5月の10万円再給付もあり得る件。国の赤字は大丈夫なのか。
はじめに
緊急事態宣言が5月31日まで延長がほぼ決まりました。そこで、10万円の再給付はあるのか!?ということを考えていきます。
自民党の若手議員の提案
5月1日、自民党の若手議員が100兆円の財政出動によって、あと2回10万円給付を行うべき、という方針を示しました。以下は、livedoorニュースの記事です。
自民党の若手議員らは新型コロナウイルスに対する第二次補正予算案の編成を急ぐべきだとし、100兆円の財政出動を求める提言をまとめました。減収した事業者に対する「持続化給付金」に50兆円、一律10万円の給付をあと2回実施するために26兆円などとなっています。財源はすべて国債を発行して賄うとしています。今後、政府に提出する方針です。
これを安倍政権が素直に受け入れたとするならば、5月分6月分の計二回、国民一人に対して10万円が一律給付されることになります。追加で26兆円の給付ということで、大胆な政策になりますね。
ところで、そもそも10万円給付の目的は何だったでしょうか。
10万円給付の目的は何か
10万円給付の目的は、端的には「経済対策」だといえます。コロナ対策ではなく、経済対策なのです。休業や失業によって、家賃や食費が払えない個人を救済するという意味合いと同時に冷え込んだ需要の喚起という意味合いがあります。
ちなみに、所得が減少した人への30万円の給付から、所得制限なしでの一律10万円給付、ということが決まった時、自民党の二階氏は、所得制限ありの10万円給付を政府に提言していました。これが、所得制限なく一律に10万円を給付するという方針に変わったのは、上の記事を読む限り、できるだけはやく給付するため、というのが理由だったのだと考えられます。
すなわち、仕事を失いお金が工面できない人のために、すぐに10万円で救済する、ということが目的だと考えられます。
追加の給付はあるか
緊急事態宣言が延長されたということは、4月同様に5月も所得が減少した人が同程度もしくはそれ以上に増えるのではないかと考えられます。よって、4月分を給付したという既成事実をもとにすれば、5月分も同様に一律10万円給付という形になるのではないか、と思います。
延長するのに給付はないのか、という国民感情にも応えなければなりませんし、4月に10万円で何とかしのいだ人は、5月もどうように金欠なことが容易に想像できます。
しかし、5月時点でどの程度コロナが収まるのか、というのも大きな注意点です。5月の中旬ごろには、感染者数の増加が抑えられていたならば、所得制限付きでの給付という形も大いに考えられると思います。いずれにせよ、前回の給付の反省点を踏まえると、スピード感をもって決定する、というのが安倍政権の支持率を維持するためには必要になると思います。僕は、近いうちに一律10万円給付というのを明言するのではないかと考えています。
毎月何度も10万円を給付して、国の赤字は大丈夫なのか
正直、経済の仕組みについては、それほど詳しいわけではありませんが、注目に値する経済理論としてMMTという理論があります。これは、通貨発行権があり自国通貨建ての国債を発行している国が財政破綻をすることはない、という理論です。
簡単に言うと、政府が国債を発行し、日銀が通貨を印刷して国債を買い上げる、というプロセスが自国で完結しているため、いくら国債を発行しても財政破綻をすることはない、という理論です。財政破綻したギリシャなどは、国債をユーロで発行しており、中央銀行がユーロを刷ることができないため、財政破綻に陥ったのです。(↑引用元リンク)
実際、財務省も「自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」とした意見書を出しています(↑引用元リンク)。
ただ、もちろん問題はあります。日銀が銀行などの金融機関を通じて直接的に国債を買い取ると通貨量が激増してハイパーインフレを引き起こすということです。ハイパーインフレを起こさない限りでの国債発行に留めるべきだろうということです。26兆円以上の国債発行が、どの程度インフレに寄与するかというのは、予想ができませんが、日本のGDPが約500兆円だということを考えると大きな影響を与えることもあるかもしれません。ただし、インフレ(物価上昇)になるには、消費者の購買意欲が上がらなければ、モノの値段はあがらない、ということから、月十万円の一律給付で、どの程度消費者の購買意欲が上がるかということがカギになると思います。もしかしたら、生活必需品などの値上がりを起こす可能性もあるのかなとは思います。しかし、やはりコロナの影響で消費者の購買意欲というのはかなり抑制されていると思います。一律10万円給付ががそれほど大きくインフレに寄与する(2%以上のインフレ率になる)とは考えにくいのではないかと思います。
(↓はMMTとは異なり、国債発行が増大しすぎることで財政破綻や預金封鎖が起こる可能性について言及しているブログ記事です。私の書いたものではないですが、参考にしましたので、リンクを張っておきます。)
どのような理由でMMTは成り立たないかというと、現行の日銀法においては、日銀が直接政府から国債を買い取ることを禁止しているため銀行などの金融機関を通じて国債を買い入れているのです。よって、それらの金融機関が国債を買わなくなったとき、さらには、海外の金融機関の日本国債の買い入れ額が大幅に増えたとき、危機的状況に陥るのではないかということです。この点については、私自身はどうなるかはわからないというのが正直なところです。実際、日本国債の信用が低下して、日本国内の金融機関が国債を買わないということになれば、日銀が直接的に国債を買い取ることができないため、MMTの論理は破綻してしまいます。
また、景気は後退しているのにインフレになるリセッションが起こったり、日本経済の成長がコロナや経済成長戦略の失敗により何年も停滞してしまうようなことがあれば、赤字国債というのが重しになるとは思います。ただし、インフレにならない程度での国債発行と国債の買い取りは、MMTに則して考えると、それほど大きな問題にはならないとも考えられます。難しいですね。
まとめ
まとめると、5月の10万円一律給付は、あり得るのではないか、というのが私の見解です。しかし、5月中旬にどれほどコロナが落ち着くかというのが、目安になるかなと思いますが、コロナの拡大が落ち着いていたら、所得制限付きの給付ということになるのではないかとも考えられます。政府も財政をこれ以上悪化させられないということも考えているでしょうから。
いづれにせよ、早いうち、遅くとも5月の中旬ごろには、給付をするという方針を決めるのではないかと思います。特に、4月に一律給付をするという既成事実や、緊急事態宣言を5月末まで延長することを決めたこと、日銀が国債買い取りの上限を撤廃したことなどから、一律10万円給付あるいは所得制限付きの10万円以上の給付というのがあるのではないか、と予想します。
いかがでしたでしょうか。皆さんは、国債発行により所得給付を行うと思いますか?また、それによって将来的な負担が取り返しのつかないものになるのか、経済が健全化し、将来的な負担も問題ではなくなるのでしょうか。今後の政府・日銀の意向や経済状況に注目しながら、日本の財政政策・金融政策を見ていく必要があるかと思います。