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【新刊紹介】ゼロから話せるエストニア語①

9月18日取次搬入予定新刊『ゼロから話せるエストニア語』から、内容の一部を抜粋して紹介します。


エストニアとは

 エストニアという国の名前を聞いたことがある人は最近ずいぶん多くなってきましたが、ではそこで話されているエストニア語を自分の耳で聞いたことがある人は、どのくらいいるでしょうか。

 エストニア語はそもそも話者が少なく、エストニア語を母語とする人は100 万人弱で、そのほとんどは日本から8000 キロほど離れたエストニア共和国に住んでいます。エストニアの国語はエストニア語ですから、エストニア語を母語としないエストニアに住む人々も、多くはエストニア語を第二言語または外国語として話しますが、母語話者と非母語話者を合わせても話者数は120 万人を少し超える程度です。地球上で日常的にエストニア語が話されているのはほぼエストニアとその周辺のみなので、日本の日常生活でエストニア語を耳に / 目にする機会はまずないと言っていいでしょう。それでも、もしかするとどこかでエストニア語に触れているかもしれません。エストニア語とはどんな言語なのでしょう。

 エストニア語は、ウラル語族に属する言語です。このグループにはエストニア語のほかにフィンランド語やハンガリー語などが含まれますが、エストニア語はフィンランド語と近い親戚関係にあって、ともにバルト・フィン諸語に分類されます。バルト・フィン諸語と言っても、いわゆるバルト三国のほかの二国であるラトビアとリトアニアの言語はインド・ヨーロッパ語族に含まれ、エストニア語とは大きく違います。また東の隣国ロシアで話されているロシア語も同様にインド・ヨーロッパ語族に属します。エストニア語はラテン文字(アルファベット)で表記されるので、特殊文字はいくつかありますが、文字からしてわからないというような言語ではありません。エストニアがたどってきた歴史的経緯のため、エストニア語はドイツ語とロシア語の影響を強く受けてきましたが、言語的に最も近いのは上述のようにフィンランド語です。ですから、フィンランド語がわかる人にはエストニア語はとっつきやすい言語です。とはいえ、フィンランド語がわかる日本語話者自体それほど多いわけではありません。かといって、がっくりする必要はありません。エストニア語は日本語話者には比較的親しみの持てる特徴がいくつもあるからです。

第2回 アイデンティティとしての言語 に続く


書誌情報

書名 ゼロから話せるエストニア語
著者 宮野恵理  / 松村一登 著
判型 A5判並製152ページ
ISBN978-4-384-06123-9 C0087
定価3,960円 (本体 3,600円+税)
音声ダウンロード・ストリーミング対応
電子書籍あり


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