見出し画像

老後シングルライフのために 今できること

今は問題なく暮らしている人でも、年を取ってから急な病気や介護に直面した時、生活が立ち行かなくなるケースがあります。
普段あまり行き来がなくても、いざという時はお身内(お子さんや甥御さん姪御さんなど)が助けてくれるのであれば問題ないでしょう。
でも、助けてくれる人が思い浮かばない人はどうすれば良いのでしょう。

当事務所のお客さまのケースをご紹介しながら、今からできる対策をお話します。

甥姪はいるけれど、期待できないとわかった

今から3年前に、私の登壇した講座をきっかけにご相談に来られたAさん(70代前半)。
お子さんがいないことから、お若い頃から甥や姪をかわいがり、金銭的援助も惜しみませんでした。
しかし、「将来の介護を甥や姪にしてもらうつもりはないけれど、年老いた時に気にかけてもらえると思っていました。でも、それは期待できないとわかりました」そう語るAさん。
理由を尋ねると、甥御さん達に将来の希望を伝えたところ、「仕事や家庭で忙しいし、親のことも考えなくてはいけない。申し訳ないけれど、おばさんは自分のことは自分で考えてもらえないか」と言われたそうです。

Aさんは、将来本格的な介護が必要になったら老人ホームに入居することを決めていますが、それまではできる限り自宅で暮らしたいと思っています。
そしてそれは、甥御さん達のフォローがあれば叶うと思っていました。
例えば、「時折様子を見に来てほしい、体調不良の時は訪ねてきて病院に連れて行ってほしい」「もし入院となったら手続きをしてほしい」などです。

でも甥御さん達にそのつもりがないことを知ったAさんは相当なショックを受け、「身内に自分の老後を頼むのはやめよう」と思い直したそうです。

「老後のために頑張って働いてきました。自分のお金は自分のために使って豊かな老後にしたい。それを叶えられるように今から準備をしたいので、力を貸してください」
当時、そう話すAさんに強い意志を感じたのを覚えています。

Aさんの取った行動とは

高齢者が困難に直面しやすい場面は以下のようなものがあります。
①体力の衰えで出来ないことが増える
買い物、掃除、役所の手続き、金銭管理など
②急な病気、ケガ
入院手続き、治療費の支払い、退院後の生活の整備、医師からの説明など
③介護関係の手続き
老人ホーム、在宅介護サービスの選定など

高齢期には、認知症でなくても理解力や気力が低下する人が多いことから、①~③は誰かに頼ることになりがちです。
ましてや病気やケガをしている時は、冷静な判断力を保つことは難しいでしょう。

行動1.日常生活のフォローへの備え

Aさんは、①の家事については友人に勧めてもらった家事や介護の自費サービス会社と契約をしました。
介護保険サービスではないので、融通が利くのが決め手だったそうです。
現在は週1回だけ掃除を頼んでいます。
「良いヘルパーさんと出会ったことで、今より体力が落ちても自宅で暮らせるイメージがわいた」と話しています。

ご自宅での暮らしを支えてくれる自費サービス

行動2.介護医療が必要な時の備え

②③については、当事務所に任せてくださっています。(シニアライフサポートSonae
月1回のペースで、私がAさんの自宅を訪問し、面談を行い、体調やお気持ちを聞き取り、必要時には様々な助言をさせていただいています。

万が一の急病時に備えて、緊急連絡先は当事務所にしています。
入院時や退院後のフォローは当事務所で行いますが、お身内の判断が必要な時は、甥御さんのお一人に対応していただくようお願いしています。
甥御さんは、「叔母の介護や世話を頼まれるのは荷が重いなと感じていましたが、部分的なことなら私がやります」とおっしゃっています。

行動3.金銭管理が必要な時の備え

今はご自分で金銭管理をされているAさん。
しかし、将来銀行へ行けなくなった時や支払い手続きができなくなった時に備えたいとのことでしたので、金銭管理サービスを行っている、信頼できる司法書士事務所をご紹介しました。
将来、必要な時にすぐにお願いできるよう、利用している金融機関や日常の収支をあらかじめ伝えています。

腹を割って話す大切さ

Aさんは甥御さん達に不信感を持ち、「絶対に頼らない」とまで思ってしまっていました。
しかし、上記のように甥御さん達にはそれぞれの事情や思いがあります。
「おばさんの老後の何もかも頼まれるのはしんどい」
こう考えるのも、当然だと思います。
でも、しっかり話し合う場を設けた結果、部分的には助けてくれることがわかりました。

まずはご自分が困難に直面した時どうしたいのかを整理し、助けてほしいことを相手に伝えることが大切です。
相手の気持ちを聞いたうえで、その人にお願いできることは頼んでおきましょう。
その人に頼めないとわかれば、他に頼める人やサービスを探します。


これはお子さんの場合でも同じです。
「子どもに老後の迷惑はかけたくない」
そうおっしゃるお客さまはとても多いのですが、具体的な行動(自分の希望の整理、お子さんへの依頼など)に移している人はほんのわずかです。
お願いしたい相手が誰であっても、しっかりとコミュニケーションを取り、具体的に何をお願いしたいのかを伝えておくことは必要です。

リスク回避の大切さ

一般的に、高齢になればなるほど人との関りが減ります。
友人は先に亡くなり、親せきの集まりは減り、ご近所さんとのお付き合いが減ることは、珍しくないでしょう。

人とのつながりが少なくなってしまった高齢者が、金銭をだまし取られる悲しい事件は後を絶ちませんが、有効な対策があります。
それはフォローをお願いする人を複数持つということです。できれば多い方がいいです。
誰か一人に頼ってしまうと、もしその相手に騙された場合、他の人に気付いてもらうことは難しいでしょう。

Aさんの場合、もしも自費ヘルパーさんが悪事を働いたとしても(ないと思いますが)、Aさんのご自宅には私や甥御さんの出入りがあるので、発覚しやすいでしょう。逆もしかり。
Aさんの老後には、甥姪、自費サービス事業所、金銭管理予定の司法書士事務所、当事務所が関わります。
お互いに良い意味での見張りができます。誰か一人(ひとつのサービス)に100%頼るのではなく、複数の目が見守ってくれる環境を整えることが、リスクを回避する策となるでしょう。

高齢期のリスクに備える

将来への不安に振り回されなくなった

先日、Aさんから「振り返れば、早いうちに甥姪の気持ちを聞いておいて良かったと思います。聞いた時は腹が立ちましたが、変に期待することがなくなり、自分で準備をすればいいんだと気持ちを切り替えられました。あの時(3年前)、思い切って相談して良かった。おかげさまで年を取ってどういう状況になっても助けてもらえる手はずが整えられ、将来への不安に振り回されなくなりました」とメッセージをいただきました。

Aさんに「老後に備えることで一番必要なことは何ですか?」と尋ねたところ、
「信頼できる人を見つけておくこと」と教えてくださいました。
サービスであれ、お身内であれ、信頼できると思える人とのつながりが一番大切だそうです。
「専門家にお願いすることは保険に入るのと同じだと思います。費用はかかりますが、それによって得られる安心感に満足しています。病気になってから保険に入ることができないのと同様に、衰えてから専門家を探すのは難しいので、これで良かったと思います」ともおっしゃっていました。

私たち専門家にとって、Aさんの取った老後対策は特別なことではありませんが、一般的にはまだまだ知られていないことです。

「病気になったらどうしよう」
「老後が怖い」と不安になるのは皆同じです。
でも、そこから行動に移すのかどうかが、穏やかな老後かそうでないかの分かれ目なのかもしれません。

行動できるうちに進みましょう

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。

はる社会福祉士事務所
代表 佐々木 さやか


いいなと思ったら応援しよう!