鹿島槍天狗尾根遭難を総括する(遭難)(原文)㉔
学習院大学山岳部 昭和34年卒 右川清夫
V. 登山での遭難に於ける責任について
以上、鹿島槍天狗の鼻での雪崩遭難についての原因を明らかにしてきたが、その目的は、同様の遭難の再発を防ぐことにあった。 ここでは、原因が明らかになった時点で、その責任がどうなるのかを考えてみたい。 先ず、一般の遭難についてである。
第一に確認すべきは、遭難が起これば、それがいかなる原因によるものであれ、そのパーティーのリーダーは、立場から来る責任を負う。 これは、登山の世界では誰もが認めてきた原則である。 形式的責任と言ってよいかと思う。 リーダーが形式的責任を負うのは、いわば、自動的である。 リーダーの行動と全く無関係にメンバー個人だけが関わった遭難であっても、リーダーの判断ミスによる誤った決定、あるいはメンバー個人の技術の未熟、体力の不足などで遭難が起これば、それらの理由となった状況についての責任が問われることになる。 そこでの責任を取るのは、当然、遭難を引き起こしたそれらの状況(理由)を作った者になる。 が、遭難についての、実質的責任である。
第二にリーダーの判断ミスによる誤った決定、夫々メンバー個人の判断、技術の未熟等が遭難を引き起こした場合は、それらの理由となる行動についての責任が問われることになる。
その責任は,リーダーの決定が誤っていた場合は当然リーダーが負うが、それ以外の場合では、遭難の原因となった行動に関わる個人が責任を取ることになる。 しかし、形式的責任はリーダーが取るので、個人は、リーダーとともにこの実質的責任をとることになるわけだ。
要約すると、いかなる遭難でもそれが起これば、リーダーは形式的責任を取り、具体的な遭難の原因となった行動については、リーダーとその原因と作った個人がともに責任を負うということになる。
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