由利聖子という(主に)少女小説の作家を御存知でしょうか?
由利聖子という(主に)少女小説の作家を御存知でしょうか?
おそらくは、ほとんど知っている方は居ないと思います。
この方の作品が大好き! なワタシとしては、無茶苦茶残念です。
なのでしばらく、このユーモア少女小説及びルポルタージュを書いた昭和初期の作家と作品について熱弁していきたいと思います。
元々自分がこの方を知ったのは、三一書房の「少年小説大系」の中で二冊だけある「少女小説編」からでした。
この二冊は遠藤寛子氏監修で「少女の友」と「少女倶楽部」、昭和初期に人気のあった雑誌の傾向に分けて編集されたものです。
なお、最近復刻された吉屋信子の「街の子だち」も収録されています。
その中であえて「友」に書かれた作品を、両方の巻に収録されているのが由利聖子です。
遠藤氏はその後、「『少女の友』とその時代」(本の泉社・2004年)において第八章・第九章と大きくページを割いて、由利聖子とその作品について記述しています。
ただもうこの方については、実にデータが少ないんですね。
本名・鈴木富美子。
ただしこの名前自体は、昭和16年発行の「少女三銃士」において出てきたことから、結婚後のものと思われます。
昭和18年2月、31歳という若さでお亡くなりに。
Wikiには「1911年7月8日 - 1943年2月」とあるんですが、引用とされているこの本に誕生日のことは載っていないので、果たしてどこから出てきたんでしょう?
遠藤氏が引用している「少女の友」昭和10年10月号のインタビュー「お机拝見」に出ていたのでしょうか。現在このインタビューは未見なので、そのうち入手できれば、と思います。
というか、かなりワタシ、「少女の友」も、それ以外の雑誌においても作品も記事も可能な限り入手したのですがね。ヌケがあるのは残念。
あと、
・東京府立第三高女
・お茶の水附属高女専攻科
出身で、
・父上が逓信省技師であった
・六人きょうだいの一番上であった
・だが現在著作権継承者は不明
とされているんですね。
まあ現在は著作権は完全に切れています。
だからこそ、Kindleで現在翻刻して随時最低価格で出しているのですがね。
論文を書いている研究者としては福田委千代氏、が現在確認されている唯一の方です。
・昭和前期の少女小説--由利聖子『モダン小公女』の世界
福田 委千代 学苑 (760) 85-95, 2004-01
・先生になる少女・由利聖子『小さい先生』--「少女の友」の少女小説
学苑 (773) 147-153, 2005-03
・少女小説の変遷--由利聖子と「少女の友」をめぐって
昭和女子大学大学院日本文学紀要 / 昭和女子大学 [編] 17 27-38, 2006
「モダン小公女」の論文は非常に興味深く、ワタシが「由利聖子は少女の友より少女画報での文章が好き」となったきっかけです。
どうしても「少女の友」がクローズアップされ、その中の一部としてしか挙げる余裕がなさげな以上、「少女画報」での小説、「新女苑」でのユーモアルポルタージュまで言及することはできないのかも+選者の好みというものが反映しているのかもしれません。
個人的には、上に挙げた著書ではどちらかというと「下げ」られている、「少女倶楽部」に唯一連載された作品の方が、本来の流れではないか、と思うのですがね。
遠藤氏は「村岡花子氏が評されたように」「微笑みと涙」に彩られている、と記しているのですが、「少女画報」やルポルタージュを中心にして考えると、この要素はむしろ、「少女の友」によって「あえて」筆を抑えた結果そうなったのではないかと思うのですね。
まあこの後の作品紹介においてその辺りも。
とはいえ、ワタシ自身は、研究というより、それ以前のテキスト整備がまず一番だと思っているので、「どう描かれているか」「どういう位置付けか」等のテーマで語られる論文は書かない予定です。
そういうのは、色んな作品を見た方にお願いしたいところです。
ワタシはこの人の作品が好き、好きだから整備して皆に伝えたい、それだけです。