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温帯低気圧の雨

あれからだいぶ時間がたった

冷暗室に取り残されたじゃがいも

その芽を見ながら、僕は時の流れを感じていた

時が止まったのは僕だけだった

綺麗だったこれは、変色し、毒を帯び、
そして発芽した

綺麗だった君は、色を変え、愁いを帯び、
そして去った

僕は取り残された



芽吹いた種を、僕は植木鉢へとうつした

そして綺麗な水をかけた

大切にされれば、毒を出す必要がないことに気付くだろう

誰も君を粗末にしない



優しさが足りなかったのか、過剰だったのか、僕には分からない

今の僕にできることは、君が残してくれたこの種に愛を注ぐこと



じきに花が咲き、枯れて、
綺麗な種ができるだろう

そして、僕の憂いも去るだろう



無駄な気がした毎日に

さよならを告げるだろう









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