科研費の「知恵の木」で面白そうな研究を探してみる
日本の科学研究費に対する補助金、いわゆる科研費は国内の学術研究の要であり、年間10万件以上の応募があるそうです。このうち最新の研究約8万件をウェブマップ「知恵の木」としてまとめました。
2023年9月にマップを更新しました。本記事も編集していますが、画像等は以前のままのものも含まれます。
ウェブマップはこちらからご覧ください。PCで見るのがおすすめですが、スマホでも閲覧できます。
科研費の知恵の木(リンク)
知恵の木とは?
この手法は以前の記事で紹介してきた「概念マップ」の技法を発展させたものです。ヒートマップを親しみやすい木のデザインにアレンジし、技術的にはウェブ地図の要素を取り入れることで、分野横断的な探索がしやすいように設計しています。情報の検索ではなく”探索”に特化しています。
今回対象にしたのは、科学研究費助成事業データベース(KAKEN)にて2023年9月1日時点で検索した2021年度以降に開始または開始予定の研究、約8万1千件です。
上の図で全体像をみると、右下側が医療系、左側が人文・社会科学系、上側が材料系の学術領域という分布になっていて、その合間に複合的な学術領域が点在しています。
研究を探索してみる
ウェブマップで知恵の木を拡大すると、上の図のように個別の研究概要を見ることができます。記載内容の似た研究同士は近くに配置されているので、関心のある領域をまとめて見渡すことができます。
果実のような点の一つ一つが個別の研究を示していて、各点には研究内容を端的に示すキーワードが表示されます。
さらに、マウスオーバーやクリックで研究タイトルなどの情報を表示、そこから「詳細を見る」をクリックするとKAKENデータベースの研究情報のページにリンクします。
また、画面左上の選択ボックスから表示したい研究種目の絞り込みができます。(研究種目についてはこちらのリンク先をご参照ください)
個人的に面白いと思った研究
さて、ここからは私の独断と偏見に基づきマップ上で面白そうと思った研究をいくつか例示していきます。(括弧内は私のコメントです。)
認知症の人の「食べ方」の変化と食事の満足度(認知症になっても美味しいもの食べて生きていけたらお互いの幸せに一歩近づきそう)
幼児の対人葛藤場面における当事者としての交渉にみる社会的調整(幼児がどうやって社会性を身につけていくのか、子育て世代なので気になります)
精神障害患者の会話コーパス構築と発話特徴に基づいた診断支援AIの開発(AIによる患者ー介護者間のコミュニケーション支援、お互いの負担軽減のために大事なテーマです)
貧困層の感染症対策に資する環境DNA測定技術の他領域との融合による戦略的活用(途上国支援に先進技術を応用する試みは総じて興味深いです)
サイバー情報のリアリティ欠如がもたらす認知的作用の解明に向けた学際的研究(ネットで得た情報は実体験が伴わない故に色々弊害がありそう)
閉鎖的なオンラインコミュニティで生じるユーザ挙動の理解とエコーチェンバー現象対策(エコーチェンバーへの対策というのは興味深い)
夜の静寂に静かなマグマの足音を聴く(何とも詩的な研究タイトル・・)
私の専門が社会科学寄りなので選定に偏りがありますが、医療、材料、宇宙、量子力学、情報技術、歴史、文学など自身の専門領域を起点に周辺を探索していくと面白い研究が見つかるのではと思います。
おわりに
ここまで読んでいただきありがとうございます。「知恵の木」はまだまだ粗削りですが、もし何らかの形で興味関心を惹くことがあれば嬉しいです。シェアも歓迎します。
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