我が家のイギリス旅行記#11 ヨーク競馬場
2024年の夏休み、家族で出かけたイギリス旅行の思い出をここに記す。
今回は「ヨーク競馬場編」。
ヨーク競馬場に行く
イギリスに行くならヨークに行こう!
と、最初から考えていたわけではない。
むしろ、ヨーク競馬場があったからヨークに行きたくなった、と言ったほうが正しいかもしれない。
結果的にヨーク観光はとても良かったのだけれど。
「イギリスに行くなら本場の競馬を観てみたい」ということは当初から考えていた。
しかし、もともとこのイギリス旅行は9月に計画されておりその時点ではドンカスターに行くはずだった(9/14 セントレジャーステークス)。
その後日程が8月下旬に落ち着き、8月21日から4日間「イボア・フェスティバルEbor Festival」が開催されるヨーク競馬場に白羽の矢が立った。
ヨークはロンドンの北方約300kmに位置している。
AZUMAという特急列車で所要約2時間だから、東京から新幹線こだまで豊橋まで行くくらいの感覚だ。
なのに、私が買ったガイドブック(るるぶ、地球の歩き方)にはロンドンから日帰りで行ける周辺の市町としてオックスフォードとかリヴァプールとかは紹介されているが、ヨークが出てこない。
なので私は家族に「(競馬を観るために)ヨークまで一緒についてきてくれ」と気軽には言いづらかった。
かといって「ひとりでヨークまで行く、ロンドンでよろしくやっていてくれ」という訳にもいかない。
しかしながら、ヨークのことをよーく調べてみたら、どうやらこの町は一級の観光地であるようだ。
城壁に囲まれた中世の古い町並み。
そして、英国内最大級の大聖堂「ヨークミンスター」。
新幹線こだま号も展示されているイギリス国立鉄道博物館もある。
みどころ満載だ。
私は安心して、4日間のイギリス滞在中の1日をヨーク観光に充てる計画をたてた。
ヨーク競馬「イボア・フェスティバル」では連日G1レースが開催されていた。
ほんとうは初日のG1インターナショナルステークスを観たかった。
日本からもドゥレッツァ号が参戦していた。
さもなくば翌日のヨークシャーオークス。
ここで好走した牝馬が凱旋門賞でも軽ハンデを利して好走する傾向があり、こちらも注目レースだ。
どちらかを観たかったけれど諸事情により叶わず、芝直線1,000mのG1ナンソープステークスが開催される第3日がヨーク訪問日となった。
チケット予約の話
レーススケジュールも含め、ヨーク競馬場の詳細はすべて公式Webサイトに記されていた。
入場チケットも予約できるようだった。
最も標準的なカテゴリーはグランドスタンド£44(8月12日まで早期割引で£42)。
最上級はカウンティスタンドで、価格もたいしたものであり、かつドレスコードも明示されていた( Dress Code: Jacket, Collared Shirt & Tie for gentlemen )。
グランドスタンドは、ドレスコードについてはとくに記述がない。
最低価格帯「クロックタワー エンクロージャー」£15は内馬場で、当日券のみの販売。
私はグランドスタンドを早期割引£42で購入することにした。
駅からのシャトルバス(往復で£4)や場内での食事等のオプションはすべて不要とし、決済画面へ。
しかし、謎のエラーメッセージが出て決済を完了することができない。
家族のデビットカードを借りて試みたが結果は同じ。
私は公式Webサイトの問合せ画面から現地に問合せてみた。
返答はすぐに返ってきた。
身も蓋もない内容だが、まあそういうことなら仕方ない。
早期割引の事前予約はあきらめたが、そもそも8,000円以上もするのだから今さら£2の差など大したことではない。
ヨーク競馬場への道
2024年8月23日、私は家族とともにヨークにやってきた。
ヨークミンスターを拝観してBetty'sで食事のあとフリータイム。
私はひとり、ヨーク競馬場に向かった。
GoogleMapで確認すると、競馬場まで路線バスで行けるとの表示。
それに従い、旧市街の南側、ミクルゲイト門外のNunnery Lane Car Parkというバス停に向かった。
13:22、バス停に到着。
バスの通過予定時刻は13:26。
絶妙の時間管理である。
じつは、路線バスで競馬場に行くことには若干の疑念があった。
事前リサーチで、ヨーク市内を周遊する「York Hop-On Hop-Off Bus」というバスの存在を把握していた。
このバスは15分間隔で運行しヨークの主要観光スポットを順番にまわる。
土地勘のない場所で時間を有効に使うには最適なアクセスだった。
そしてなんと、このバスのルートはヨーク競馬場もカバーしていた。
なんというスグレモノだ・・・と思っていたのだけれど、何かの拍子にチャットで問合せをしてみたところ、こんな返答が来たのだ。
同じ理屈で、他の路線バスも競馬場に近寄れなくなるかもしれない。
ヨーク競馬場の公式Webサイトには「ヨーク駅から直行シャトルバス運行(13時まで)」とあるだけ。
つまり「13時までならバスで競馬場に行けるけどそれ以降(それ以外)は公共交通機関ではアクセスできない」というようにも読める。
しかるに、GoogleMapは路線バスで競馬場まで行ける、との案内。
私は半信半疑ながらバス停でバスを待った。
GoogleMapの情報は刻々更新され、バス通過予定時刻が迫る。
「2分後」、「1分後」、そしてついに「いま到着」との表示。
・・・しかしバスは来なかった。
1分待ち、2分待ち、3分たってもバスは来なかった。
もう私はあきらめた。
ふとGoogleMapをみると、目的のバスは「出発済」になっていた。
なんだ、出発していたんか。
見えなかったわ。。
しかし、前述の疑念ももともとあったのでダメージは少ない。
私はミクルゲイト門の前まで戻り、南に伸びる道をてくてくと歩き出した。
競馬場までの道はびっくりするほどの大渋滞、ということはまったくなかった。
競馬場に向かう歩行者もほとんど見かけない昼下がりの住宅街のバス通りを10分ほど歩いた。
左手に、高い並木が続く長い直線道路が現れた。
ナベスマイア・ロードだ。
通りの左はフットボール場かなにかで、そして右側にはだだっぴろい草原が遠くのほうまで広がっていた。
そこがヨーク競馬場だった。
歩いても歩いてもなかなか進まない長い道を、おしゃれに着飾った老夫婦を追い抜き、長身で歩くのがやたら速いおっさんを追いかけて歩いていく。
右手側の草原の遠くのほうに、何やらうごめいているのが見えた。
馬だった。
13:50、第1レースのスタート時刻である。
なにかのはずみで、馬たちが一斉に駆け出した。
コースなのかどうかもわからないようなだだっ広い草原を、さらに遠くに向かって走っていく。
なかなか雄大な景色だ。
ようやく競馬場の建物が近づいてきた。
ダフ屋らしい兄ちゃんひとりふたりに声を掛けられたが無視して先に進む。
言葉巧みにチケットを買わせようとしているのだろうけれど、どうせ言葉もわからない。
Ebor Festival 2024 DAY3
13:55、ヨーク競馬場。
バスは来なかったけれど当初予定どおりに到着した。
すでに多くのファンは場内に吸い込まれていて、建物入口前は閑散としている。
入場券売り場を探したがどこにも見当たらない。
入口で代金を支払う仕組みだった。
クレジットカードをピピっとやって£44を支払うとレシートをくれた。
それが入場券だった。
なんだか味気ない。
場内は着飾った感じの人たちであふれていた。
プログラム£4を買い、人ごみをかきわけるように進む。
目の前のスタンドの建物を突っ切ると視界が開け正面にレースコースが広がる
・・かと思ったが、そうはならなかった。
スタンドとコースの間のふつうなら立ち見客がひしめくはずのスペースに、賭け屋(個人経営的ブックメーカー)がずらり並んでいる。
大井競馬場で予想屋がいるのと同じような佇まいだが、店を広げている場所がぜんぜん違う。
賭け屋はおっさんばかりでなくおばさんもいたし、ねえちゃん(いかにも姉ちゃんという感じの)もいた。
とはいえ、予想屋と賭け屋ではビジネスモデルは違えどあきらかに同じカテゴリに属するオーラを発していた。
Parade Ring
パドック(プログラムではParade Ringとなっていた)はスタンドの北側にあった。
馬が1頭いて、人だかりができている。
第1レースの勝ち馬のようだ。
パドックとウイナーズサークルが一体化しているのだ。
次のレースの出走馬たちはまだ出てきていない。
インタビューなど表彰式のセレモニーがひとしきり終わると、ようやく馬たちが入ってきた。
周回の内側に多くの人が溜まっていて、そこに騎手がやってきて談笑などしている。
全レースがG1レースのパドックのようだ。
馬は空間の外縁部を歩くのだが、反対側を歩いているときは人が邪魔になってまったく見えない。
そして2周回もしないうちに鐘がチリチリと鳴り、騎手が乗ってもうそのまま本馬場のほうに出て行ってしまった。
こちらのパドックには、馬を吟味し予想を構築する、という用途はあまりないようだ。
これから走る馬たちをお披露目し、騎手たちに励ましの声をかけるための場所という感じだった。
パドックの奥(北)側にはもうひとつパドック的なスペースがあり、恐らく次のレースに出る馬が観客のいない場所を歩きまわっていた。
さて、パドックの出入口はそのまま本馬場につながっている。
ただし本馬場の手前に柵があり、本馬場とスタンドとの境目が幅5mくらいの芝走路になっている。
パドックを出た馬は本馬場には行かず、その芝走路を一頭ずつ駆け出していく。
一本道を200mくらい走り、正面スタンドの前くらいまで行ったところで本馬場に合流する。
この「返し馬コース」が、この競馬場での馬を吟味する場所なのかもしれない。
パドックのスタンド最後列の高いところからだと、返し馬をじっくり眺めることができそうだった。
馬券の買い方
ただし、そこまで眺めているともう予想をしている時間がない。
返し馬をパドック裏で見送ったあと、スタンド正面の賭け屋の前まで戻りながらをプログラムを眺めて予想を立てる。
あてずっぽうに賭け屋のひとつに声をかけ馬券を購入。
オッズボードの前に立つおっさんに「ナンバー3、£10!」と伝えると、その後ろにいる人が機械を何やら操作する。
おっさんの手元の機械にレシートが出力され、それを渡される。
それが馬券なのであった。
単勝、複勝、馬連、投票方式もいろいろあるのだろうけれど、買い方がわからない。
わからなければ聞けば良いのだが英語でどう伝えていいかわからない。
仕方ないので今回はオール単勝勝負。
的中馬券を払い戻すときの流れについてもわからない。
しかし、それは当たってから考えることにした。
(けっきょく最後までわからずじまいだった)
馬券を無事購入してようやくひと息つき、周囲を見渡す余裕ができた。
とにかく華やかな雰囲気だ。
おしゃれに着飾った女性、スーツでビシッと決めてる男性がたくさんいる。
たくさんいる、だと語弊がある気がする。
着飾っていない人も少なくはない、というのがニュアンスとして正しいかもしれない。
結婚披露パーティーに出かけた、その会場がたまたま競馬場だった、的な。
むしろ競馬場に出かけるからこそ着飾っていたのだろうか。
こちらは申し訳程度のジャケット&シャツで、おかしくはないけれどまあ最低限、という感じだった。
第2レース
ロンスデールカップ(G2) 14:25発走、芝3,300m。
スタンド前をスタートしてだだっ広いヨーク競馬場を一周する。
同じ馬券でもより長時間楽しめるから、長距離レースは好きだ。
1着 Vauban William Buick騎手、3番人気。
馬券を購入した Gregory James Doyle騎手は2番人気、最後の直線では先頭グループにつけたが、力尽きて3着。
第3レース
2歳牝馬限定戦 15:00発走、芝直線5ハロン(1,000m)。
こういう条件はもうパドックで見定めるしかない。
と思っていたのに、パドックがあのような状況でどもならず。
1着 Cool Hoof Luke Oisin Murphy騎手、5番人気。
そういうときは騎手で選ぶ、という手もあったのをすっかり忘れていた。
アウェーで浮き足立っていたようだ。
オイシン・マーフィーが5番人気はおいしすぎたのに。
買ったのは、
Big Mojo Silvestre De Sousa騎手、5番人気 4着。
Camille Pissarro Ryan Moore騎手、1番人気 6着。
第4レース ナンソープステークス
本日のメインレース、ナンソープステークス(G1)
15:35発走、芝直線1,000m。
レーシングプログラムでは、Big Evsとオーストラリアから遠征してきているAsfooraの一騎討ちと煽っていた。
しかし我が本命は単勝9/1※、ゼッケンナンバー11番、Believingである。
Ryan Moore騎手に賭けた。
※単勝9/1だと、£10が当たれば£100になる。
配当金が£10×9/1と、購入禁£10が戻ってくるのとで、あわせて£100という意味だそうだ。
残り100mあたりから、Believingが猛烈な勢いで追い上げてきた。
目の前を通り過ぎていった、あの瞬間がこの日最高にアツかった!しかし、結果は2着。
しれっと押さえていたBig Evsは後方に沈んだ。
1着 Bradsell Hollie Doyle騎手、2番人気。
買ったのは
Believing Ryan Moore騎手、3番人気 2着。
Big Evs Tom Marquand騎手、3番人気 8着。
ナンソープステークスを勝ったのは女性ジョッキーだった。
Hollie Doyle騎手。
私が買ったBig Evs のTom Marquand騎手とはご夫婦だそうだ。
結果
2時間滞在し3レースを満喫したので、これで帰ることにする。
結果
3戦0勝(0-1-1-3)※すべて単勝馬券
▲£35(こわくて日本円換算できない)
まあ、馬券勝負をする目的でここまで来たわけではないし、じゅうぶん満足だ(負け惜しみ)。
帰りも歩く。
競馬場から旧市街までは、中山競馬場から西船橋駅あたりまで行くのとほぼ同じくらいの距離がある。
本来ならいわゆるオケラ街道的な道のりだが、トボトボと歩いて帰る人間は自分以外には見当たらなかった。
ちょっと負けたくらいで、あんなに着飾った人たちが歩くわけはないか。
そんなこんなで、ヨーク競馬場ひとり旅を楽しんできた。
でもやっぱり、競馬は勝って帰るのがいちばん楽しいなあ。
#12(プレミアリーグ編)につづく。