サンスクリット原典で、読んで、学んで、深めるヨーガ!第1055号『ゲーランダ・サンヒター3:38』

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  サンスクリット原典で、読んで、学んで、深めるヨーガ!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 2022.06.20.◆第1055号◇

  目次 

     ◎ ゲーランダ・サンヒター 3:38
◆ 本文 
◆ 単語の切れ目・意味
◆ 原文の語順訳
◆ 日本語訳
◆ ポイント解説
◆ 編集後記


=◎ ゲーランダ・サンヒター 3:38================

◆ 本文(原文)

画像1

kākībhiḥ prāṇaṃ saṃkṛṣya apāne yojayettataḥ
ṣaṭcakrāṇi kramāddhyātvā huṃ haṃsamanunā sudhīḥ (38)

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◆ 単語の意味(連声を切った後の、各単語の意味)

kākībhiḥ カーキー、カーキー・ムドラー
prāṇam プラーナ、生気
saṃkṛṣya 引く、引き寄せる
apāne アパーナ
yojayet 繋ぐ、適用する、上に置く、付与する
tataḥ それから

ṣaṭ 6
cakrāṇi 輪、車輪、多数、大勢、群、チャクラ
kramāt 順に
dhyātvā 瞑想する、考える、熟考する
hum フン、フム
haṃsa ハンサ、ハムサ、鵞鳥、水鳥の一種、霊魂、個我
manunā 祈祷、呪文
sudhīḥ 聡明な、賢い、賢者

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 ◆ 原文の語順訳(原文を原文の語順と発想のままで読むための訳)
  
  カーキーによって、プラーナを、引いて、アパーナに、繋ぐべきである、それから、
  6・チャクラに、順に、集中して、フム、ハムサ・祈祷によって、賢者は。


 ◆ 便宜的な意味(上の訳を自然な日本語の語順、流れになおした訳)

カーキーをなしてプラーナを引き込み、アパーナに繋ぐべきである。
それから賢者は、6つのチャクラに順に集中して、フムとハムサを
祈念することにより、

 ◆ ポイント解説

ヨーニ・ムドラー解説の2節めです。前節では身体の外側の形を説いていましたが、ここで呼吸や意識の操作に内容が移っています。

まず「kākībhiḥ カーキーによって」と、「カーキー」が登場しています。これは既に1章のバヒシュクリタ・ダウティで登場し、似たような形で用いられていました。面白いのは、カーキームドラーそのものの解説は、この3章の冒頭で名前が列挙されたのみで、まだなされていないのですね。それが本体が解説される前に、以前のバヒシュクリタであったり、このヨーニ・ムドラーであったりで、先に実態が漏れて(?)しまっているわけです。後になってようやく実態がわかるという説き方なのですね。

もう一点注目したいのが、ここで「kākībhiḥ」と具格、私のかんたん文法用語では「よって格」ですが、その複数形で表現されている点です。以前のバヒシュクリタでは単数で表されていました。ここでは複数形、つまり複数回なすことが強調されているわけで、このようなところも原文で読んではじめてわかる細かいニュアンスですよね。

さらに、バヒシュクリタでは吸い込むのが「marut 風、空気」でした。それがこちらでは「prāṇa
プラーナ」になっているわけで、この違いも作者さんは意識的に替えているはずで、そこを読み取り
たいところと思います。

そしてこちらではそのプラーナをアパーナに繋ぐ、と言っています。このプラーナが空気を指すのか、
またはエネルギー的な物質としてのプラーナを指すのか、何度か問題提起してきましたが、ここでは
アパーナと結び付けると言っているのですから、より意義が明確ですよね。その点で上のテーマと繋
がり、なぜここでバヒシュクリタと違ってprāṇaを用いているのかの整合性がちゃんと取れていると
いうわけです。このような点も読み取ってあげたいところと思います。

後半では、「cakra チャクラ」がいよいよ(?)登場していますが、その数を「ṣaṭ 6」としています。
現在チャクラの数は普通いくつとされるでしょうか?プラディーピカーでは積極的にチャクラを取り上
ていなかったのですが、ゴーラクシャシャタカではありましたよね。あちらではいくつだったでしょう
か?そんな数の異同を見るのもおもしろいと思います。ひとまずここでは「6」と挙げられたのみです
ので、詳細は今後の読み解きを期してみることにしましょう。

そしてそのチャクラに「dhyātvā」と言っています。これは他の著作でも何度か書きましたが、ヨーガスートラの「ディヤーナ」と語源を同じくする単語です。訳では便宜的に「集中して」としてありますが、「ディヤーナ」との関連に鑑みれば、「集中」では少し足りないですよね。やはりこのあたりも原文から深く読んであげるべきところでしょう。

まだまだ要点があって、フムとハムサが登場しています。ハムサはゴーラクシャシャタカで登場してそちらで詳しく解説しました。こちらでは詳細に語ってくれるのか、ヨーニ・ムドラーの解説やまた全体の読み解きを期して、ここではひとまず保留しておきたいと思います。

読みどころが満載で解説が長くなってしまいました。本来ならもっと詳細に読めるところで、紙面の都合で端折りながらの解説となっています。お読みの方におかれては、それぞれのご志向に合わせて、個々の部分を掘り下げていただけたらと思います。

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  詳細解説はブログで

  https://note.com/sanskrit/n/n4ede84f58576

                       (第1055号 完)
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  サンスクリット原典で、読んで、学んで、深めるヨーガ!
         発行者  誠  samskritamakoto@gmail.com

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