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アニメPから見るアニメータースキル検定

アニメーションスキル検定なるものが世に出てきたという事で、アニメPの私が個人的に思う事を書いてみようと思います。繊細な題目になりますので、あくまで私的な意見であり、本検定を宣伝したり貶めたりする意図は一切ございません。
まずはアニメータースキル検定とは何かを説明します。

アニメータースキル検定とは・・・
アニメータースキル検定、略して「アニ検」は、
アニメーターのスキルの土台となる「動画」という分野の技術と知識を測る検定です。
プロのアニメーターになりたい人はもちろん、絵を描くのが大好き!という方もぜひチャレンジしてみてください。
お申し込みは「試験申込みのご案内」
【トレス・タップ割り検定5級】9,600円(税込)U-18割:9,100円
【トレス・タップ割り検定6級】7,200円(税込)U-18割:6,700円 

(アニメータースキル検定公式HP https://aniken.sikaku.gr.jp/index.html 2024/11/14)から引用

植田益朗(株式会社サンライズ 元常務、株式会社A-1pictures 元社長、株式会社アニプレックス 元社長)が設立した一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟 NAFCAが主催している検定だそうです。
理事は数名いますが、ほぼアニメーターさん・声優さんが理事を務めていますね。NAFCAとはどういう組織か、公式HPに書かれていましたので抜粋します。

アニメに未来があることを信じたい
商業アニメ成立から100年。関連産業の売り上げは3.5兆円を超え、国を象徴する文化として、世界を席巻するアニメは、人々の生き方にさえ影響を与え、心を豊かにするコンテンツです。
一方で制作現場は、夢を育むファクトリーとは程遠い、体力・気力の限界を“この仕事が好き”という作り手の思いで支えている状況であり、現場の疲弊は、破綻寸前といっても過言ではありません。
日本のアニメは、貧困を覚悟しなければ、飛び込めない場所であり続けるのでしょうか。それが引き起こす人材の枯渇を、制作体制の海外依存で補い続けるのでしょうか。働き方が世界的に変化し、雇用の不平等に厳しい目が注がれる中で、行政からメスが入るまで、この状態を放置するのでしょうか。
私たちNAFCAは、待遇改善のみを掲げる団体ではありません。経営側と制作側が互いの事情を理解し、責任を自覚し、それぞれの知恵で、蓄積した澱みを解消し、大きなゴールをめざす。そして国の文化戦略とも連携し、もっと高みをめざしていくための団体でありたいと考えます。
立場が違えども、この世界に関わる人すべてが、アニメを愛しているならば、きっと道は拓ける。そう信じています。

 一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟公式HP https://nafca.jp/vision/ 2024/11/14 より引用

昨今のアニメーターの待遇や人材の枯渇を危惧して作られた組織のようですね。

さてここからは私の私見をいくつか書いてみます。

■検定料の高さ

HPを確認すると検定は大きく二種類。
①デッサン割り検定
②トレス・タップ割り検定
それぞれ何級もあり、合わせると10級分あります。
今回の検定で実施されたものを見ると、6級が7,200円、5級が9,600円。
級数が上がると費用も上がるように受け取れるため、4,3,2,1といけば、どんどん上昇していきますし、不合格だった場合は同じ級を何度も受験する事になりますのでその分高額になります。

■アニメーターは動画マンだけではない
アニメーターはご存じの通り、原画マンもアニメーターです。
その為、原画マン用の検定も今後出てくるのではないかなと思っています。
なぜなら、動画ができても原画ができるとは限らないからです。
この意見に関しては派閥があります。「動画ができないと原画はできない」意見と、「動画をいくらやっても原画を描けるようにはならない」意見。
事実、動画が下手でも原画がめちゃくちゃうまくて早い方もよく見ますし、逆もしかりです。

■この検定で何を解決するのか

一見、教科書に書いてある技術を身に着けるとアニメーターとして生きていけるような気がします。
しかし、アニメーションの語源はラテン語のアニマから来ており、そこから「生命のないものに生命を吹き込む」という意味でアニメーションと使われるようになりました。
その為、中割りが出来る=生命を吹き込める。に実はならないのです。
そしてもう一つ大事な事は、スピードです。
アニメーター(動画マン)はほとんどの場合1枚あたりの対価で報酬をもらいます。その為沢山書いたら書いた分報酬がもらえるのが現実です。
そうでないパターンもありますがそれは一部なので割愛します。
その事から現場では、「アニメーション検定〇級受かりました!」と言われても、勉強はしたんだろうなくらいにしか思えず、実際アニメーションはうまいのか早いのかが判断出来ないので評価に直結はしないのが現状かと思っています。

■検定は意味がないのか

ないわけではないと思います。本当に最低レベルの知識を得ずに業界に入ってくる方が多い、且つ勉強をするタイミングも中々ないので、自分がわかっていない事もわからない状態が業界にあるのも事実です。
そういう超最低レベルの知識をつけるという意味では、とても有意義だと思います。
間違っても検定に受かったから、単価や収入が上がるなどとは思わないように。

■これはビジネスです

NAFCAに携わっている方のSNSなどで、検定をやるにはお金がかかる、自分たちはボランティアみたいなものだと言っている発言を目にします。
確かに検定を始めるにも、教科書を作るにもお金がかかります。
しかし、その大部分は最初だけです。
一度スキームができてしまえば、それを回す人件費と会場費+経費で済むので、利益がでます。
簡単に言うと、役者の事務所の収入源は養成所とはよく言われる話で、私はそれと一緒だと認識しています。
詳細については控えますが。

■危惧する事

最も危惧している事は、実際にNAFCAで稼働している方々は純粋にアニメーション業界の事を思って行動していて、このビジネスに巻き込まれている事が一番心配です。
アニメーターは自分の技術に不安を持ってしまうし、どうしても比較されるので心配になります。そこに検定なんて安心材料になりそうなものがお金を出して受かれば得られるのであれば、受けてしまうでしょう。
厳しい世界です。プロにも上には上がいます。それは検定を審査する方を持っても同様です。

■総括

そのアニメーションが良いか悪いかは、お客さんが判断するものです。
決して、内輪で決めてよいものではありません。
私も一アニメPでありファンとして言いたいのは、均一化されてビジネスに汚染されたアニメに魅力は感じないという事です。
私が見たいアニメは、もっと自由で雑多で新しい世界を見せてくれるものです。アニメを見たとき「このシーン描いたアニメーター楽しみすぎだろw」なんて言いながら見るのが好きなんです。

何度でも言います、アニメーションのクオリティは均されて内輪でルール化され、フォーマット化する事では断じてありません。
全てお客さんが決める事で、制作現場は熱意を持って楽しく作る事がクオリティです。
甘ったれたようで実は本質なんです。

アニメーションに関してはいくらでも話は尽きないので、このあたりでやめときます。

批判的な意見が続きましたが、あの、応援してます

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