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「予備校文化」と奥井潔先生

5月の連休中にゲンロンカフェから配信されたトークショー『予備校文化(人文系)を「哲学」する』(駿台予備学校から入不二基義、大島保彦、霜栄の各氏が登壇)は、自分の半生を振り返るきっかけとなった。 わたしにとって予備校生として駿台に通った1年間は大きな意味をもっているのだが、これまでその体験を「予備校文化」として意識することはなかったからこの問題提起は新鮮だった。そして「文化」と捉える以上「高校卒業後大学に入るまでの猶予期間」に限定されるものではなく、以降のわたしの人格形成に影

    • 大島保彦先生「上級語法研究」から「ギリシア語ラテン語超入門」へ

      かれこれ20年以上ことばにかかわる仕事をしてきたのだが、振り返ってみれば、30年ほどまえの夏、駿台予備学校で大島保彦先生の「上級語法研究」を受けてことばのおもしろさを知ったことがそのきっかけと言ってもいいかもしれない。 「上級語法研究(夏)」と「上級語法演習(冬)」は何ヶ国語にも精通した大島先生の代名詞のような講座で、前置詞や動詞がおびる語感やイメージを伝えてくれたり、単語を語源から解説してくれたりするので、ギリシア語やラテン語とのつながりまでも見えてきて、ことばはこんなに

      • 英単語ピーナツと川村徹先生

        駿台予備学校横浜SECC館の「英文法演習」の教室に入ってきた川村徹先生の印象は、その蓬髪から実験室から現れた化学者であった。ひとつの分野に一心不乱に傾倒している文字通り専門家のたたずまい。こだわりの強そうな印象もあったが、英語の職人といった風体に興味をもった。 高校教師の几帳面な授業に慣れた高校生には合わなかったかもしれない。受講生は次第に減っていったが、わたしのみるところ文法解説はいたって正統的。伊藤和夫先生を敬愛しているようすで、テキスト内の問題をつねに「英文法頻出問題

        • 高橋善昭先生の思い出

          高橋善昭先生が昨年亡くなっていたことを知った。 駿台予備学校を退職されたらしいことは聞いていたが、その後どうされているのかまったく存じあげず、いつのまにか20年ほどが過ぎていた。 高校2年からの3年間、人生の行き方を示してくれたのは駿台の講師たちであった。中学高校生活はそれなりに楽しんだけれども、自らの意思と選択で生きているとはいいがたく、こと勉強のおもしろさと意味には気づかずに終わったから、わたしにとって学び舎といえば駿台なのである。 伊藤和夫先生の授業を受けた最後の世

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