてゆく。
堀りどきを待って、いざ、芋掘り。
ジャガイモを掘ろうと誘ったら、息子が乗ってきた。
いいよ、という返事のあと
「お母さんも、やったほうがいいよ」という。
そりゃあもちろん、母もやるとも!
わたしの人生初のじゃがいも掘りを息子と2人で決行することとなった。
ところで…
いも堀りって、ツルを引っ張っると芋がいっぱいついてくる…というイメージじゃありませんか?
少なくともわたしはそのイメージだったのだけど、いざ抜いてみると、シワシワの茎は意外とするりと抜けて、いもがほぼついてこない。
あれ?
拍子抜けした私をよそに、
息子が何食わぬ顔で、抜けたツルの下の土を一生懸命掘り進める。
と、大きないもがポロリ。
「まだある」と、さらに掘ると、またまた別のいもが顔を出した。
え、すごい!
興奮するわたしに、
「ね、おもしろいでしょ?」と息子が一言どや顔で言った。
おやおや?
いつの間にか、じゃがいも堀りを息子に教わっている。
農園活動も2年目の息子は、芋掘りもお手のもの。
いつの間にか、母にそのやり方を教えてくれるくらいに成長していたらしい。
土の中からぽこぽこ出てくるおいもを掘り当てるのは宝探し感覚に近いものがあって楽しい。
息子に負けじとわたしも土を掘り進め、たくさんのじゃがいもを収穫した。
お母さんも、やったほうがいいよ、は
楽しいからやった方がいいよ、だったんだと気づく。
ありがとう息子よ。