見出し画像

主役が誰か、目的は何かを見失わないことが重要だと認識した:Fストーリー(橘 博人)1

空は、筋雲が流れる様に芸術的な姿で目に飛び込んでくる。今日も天気は良さそうだ。晴れた朝は、何となく気持ちも上がる様な気がする。
見上げた空には、白く薄い三日月が浮かんでいた。

今日も、普段と変わらない朝だ。
彼は、佐倉 徹。企業向けのコンサルティングやアドバイザーの仕事をしながらビジネス向けのコミュニティの主催やイベントの企画運営を行っている。仕事の関係で、経営者や起業家と会うことも多い。今日も午前中からコミュニティ仲間の相談案件が入っている。

出社して、何時ものルーティンの様に、SNSのチェックやメールチェックを行うが、最近益々増えてきたスパムメールの削除で結構な時間が掛かる。。。困ったもんだ!
パソコンのスケジュールを確認する。今日は、相談ごとでの来社3名になっていた。全てがコミュニティのメンバーだった。

佐倉は、コミュニティの主催であるが、参加メンバーからの相談ごとも多く、できるだけ相談を聞きいてアドバイスをしながらメンバーのビジネスを応援している。

今日の午前中は、コンサル業の若い経営者だった。IT関連の業務関連からITコンサルティングを中心の企業の業務コンサルティングを行っている橘 博人だ。

橘は、コミュニティに参加して1年ほどだが、積極的にコミュニティーのメンバーとコミュニケーションをとっている様に見受けられる。特に経営者へのヒアリングを中心に行いながら問題の洗い出しを行って市場分析を行っている様だ。

そんな中で佐倉へ相談があるという連絡が入り、今日の相談ということになった。

佐倉も元々システムエンジニアを長く経験しており、業界には詳しいこともあり、橘も相談しやすかったのではないだろうか?

午前11時。佐倉が次のイベントの企画準備をしていると、橘が来社してきた。会議室を予約していたので、そちらに向かうと、橘が立って待っていてくれた。

佐倉:橘さん、おはようございます。どうぞお座りください。

橘 :佐倉さん、今日は、お忙しいのに時間を作って頂いてありがとうございます。

佐倉:いえいえ。お仕事の方は如何ですか?

橘 :先日、佐倉さんからご紹介頂いた、美容室オーナーの中村様にお会いしてきました。色々と現在の業務のお話しから幾つか提案をさせて頂いたんです。
それで、その件もあって佐倉さんにご意見を頂こうと思ってるんです。

橘 博人 38歳。元システムエンジニアで、現在はITコンサルティングや業務改善のコンサルティングを中心に事業を進めている。数多くのシステム化やITを使っての業務改善の実績を持っており若くて優秀なエンジニアであり、意欲的に経営展開を進める経営者だ。

橘は、コミュニティで主催者の佐倉から紹介された、5店舗展開している美容室のオーナーの中村 美代子を紹介された。ちょうど、中村から業務の新しい進め方について佐倉に相談していたらしい。

中村は、年齢62歳で業界も長く地元に根付いた店舗展開を行い顧客への信頼構築から地元でも評判のお店を展開し、お店も繁盛している。店長や幹部育成にも熱心で、社員からの信頼も厚くと尊敬されている女性社長である。

佐倉:そうでしたか。中村さんに現在の店舗の業務で5店舗の顧客連携や顧客満足度向上について、従来のやり方を効率的にかつ新しいアイデアを含めてのお話しだったので、橘さんが適任ではないかと思ってご紹介したんです。私も概略は中村さんから聞いていたのですが。。。

橘 :はい、お店にも伺って共同代表で管理責任者のご主人様にもお会いして色々と現状をお聞きしました。素晴らしいお店で、特に従業員に対する思いというか、凄く大切にされていることが分かりました。

佐倉:そうでしょう。素敵な方々ですよね。私もご主人とは以前お会いしたことがあります。しっかりした経営理念をお持ちで、社員育成にも凄く熱心な方ですよね。

橘 :管理部分についても、しっかりした業務フローが出来ていました。

佐倉:それで、今日のご相談とは。。。

橘 :はい、顧客管理について店舗ごとの管理情報をクラウドにて総合管理を行うシステムのご提案とCRMにおけるCPM適用の顧客連携のご提案をさせて頂いたんです。

佐倉:なるほど、CPMの顧客ポートフォーリオの視点からのお店の情報提供は、素晴らしい提案ですね。

*CPM(Customer Portfolio Management):顧客の状態や状況を分析し、グループ分けしながらそれぞれのグループに適応したコミュニケーションをとる手法で、自社のファン層を拡大し優良顧客へ導く手法。やずやグループ株式会社未来館の代表取締役 西野博道氏によって提唱。

佐倉:私も西野さんのCPM理論と最初に出会った時は、面白いコンセプトでわくわくしました。通販だけにとどまらず実店舗経営やあらゆる業種に広がっていますよね。

橘 :はい。私も同感で、色々な業種に適用できると考えてクライアントへの提案に使わせて頂いているんです。

佐倉:それで、ご提案はどうだったんですか?

橘 :顧客の管理やシステムによる情報共有化については、とても評価頂きました。特に顧客のカルテの共有や来店時の要望が共有されることで、他店舗との共有でどの店舗に行ってもお客様が同じサービスを受けられる点は、評価頂きました。

しかし、1点ご指摘を受けて、その内容をご相談したかったんです。

佐倉:ほ~~~。そうですか?その1点とは?

橘 :顧客へのDMにて、自動化したステップメールとしてデジタルとアナログの自動出力をご提案しました。アナログは、ハガキや文書印刷からの送付になります。
その部分で、中村さんのご主人からストップがかかりました。

佐倉:どういうことでしょう?

橘 :お店ではお客様の担当ごとにご挨拶を出すことになっていて、それが店舗内で評価する様にされている様です。その内容も担当者がお客様へ個別に伝えるメッセージとしてイラストや手書きで行っている様で、これが担当者の育成と顧客へのメッセージになるとのことでした。また、担当者の方のメッセージを店舗内で皆で共有して評価し表彰されたりするそうです。それで、自動化されると、その部分が欠落してしまいがちで、その部分は従来を継続したいとのことでした。

佐倉:なるほど。。。中村さんらしい戦略ですね。CPMでも手書きの重要性も定義されていますもんね。それにスタッフさんと顧客の関係作りを思いのこもったメッセージと言うのは、いかにも中村さんらしいお考えです。

橘 :はい。私も大変勉強になるお話を関連してお聞かせ頂きました。それで、その部分を佐倉さんならどうされるか?ご意見をお聞きしたかったんです。

佐倉:まずは、デジタル化する部分とアナログ化する部分の意味を考えてそれぞれの強みを活かすことですよね。今回のお話しでは、アナログ部分での「人の感情」のところを大事にすべきですので、それをデジタルが支えるシステムである必要がある。デジタルは、保存や検索にてその部分では強みを出せるということでしょうね。

橘 :デジタル、アナログ双方の強みを活かす。。。なるほど。。。

佐倉:今までの手書き部分を画像化して保存し、それに関連したお気持ちやお客様の反応などをカルテ化してデータベース化すると検索部分や過去のノウハウとして蓄積できますよね。また、表彰履歴もデータベース化していくと実績評価の部分にも役に立つし、新しいスタッフさんへの教育資源としても使える様になるのではないでしょうか?

橘 :それは凄いですね。感情のデータベース化に繋がり教育やノウハウの蓄積に繋がるアナログ支援システムですね。面白いです。技術的には問題ないですし、もっとヒアリングしていくと新たな教育システムの応用に繋がるかもしれません。

橘は、以前から最近の傾向について疑問を持っていた。DX(Digital Transformation)の言葉がはやり言葉の様になってきているが、以前からIT業界で取り組んでいたことであり、AIやクラウドといった技術が一般化したりZOOMなどのリモート環境が常識化したことで理解し易い環境になったとはいえ、顧客の要望や課題解決は以前と何も変わらない。

橘 :少し話は変わりますが、佐倉さんは、過去の経験で色々な業種へのITの開発やコンサルをされてきたと思いますが、現在のDXについてどの様に感じてられますか?

佐倉:そうですね。ネットを開けばDX,TVを見ればDXって感じですよね。
問題は、Transformationということですよね。変化する革新するということなんですよね。単純に今までのことをデジタルへシフトすることで効率化を図れることもありますが、それがDXとは思いません。業務分析を行い、本来のアウトプットである必要なことを引き出すために変革する必要がある技術だと思います。

AIやクラウド技術は従来からありましたが、最近注目されることで一般化したのでメーカーや関連業者がビジネスチャンスのうたい文句にしている感じですね。もちろんマーケット戦略上間違いではないですが、IT技術者がそのあたりをどう捉えるかは、重要ですよね。

橘 :同感です。まさに私もその様に思っております。そのあたりが今回の中村様の件で、強く感じました。色々とビジネスツールの話も中村様に営業に来られている様で、そのあたりを聞かれたので、私も佐倉さんの話されたことと同じことをお話ししました。

パッケージ化されたシステムの展開によって、導入しても使わない機能も多く、最終的に使う機能を限定されている現状もある。一時期は、使う機能だけを選択したシステム(BTO:Build To Order)
も存在した。しかしながら顧客が機能の理解をすることは難しくIT技術の理解を助ける存在が必要なことがおざなりになっている現状もある。

佐倉:私が危惧するのは、顧客が置き去りにされる様なシステムになることです。顧客の協力者でありツールであるべきものが、主役が変わってしまってシステム化することが目的になってはダメだと思っています。メーカも商売なので売込みするのは当然ですが、顧客が主役であり、そのために何がサービスとして提供できるかが必要だと思います。

橘 :私もITコンサルの立場として、常に意識していることです。佐倉さんのお話しを聞いて、再認識しました。同時にそこに新たな使命感も感じます。個別に顧客側に立ってアドバイスすることで新たな技術革新へ繋がると感じました。

橘は、再度中村を訪問して店舗と顧客の関係についての中村の意見をヒアリングしてシステムの再提案を行った。顧客関係の構築と継続の必要性をシステムがバックアップしてくれることやノウハウの蓄積からスタッフへの教育への展開に大変満足された様だった。
 
橘は、今回の件で今後のビジネス展開としての可能性とそこに仲間での対応の必要性を感じていた。

世の中が「インボイス制度」「電子帳簿保存法」など法規制も電子化(デジタル化)へ動いてきている仲で困惑する事業者は多く存在する。特に、従来のやり方に意義を感じて変化することへのリスクをもつ事業者も多いだろう。
コンサルティング業務も一人の力でなくで色々な知識の総合力で対応することが重要であると考えている。

主役が誰か、目的は何かを見失わないことが重要だと認識した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?