サンスクリット原典で、読んで、学んで、深めるヨーガ!第1053号『ゲーランダ・サンヒター3:36』

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  サンスクリット原典で、読んで、学んで、深めるヨーガ!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 2022.06.11.◆第1053号◇

  目次 

     ◎ ゲーランダ・サンヒター 3:34
◆ 本文 
◆ 単語の切れ目・意味
◆ 原文の語順訳
◆ 日本語訳
◆ ポイント解説
◆ 編集後記


=◎ ゲーランダ・サンヒター 3:34================

◆ 本文(原文)

画像1

atha viparītakaraṇīmudrāyāḥ phalakathanam
mudrāṃ ca sādhayennityaṃ jarāṃ mṛtyuñca nāśayet
sa siddhaḥ sarvalokeṣu pralaye 'pi na sīdati (36)

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◆ 単語の意味(連声を切った後の、各単語の意味)

atha さて、それでは
viparītakaraṇī ヴィパリータ・カラニー
mudrāyāḥ ムドラー
phala 果実、実、結果
kathanam 物語、記述、報告

mudrām ムドラー
ca また
sādhayet 履行する、遂行する、繰り返す、用意する、叶える、確保する
nityam 常に
jarām 老い
mṛtyum 死
ca また
nāśayet 消滅させる、追放する、追い払う

saḥ かれ、それ
siddhaḥ 成就された、達成された、成功した、完成した、聖者、達人、シッダ
sarva 全ての、一切の
lokeṣu 世界、空間、場所、国
pralaye 消滅、破壊、死、世界の消滅、カルパの消滅
api ~も、~でさえ
na ない
sīdati 坐る、沈む、滅する、朽ちる

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 ◆ 原文の語順訳(原文を原文の語順と発想のままで読むための訳)
  
  さて、ヴィパリータ・カラニー・ムドラーの、果実・話である。
ムドラーを、また、遂行するべきである、常に、老いを、死を、また、消滅するであろう。
彼は、シッダは、全て・世界において、消滅において、でさえ、ない、朽ちる。
   

 ◆ 便宜的な意味(上の訳を自然な日本語の語順、流れになおした訳)

以下が、ヴィパリータ・カラニー・ムドラーの果実の話である。
   常にこのムドラーを遂行する者は、老いと死とを滅するであろう。
   彼は、一切の世界においてシッダであり、カルパの消滅においても朽ちることが無い。

 ◆ ポイント解説

ヴィパリータ・カラニー解説の続き、「phalakathana」に入っています。
これまでいくつかの行法でも言われたように、老いと死とを無くすという点や、最後に彼は全ての世界におけるシッダであるとまとめています。これでヴィパリータ・カラニーの解説は終わりです。

これまた抽象的というか、実質的なことが何も語られていないように見えてしまいますが、いかがでしょうか。ただ讃辞としては最大級の讃辞と思い、それだけこの行法が重んじられた証ともいえるかもしれません。

ここまでの語りで腑に落ちない、何か足りないと思われる方は、プラディーピカーを参照されて補足していただけたらと思います。

表現について、訳では「カルパの消滅」とした元の単語は「pralaya プララヤ」です。これを佐保田さんは「劫滅」と訳されています「劫」とはカルパのことですので実質は「カルパの消滅」ということでしょう。

Chandra Vasuさんは「Pralaya」とそのままにしています。おそらくサンスクリットのネイティブに近いと思われる彼には、他の語に訳すよりもこのままの方が良いと判断されたのでしょう。それだけ身近な概念と言えるかもしれません。

James Mallisonさんは「great dissolution」としています。これはどういう意味かとネットで検索すると、元の単語「pralaya」の意味だと出てきます。Pralayaに充てた英訳がこの語なのでしょうか。とすると実質pralayaと同等と言えます。

おもしろいのは、この名前のカードゲームがあることで、その名も「pralaya」と言います。作者さんは日本の方のようで、内容は公式サイトから引用すると「沈みゆく島から出来る限り多くの叡智と生命を救う事が目的のカードゲームです。」だそうです。

「沈みゆく島」にプララヤを重ねて、ゲームの作者さんはインド的なプララヤの概念を念頭にこの名称をつけたのでしょうか。とするとこんなところにもサンスクリット、インド思想の影響があるという証左のひとつになりそうですね。

ただ、なぜか日本ではこの語を「プララーヤ」と長母音で表記するようです。不思議なことに、ゲームに関係しない例えば精神世界系のサイトでもこうなっています。なぜ長母音にしてしまうのか、大本にそうしたソースがあって、他の情報は全てそのあたりの孫引きをしているためかもしれません。

その点なども含めて、調査するといろいろ面白いと思い、ご興味がおありの方はネット検索をしていただけたらと思います。

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  詳細解説はブログで

  https://note.com/sanskrit/n/n4ede84f58576

                       (第1052号 完)
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         発行者  誠  samskritamakoto@gmail.com

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