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リモートでも仕事ができる時代に、「出社」にこだわる理由。Sansanがオフィス移転に込めた想い

コロナ禍を経て、多くの企業が「リモートワークか出社か」を模索しています。その中でSansan株式会社では、リモートワークを併用しつつ、あえてオフィスで働くことを基点とする「オフィス・セントリック」を掲げ、2024年9月に本社を移転しました。

「出社することにどんな意味があるのか?」
「オフィスがあることで、仕事やメンバーとの関係性にどんな変化が生まれるのか?」

Sansanがオフィス・セントリックを選択した背景とオフィス移転がもたらした変化について、人事本部の平山と、オフィス戦略部の加賀谷に話を聞きました。

写真左:平山 鋼之介(ヒラヤマ コウノスケ)
人事本部 Employee Success部 部長

2021年にSansan株式会社へ入社。人事本部 Employee Success部の部長として社内制度設計から組織・人材開発まで幅広く担当する。

写真右:加賀谷 洋輔(カガヤ ヨウスケ)
コーポレート本部 オフィス戦略部 アシスタントグループマネジャー

2023年、Sansan株式会社へ入社。オフィス戦略部のアシスタントグループマネジャーとして、本社移転プロジェクトの中核を担う。


大事なものを失わないために、オフィス・セントリックへと舵を切った

―2020年頃、コロナ禍でフルリモート勤務が余儀なくされる中、社内ではどんな課題を感じていましたか?

平山:大きく二つの課題がありました。一つは、社員の仕事が分断していくこと。

当社では、部門を越えて連携し、互いに協力し合う「7人8脚」という精神を昔から大切にしています。当社が提供している営業DXサービス「Sansan」や、インボイス管理サービス「Bill One」などの全てのソリューションは、開発組織が作り、営業が販売し、バックオフィスがそのメンバーを支えるといったように全社員が連携して、世に送り出されています。

例えば、営業担当がお客様から聞いてきた声を、開発のエンジニアと共有することでプロダクトの改善に生かすといった連携を重視しているんです。

かつて、私たちが1フロアに収まる規模だった時は、営業が受注した際やサービスのリリース時に銅鑼をならして、みんなで喜び合っていました。そのカルチャーを忘れないように、今でも各フロアに銅鑼があって、みんなで喜び合いたい時にはならしています(笑)。

そんな、一体感を大切にしてきた当社です。もちろんチャットツールでもフィードバックは可能ですが、オンラインで事務的にコミュニケーションを取ることと、近くで直接会話をすることでは、感じ方や捉え方が全く異なります。フルリモートになることによって、「生」のつながりを重視してきた当社の良いカルチャーが薄れてしまいかねない危機感を、人事だけでなく経営陣も強く感じていました。

もう一つは、社員の孤独感です。私自身も緊急事態宣言の最中に入社しました。思い返すと、出社が制限されていて周りには誰もおらず、上司とも月に2回程度しか会えないような状況で、一人で働いているような感覚になることもありましたね。

特に営業を中心としたフロント職種の社員は、先輩や同僚とも顔を合わせないまま、自宅からパソコンの画面に向かいオンラインミーティングで商談をしたり、見込み顧客へ電話をかけたりする状況でした。断られても誰も励ましてくれないし、受注できても喜びをシェアし合える場所がない

小さなことのようですが、この積み重ねは、社員の活力を失わせていくと感じていました。Sansanはコロナ禍でも採用を止めず、むしろ加速させていたので、特に新入社員の孤独感は看過できない問題だと考えました。

ーその後、2021年10月という早い段階で、オフィス・セントリックな働き方に切り替えることを発表しました。

平山:当時はまだフルリモートを継続している企業も多い中での判断でした。誰も正解はわからない、だけどSansanはオフィスに寄せていくんだと。そうしないと、大事なものが失われてしまうという危機感が本当に強かったですね。人事としても経営陣としても、状況の変化に対応しつつ、当社の良い部分は残していきたい思いがありました。

ただし、無闇に出社したり、一気に全員に出社を求めたりするわけではなく、感染症の拡大状況を見ながら段階的に進めていきました。もちろん、家庭の状況などの事情で出社が難しい方には個別に対応するなど、柔軟な運用を心がけました。

オープンスペースや内部階段で、自然とコミュニケーションが生まれるように

ー出社をベースとした方針を打ち出した中で、以前のオフィスでは課題も多かったとか。

加賀谷:はい。表参道の拠点は4カ所に点在していて、最も大きな拠点でも1フロア300坪、8フロアに分かれていました。人数が増えていくと、同じ事業部の社員すら別フロアに席を配置せざるを得ない状況でした。

当然ながら、部門間のコミュニケーションは取りづらい状況でした。事業拡大に伴って採用ペースも早かったので、良い執務環境を整えるためにも、点在した拠点を集約し、連携の取りやすい広いオフィス環境を目指して移転を決断しました。

平山:社員からは「出社しているけど拠点やフロアが分かれているため、直接話せる機会が少ない」という声も上がっていました。これではせっかくの出社の価値が十分に生かせないと感じていたので、その観点でも移転の意義はあったと思います。

ー渋谷サクラステージに構えた新オフィスには、どんな工夫を盛り込んだのでしょうか?

加賀谷:まずは、執務エリアの広さです。800坪のフロアを5フロア借りていて、収容人数が増えたことで事業部と開発部門が同じフロアで働けるようになりました

出社するメンバーが増えると、商談スペースが不足することも課題として想定していたので、新オフィスでは個室を増やして、オンラインでの商談にも多数対応できる環境を整えました。

連携が取りやすくなった執務スペース
商談に集中できる個室

加賀谷:また、「偶然の出会い」が生まれやすい設計にこだわりました。例えば、オフィスの各フロアをつなぐ内部階段。オフィスのエレベーターだと、どうしても人と人とが出会う機会が限られますし、挨拶などのコミュニケーションも生まれづらいですよね。それが階段になることで、すれ違いざまの挨拶や会話が自然と増えました

平山:オープンエリア「Park」もコミュニケーションが生まれるきっかけとなっています。オフィスへの入り口から内部階段に向かう動線に「Park」があるので、「帰りがけに社内の知り合いとたまたま会い、少し話して帰る」といった光景をよく見かけます。

内部階段からつながる「Park」

平山:自然な社内コミュニケーションが増えた効果か、移転前後で社内部活動制度「よいこ」の参加者は約1.3倍に、就業後に専用冷蔵庫からドリンクを取り、自由に交流ができる「ヨリアイ」の参加者は約2.1倍に増加しています。エンゲージメントサーベイのスコアも徐々に上がってきていますね。

同じ空間で働くことで生まれる価値を大切にしていきたい

ー 移転して、お2人はどんな変化を感じていますか?

平山:社内で偶然出会った社員と会話する機会が本当に増えました。私は意識的に「Park」にいる時間を多くしたり、毎週オフィス内を散歩したりしているんですが、必ず誰かに声をかけたり、逆に声をかけられたりしています。そういった偶発的な出会いから、企画や施策の改善など、何かしらの「ネタ」が見つかることが多いですね。

加賀谷:内部階段のおかげで同期と会う確率が上がって、「久しぶりに飲みに行こう」という話も自然と生まれています。以前のオフィスでも顔を合わせることはあったんですが、今のオフィスの方が明らかにコミュニケーション量は増えていますね。私はほぼ毎日出社していますが、出社の価値を感じられる日々を過ごせています。

――思わぬ効果もあったと聞きました。
 
平山:来客が増えましたね。「Sansanさん移転して、すごいオフィスになったらしいですね」と、取引先の方が気軽に立ち寄ってくださるようになりました。社員の知人をゲストとして招く交流イベント「Sansan Bar」の参加率も格段に上がり、先日は皆さん良い感じにお酒も入って盛り上がっていましたよ。あと、広くなったことで自然と「歩数」も増えました(笑)。
 
――今後の展望を教えてください。

加賀谷:実は、今の組織拡大ペースが続くと近い将来に現在の座席数では足りなくなる予測が出ています。今後も、異なる部門が同じ空間で働くことで生まれる価値を大切にしながら、オフィスの戦略を考えていきます。目下では、まだまだ不便な点もあるので、より便利に、よりコミュニケーションが生まれるオフィスにするために、さまざまな検討を進めていきます。

平山:オフィス・セントリックな働き方は、フルリモートを選択できる会社と比べ、制約が多いように感じる方もいるかもしれません。しかし私たちが目指しているのは、あくまでもミッションの実現です。そのために会社は事業を成長させ、その結果として社員本人にも経験や報酬という形で返ってくると考えています。

学生時代の部活動を考えてみると分かりやすいかもしれません。楽しむことを第一にしている部活もあれば、目標にコミットして全国大会を目指す部活もある。Sansanは間違いなく後者です。だからといって個別の事情への配慮は欠かさず、育児や介護がある方には柔軟に対応しますし、社内制度を活用しながらライフワークバランスを保って働いている人もたくさんいます。

「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションに向かう社員の皆さんが、オフィスにいることの価値を存分に感じられるような工夫を、これからも実施していきたいと思います。



【もっとSansanのカルチャーを知りたい方へ】
「Park」の活用シーンについてはこちらの記事でご紹介しています。オフィスの中心であるこの場所から、どんな出会いが生み出されているのか。ぜひ合わせてご覧ください。