「新しい生活様式」ではなく「日常のコロナ予防対策」。言葉の使い方が与える影響。


はじめに


政府専門家会議が、コロナ予防のための「新しい生活様式」の実践例を示したことが話題になっています。


特に、食事の際に、「対面ではなく横並びで座ろう」 や「料理に集中、おしゃべりは控えめに」ということに対して居酒屋や飲食店経営者からも不満の声が出ているようです。


さらに、「新しい生活様式」と打ち出されたことで、一生この生活様式に変えていこうという印象を与えるという指摘もあります。


私からは、政府専門家会議の示したものは、「新しい生活様式」ではなく、あくまで「日常のコロナ予防対策」だということと、それらの言葉の言い換えがどのような意味合いを持つかを述べていきます。


そもそも生活様式とは何か


まずは、「生活様式」という言葉の定義についてまとめます。以下、定義として参考にしたものです。


狭義には特定の社会や集団の生活手段の所有状況,使用の様式,消費の水準や様式などをさす。しかし,人類学などにおいては概念がさらに広い。たとえば生活とその周辺の社会関係に観察される特徴的な慣習,規範,価値観,感情様式などが生活行事,交際などの面で具体的に現れることをも生活様式と呼び,ほぼ文化という概念と同義語に用いる。(出典 https://kotobank.jp/word/生活様式-85612


上記を一言でかみ砕いていうならば、「日本における日常生活の仕方」だと捉えていいと思います。つまり、具体的には、食事や家事、勉強、子育て、介護、娯楽などの手段・方法のことだということです。この点は、政府専門家会議の提唱する「新しい生活様式」という使い方は間違いではない、といっていいでしょう。


しかし、注意が必要なのは、人類学においては、「習慣、規範、価値観、感情様式なども生活様式」と呼ぶということです。これは、大事な点です。なぜなら、生活様式を人類学が定義する意味として捉えると、政府の提唱する「生活様式」は、生活様式のほんの一部であって、別の言葉で定義付けをした方がもっともらしく聞こえるからです。つまり、コロナの予防のために日常生活の仕方を変えるというのは、端的に言えば、「日常のコロナ予防対策」なのであって、「生活様式」という言葉を使うことで、生活意識を一変させなければならない、という印象を与えます。


なぜ「新しい生活様式」ではなく「日常のコロナ予防対策」と言い換えるべきか


コロナの流行は、時代の転換を感じさせる。しかし、実状は生活様式を大きく変えるほどの変革は起こさせない、というのが理由です。


なぜそう言えるのか。それは、「新しい生活様式」が紹介された時の人々の反応とコロナに対する過剰な恐怖という点を考えればわかる。まず、これまでの当たり前だった風習(おしゃべりをしながら食事をする、集団で授業を受ける、オフィスで集まって仕事をする)は、人間にとって非常に原理的な生活様式だ、ということ。そして、コロナによる感染の拡大は、感染者の隔離と飛沫予防がしっかりできていればワクチンや特効薬がなくても実は意外と抑えられるということ。


これらの実状を考えれば、私たちは習慣や規範、価値観、などの生活様式を変える必要は実はなく、有効なコロナ予防を行えば、これまでと大きく変わらない生活様式をもって生きていけるのである。


「新しい生活様式」という点を強調しすぎてしまうと、あたかもこれまでの習慣を完全に変えてしまうという印象を与えかねない。このような印象を与えてしまうと、「コロナ予防」という観点よりも「新しい価値観・習慣」という点が意識されすぎてしまい、本来より重要である足元のコロナ予防に意識を向けられなくなってしまうのである。


よって、政府が「新しい生活様式」という言葉を使ったことは政策上の失敗だといってもよい。印鑑や名刺の使い方を変えようという点に注目がいってしまい、本来大切な手洗い、マスク、飛沫予防、感染者隔離、という点から焦点がずれてしまうのである。


有効なコロナ予防のためのガイドラインを提示するはずが、より重要な予防法よりも効果の比較的低い生活様式の抜本的変容があまりにも注目されすぎてしまった。このことをもって、「新しい生活様式」という紹介の仕方は大きな過ちだったといえるだろう。


以上。


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