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Webデザイナーはデザイナーなのか?
私が自己紹介のとき、自分の職業を「デザイナーです」と名乗るようになった(ある程度、自信を持って名乗れるようになった)のは、デザインの仕事をはじめてから、ずっと後だったように思います。
大学での専攻は理工系、学生時代は音楽に夢中、社会人一年目は営業職だったので、デザイナーを心底で目指したことは正直なかったし、インターネットがなければ、Webデザインを仕事にすることもなかったはずで、「デザイナーになりたい」といより、「Webデザインに自分がハマった」ことがきっかけで偶然職業になった、という感覚が近いです。
ただ、それが多少なりともコンプレックスでもあり、自分の中で、デザイナーというのは、もっと限られた人の限られた才能による、選ばれし職業のような畏怖のイメージもあったから。
デザイナーという職種にも様々なジャンルがあることは、多くの方が知っていると思います。
アパレルデザイナー、建築デザイナー、プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナー、インテリアデザイナーなどなど。
そんな考えから、デザイナーとは、上記のような歴史がある職業であり、専門教育を受けてやっと一人前になるものであり、Webデザイナーは簡単にデザイナーと名乗ってはいけない気がすると当時は思っていたのです。
ただ、何周も回って、たどりついた個人的な考えですが、職業の選択としてWebデザイナーをうっかり目指してみるのも「アリ」、自称デザイナーも「ぜんぜんアリ」だと思っています。
私の話に戻りますが、Webの黎明期に、運良くWebデザイナーとして転職、プライベートでWebサイトをつくっていただけで、いきなり会社から「デザイナー」の肩書入りの名刺をもらったのが、自分史上のデザイナーのはじまりです。
自分の親にもあまり報告というか、Webデザインの仕事に変わったという説明もしていなかったし(というか、説明不可能だと思った)、突然デザイナーになったよ、というのは怪しい話にしか聞こえないだろうし、自分自身も、本当に自分がデザイナーなのかについて、まったくもって、実感がありませんでした。
かつての私は、本当に自他ともに認めてもらえるような実績をつくってこそ、「デザイナー」と名乗るべきだろうと考えていましたし、ちょこっとHTMLでホームページを作成できる程度のことを、デザインと言っていいのだろうか、いや違うだろうと思っていました。
だから、血の滲むような努力をしないといけない、気軽にデザイナーなんて名乗ってはいけない、そんな甘い世界じゃないはずだとも考えていました。
その後、独立して、自分でWebデザイン会社を経営するようになり、人並みに忙しくさせてもらってきて、ようやく「自分もデザイナーと名乗っても良いかな」と思えるようになった頃、Webデザイナーの採用募集をすることにしました。
無名な会社で、私の他、数名しかいない小さな会社であるにもかかわらず、意外にも応募はたくさん集まってきました。
ところが、集まってきたポートフォリオのほとんどは、なぜか同じテーマのサンプルサイト。
のちに、Webスクールの課題で作成したものを提出してきていることがわかりました。
当時は、あれ?っと、違和感を感じたのですが(スクールの課題やってきた程度のことで、本当にデザイナーになろうという気概があるか、努力できるかなど不安を感じた)、その中から何人かを実際に採用してみることにしました。
かれこれ10年以上経ちますが、続かずに離脱した人もいましたし、覚醒して素敵なデザイナーとして活躍し続けている人もいます。
きっかけはなんだっていい。
ハッタリでもいいので、デザイナーとどんどん名乗って、どんどん作って、クライアントに信頼されるようになっていければいいのだと思います。
要は、デザイナーと名乗ったあとが大事。
デザイナーは、仕事の質で評価される、とても明確で清々しい仕事です。
デザインの力を必要としているビジネスオーナーはたくさんいます。
そして、私の出身地でもある、Webデザイナーは、今もなお人手不足で、とても需要の高い職業です。