古典から新作へののどかな展開が楽しい二ツ目さん勉強会|五十歩百歩(第九回)
しばらくウェットなnoteが続いてしまったので(なぜだ)、楽しい会の記録をば。
メンバーも会場の雰囲気も含めて大っ好きな落語協会二ツ目さんの勉強会、今年の一発目にお邪魔してまいりました!
五十歩百歩(第九回)
春風亭朝之助 ざるや
柳家圭花 芋俵
柳家小はぜ 高砂や
〜仲入り
春風一刀 ボクらの時代(地味くんシリーズ)
柳亭市若 選挙の隊列/昆布締め(三題噺)
20230218
棕櫚亭
今回も五人揃ってのオープニングトークから。
二月ということもあって、話題はバレンタインデー(笑)。皆さん、各々収穫があったご様子、さすが〜。
圭花さん&市若さんによると、ホワイトデーのお返しには、お菓子の種類によって隠れた意味があると。クッキー、マシュマロときて、あせって「マカロンは?」と聞く朝之助さん、かわいいな。
でもたぶん、お返し自体、女性陣は言うほど気にしているもんでもないから、大丈夫だと思う。え、そんなことないです?? そんなことないか。ごめんごめん。
さて落語。今回は全員分書いた!文字数!
朝之助さん「ざるや」
道を尋ねるときに、相手の狙いを定めて捕まえるまでの一連の動作が可笑しくって。朝之助さんの目ヂカラでなさると、さながら狩りのよう!相手も野生動物のようなビチビチの新鮮さ(?)でした。
それにしても。待って、「ざるや」なんて、平泉成状態なのに喉をさらに酷使なさるおつもりなの? どうかご安全に……!と思ったけど、トークで「体のコンディションはばっちり」とおっしゃっていた通り、後半まで元気いっぱいの売り声をお聞かせくださいました!
新年最初の会だから、おめでたい噺を選んでくだすったのかな? と、朝之助さんのやさしさと勝手に受け取っておきます。わたくし、今年も心のなかで朝之助さんを「アニさん」とお呼びしたい。でもやっぱりお大事に。
圭花さん「芋俵」
今回はほんのりシニカル面を見せてくださった気のする圭花さん。
いや、ヨガへのあたりがきついな?!(笑)わたしも自宅で自己流ピラティスとかやっちゃってるので、まずいぞ……!とか謎に心配したけど、例の仲良くしたくないケースとはたぶん違うからセーフw(何言ってんだ)
これまで割と大人が中心に出てくる噺を拝見していたので、前回の「つづら泥」の与太郎とか、今回の「芋俵」の小僧どんとか、こういう表情や演じ方もなさるんだな〜と印象的でした。大仰に演られる感じはなくって、声や表情のトーンが変わって、それで十分幼さが出る。
それにしても「芋俵」でいつも思うんだけど、一番重要な俵のなかで待機する役を、飛び入り参加にやらせちゃだめじゃんね。その杜撰さがあってこそ、なんだけども。悪事はもっと周到に!と、心の中で謎の突っ込みをしてしまうわたしがいる。
この会以外でまだ圭花さんを聞きに行けていなくて、普段どんな噺をかけられているのかな〜と以前調べてみたところ、けっこう珍品?をお持ちだと拝見しました。ほ〜。
この会では割とスタンダード?なものを出されている印象なので、圭花さんの珍品面に出会いに、今年こそは別の会にも足を運びたい所存。
小はぜさん「高砂や」
実は、小はぜさんの噺のなかに、たまに、ちょっと厳しめのおじさんやご隠居が出てくるの、なんでだろうな? と思っていて。
この日もご隠居が「付き合いを考え直す」とまで言っていて、よく言う「お前さんなら腹も立たないよ」とか「まァいい」の一言があるだけで、こちらもこう、だいぶギクリとしなくて済むのにな、なんて。
でも熊さん(八つぁん?)の物覚えが尋常でないほど悪くて、もうどうしようもないと、ご隠居が多少へそを曲げてしまっていても、結局は放っておけなくなるんだな。怒りっぽくてもなんだかんだ面倒見がいいんだな、と今回、思えましてね。やりとりの中途で繕わなくても、必ずしもご隠居が鷹揚な性質でなくても、成り立つんだなぁと妙に納得したのでありました。
わたしなどは特定の噺家さんばかり聴いてきたニワカ落語ファンゆえに、その噺家さんの得意ネタなどは独自版が基本型としてインプットされているわけです。
そのため、小はぜさんの落語を聴くと「なぜ、このやり方にしようと思われたんだろう」と、素朴な疑問として思うことがたまにある。
本寸法には違いないのだろうけど、色々な意味でトガってるなぁと感じることがある。悪い意味でなくて、ほんと単純に。
この方の落語に対しては、何らかの考えや確固とした方針があるのだろうなという信頼感がすでに植っているので(なんか偉そうな言い方だけど)、その答えが、時を経て自分にも見えてきたらいいなと思ったりするわけです。まあ結果、全部勘違いかもしれないけどね。「高砂や」聴いて、そこまで考えることないですか? そうですか。
良いお声も聞けて楽しうございました!やたら喉が良いのに一転、石松の台詞部分が超軽め&棒なのも好き(笑)。そこだけ粗くなるギャップよ。
一刀さん「ボクらの時代」
地味くん新バージョン!嬉しい!一刀さんに「地味くん」シリーズのリクエストを入れたお客さま、素晴らしすぎます。ここに書いても伝わらないだろうけど、ありがとうございます!
本当は前回ネタおろしの予定で用意されていたそうなのですが、それはクリスマスバージョンなのでフェブラリィにやってもね、と今回新しく作り直されたそうな。すごい。クリスマス版もまたの機会に、ぜひ聴きたい。
新作はネタバレになっちゃうからあまり書かない方がいいのかな? そんなにだれも見てないから、ちょっとならいいか。たどり着いちゃった人は、ここから先は自己責任です。
ひとつだけ申し上げたいのは、地味くんが出てくるまでが長いね?!ってことですよ。
「地味くんが主人公です」と言いながら、喫煙所での平坦な会話が続いていくこの焦らしよう。最高ですのね?!って思いました。
どこからともなく聞こえる「4年っすね」が地味くんだとわかった瞬間、もう、ウワーって!拍手したかったもんね。地味くん、こんにちは!!
一刀さん曰く色々抜けたそうなので(そうなの??)、また別の機会にも出会えたら嬉しいです。
野球チームの話とか、個人的についていけないトピックもあるんだけど、なんだろうね、ちゃんとニュアンスが伝わってきてそれで十分面白いのが、一刀さんのうまいところだなって思う。
古典がスルスルと三席続いた後に、市若さんの三題噺に向けて、仲入り後からのギアチェンジも大成功でした。
市若さん三題噺
「選挙の隊列」
[今回の新しいお題]ウグイス・サンバ・ボストンバッグ
"編隊"の音を嬉しそうに口にする市若さんの印象と、サンバの踊り子の衣裳を身にまとった中年男が街宣車に立つ絵が強すぎた。後者のだいぶなアウト感に、「百栄師匠の『露出さん』的世界や〜!」と、わたしの脳内でこの世の常識が吹っ飛んでいくのを体感しました(笑)。
脳内バグにより想像がうまくついていかなかったんだけど、選挙カーと編隊すれ違いの奇跡は、服が元通りに入れ替わるってことでいいんだよね? 中身が「入れ替わってる〜?!(©︎君の名は。)」 ではないのよね?(ややこしくすな)
こちらもまた次回、かけてくださるのかな? 毎回二席大変だろうけど、噺の変化の過程を見れて嬉しい。
いや〜改めて思い出しても、秘書に怒られて、素直にサンバの衣裳を着せられ、スン……ってなってるおじさんの画ヅラ、すごい(笑)。それで演説できるメンタルも、すごい。わたしも、強く生きたい(何)。
「昆布締め」
[前回のお題]見習い・魚屋・モノマネ
「モノマネ」の題に苦しまれたようで噺の最中にもボヤいていらっしゃいましたがw、観客も参加できちゃう、面白い噺に育ってた!わたしは好き!
最初は「岸柳島」的な武士による理不尽スタートで、「目の前で魚の首を落とすとはけしからん」とか、わりと侍の言いそうな台詞があるのに、モノマネが始まってから一気に時代設定がおかしくなる(笑)。
モノマネの内容はここには書けないので、個人メモに控えるだけにしておきますけども。落語家によるモノマネという設定なので、昭和の名人から現代の大御所までが問答無用で餌食となります。
高座姿だけでなく、楽屋や自宅の様子、某大御所に挨拶するときのマネまで、バリエーションが豊か。普段からそうやって観察してらっしゃるんだな〜と思うと面白いし、その観察眼がちょっと怖くもある。
なによりこの会で「一朝師匠」を即座にリクエストしたお客さん、天才か!って思いました。応えられる市若さんも市若さんだわ!太鼓w
今回、会場に見事な梅の枝が生けてあったのも素敵でした。小はぜさん曰く、楽屋にも飾られていたとか。素敵。
棕櫚亭さん、いつもお心尽くしをありがとうございます。珈琲や紅茶も美味しくいただいてます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。と虚空へのつぶやき・・・