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沖縄文化に横恋慕(笑)

あけましておめでとうございます。不定期ですが、そっと投稿を続けていきます。よろしくお願いします。


はじめに

思い出してみる。
そう、あれは2009年のこと。それまで考えだにしなかった、最初の?パンデミックが日本を襲ったのだ。病名は「新型インフルエンザ」。その年の6月にハワイ旅行を計画予約していた私たち夫婦は、「海外旅行自粛せよ」との会社からのきつーいお達しにより、なくなく断念。JR 駅に併設された旅行会社にキャンセルを入れ、会社から許されていた国内旅行として、すぐに沖縄旅行を計画した。理由といったら、ただただ南の島に行きたかったことと、まして有給休暇を無駄にしたくなかったからだ。
初めての沖縄はというと、やむなしの「代替」旅行なんてどこへやら、めっちゃ楽しくて楽しくて、旅行から帰ってきてすぐに次回の沖縄行行きを計画した。2回目の沖縄旅は11月3日~8日の5泊6日。そうしてその時も、南の島の楽園沖縄が楽しくてたまらず、ウキウキ気分でガイドブックに紹介された観光名所をまわったのである。それが事の発端。

斎場御嶽

私たち夫婦は、5泊6日の5日目に、滞在中借りていたレンタカーで南部を回ることにした。カーナビにどう入力したのか今となっては覚えていないが「斎場御嶽」を何とかセットして、車上の人となる。
カーナビからは「○○メートル先、はえばる方面です」と音声指示をされる。
「はえばる?」
私は妻に道路案内板に書いてある南風原を指さしながら、
「いや違うよ、俺たちが向かうのは、なんぷうばら、ちゅうところだよ。おかしくねえか?」
妻も激しく同感して、
「うーん、このレンタカー古い車だから、ナビも古くて変な読み方するんね?」とか言い出す始末。
こんなバカな観光客の私たちだから、なんぷうばらを過ぎて何とか現地に着いても、沖縄の言葉がまだよく理解できていない。というか御嶽を含めた沖縄の事情がまるで理解できていない。
「斎場御嶽ってさいばおんがく、さいばごがくだよな、せーふぁーうたきって読むらしいけど、当て字にしちゃあだいぶ無理があるよね」
おいおい、と今となってはツッコミを入れたくなる。
観光気分の私たちは、受付でお金を払って奥へと進む。少し右に回り込んだ所に大きな岩があって、その前は少し開けていたような気がする。岩の正面から見て左手には別の大岩があって、正面の大きな岩に倒れ込むように寄り添ったまま起立している。そのふたつの大岩の狭間には三角形の空間があって、人が通れる空間を作っている。そこをくぐると左が広く開けていて海があり、遠くに島が見えた。祭壇のような石がおいてあったような記憶もあるけれど定かではない。

その場所は「さんぐうい」(三庫理)というらしく、中央の大きな岩の前には一人のご婦人がいらっしゃった。彼女は手を合わせ明らかに祈りをささげているよう。
その時私は本当に面食らってしまった。彼女のまえには特に石仏も祠もなければ仰々しい祭壇もなくロウソク台すらない。お供えものがあったのかどうかも覚えてはいない。小さな祭壇や香炉があったかもしれないが、私の記憶はといえば、ただ大岩の前は何にもない、だけである。そうして、ご婦人がそこで先ほどから手を合わせお祈りをしていたのである。私は驚愕してしまった。なぜなら私の頭の中では、この場所は琉球王朝時代にあった「琉球開闢神話」上の歴史的遺産であり、ここはお金を取って観光客に見せる観光名所のひとつだと理解していて、ルンルン気分そのものだったからである。
ご婦人の祈りが終わったようで、私は聞いた。
「まことに申し訳ないのですが」
「いったい何を祈っていらっしゃったんですか」
ご婦人はこちらを少し見て、少し微笑んで、でも特に何も答えてはくれなかった。あたりまえである。「ああ、内地から来た観光客なのね」と、受け流すのが自然なのだったから。
沖縄文化について一端の事情通のふりをしている今となっては、まことに失礼千万、不躾きわまる私の問いなのであるが、その時は正に斎場御嶽は沖縄神話上の歴史的遺宝でしかないと思って中に入ったので、誰に何を祈っているのか、頭の中が謎マーク?だらけになっていたのは、ちょっと許して欲しい。その時の私は、私が育ってきた内地の民衆信仰という尺で沖縄の信仰を見ていたので、お祈りをする場所は仰々しい建物があって、仏像が安置され、でなくても道ばたの道祖神のごとく仏や神をかたどった石仏があるものと勝手に思い込み、勘違いをしていたからだ。そんな、生まれたときから見慣れていた所謂「人工造形物」に手を合わせることが、民衆信仰だと思いこんでいた「尺度」で訪れた御嶽。特に飾られた物のない中で純粋に礼拝をされていたご婦人を見て、強いカルチャーショックを受けたと同時に、私はこの時以来、沖縄という島と人々、中でも我々の肌感覚に近い、純粋にして特異な輝きを放っている沖縄文化と信仰、それ自体に強い畏敬とリスペクトを持ったのである。まさに横恋慕!

見出し画像は、久高島の北端ハビャーン(カベール岬)で、謎の祈祷をする謎のおっさん(笑)。