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全てはライスシャワーからはじまった。母父マルゼンスキー伝説

私が競馬を始めた頃のリーディングサイアーはノーザンテーストでした。

10年くらいトップだったのでしょうか。ノーザンテースト以外にもノーザンダンサー系の種牡馬がたくさん輸入され、血の飽和などと言われていた頃でした。

ノーザンダンサー系牝馬と相性の良い種牡馬が求められていて、後にサンデーサイレンス、トニービン、ブライアンズタイムといった名種牡馬が登場します。

この頃の暫定チャンピオンはリアルシャダイでした。

名前の通り社台ファームの種牡馬で、父リアルシャダイ×母父ノーザンテーストというサラブレッドが大量生産されていきます。

中でも最も評判の高いのがイブキマイカグラでした。

阪神の2歳チャンピオンになったところまでは良かったのですが、皐月賞ではトウカイテイオーに敗れてしまいます。

骨折してダービーは回避。

秋は菊花賞で1番人気に支持されますが、惜しくも2着。

古馬になり天皇賞春に出走して、天敵トウカイテイオーには先着しますが3着。

ヤマニンゼファーの勝った安田記念で惨敗し、長い休養の間に密かに引退してしまいます。

結局、G1を勝つことはできませんでした。

大牧場社台ファームの若頭筆頭のイブキマイカグラがこの程度なので、他の父リアルシャダイ×母父ノーザンテースト産駒たちも中々G1を勝ち負けできるレベルにまで至りません。

しかし、リアルシャダイの代表産駒は社台ファームからではなく、ユートピア牧場から生まれます。

ライスシャワーです。

2歳時に骨折して、クラシックに間に合わせるようにスプリングステークスから復帰します。

皐月賞、青葉賞、と出てダービーに出走します。獲得賞金もギリギリだったように記憶しています。

レースでは16番人気でしたが、先行クソ粘りで2着に入り、大穴を開けます。

秋は京都新聞杯、菊花賞と出走し、三冠目前だった怪物ミホノブルボンを難なく差し切ります。

社台ファームのリアルシャダイ産駒ができないG1勝利をライスシャワーは小さな体でやってのけるのです。

設備、調教、血統、金すべて揃っている社台ファームの馬は、一体何が足りなかったのでしょうか。

逆に中堅牧場の小さなライスシャワーは一体何を持っていたのでしょうか。

それは母父マルゼンスキーだったのです。

ノーザンテーストをはじめとしたネアルコ系の種牡馬は、母系に入り母父になると、自分の孫たちにスピードを伝えます。

しかし、マルゼンスキーは特別な馬でネアルコ系の種牡馬であるにもかかわらず、母父になるとスピードだけでなく、スタミナ、底力も自分の孫たちに伝えるのです。

母父ノーザンテーストの社台ファームの馬たちはレベルが高いレースになればなるほど詰めが甘くなり、3着、4着になるのに対し、母父マルゼンスキーの馬たちは厳しいレースになればなるほど本領を発揮するのです。

この事に気付いた私は、ライスシャワーとともに目標を天皇賞春に定めます。

この年の天皇賞はメジロマックイーンの天皇賞春3連覇のかかった年でした。

私は有り金をかき集め、ウインズへと向かいます。

故障明けの大阪杯を楽勝し出走してきたメジロマックイーンは、パドックでこれ以上ないくらいのデキに見えました。

池江渾身の仕上げです。

かたやライスシャワーはまるで覇気のないパドックです。

小さい体がより小さく映ります。

的場騎手が打倒メジロマックイーンのために直前にスパルタ調教を敢行。

明らかにガレて出てきました。馬体重も−12キロ。

このパドックが映し出されると、ライスシャワーのオッズが跳ね上がります。

福本漫画バリにざわざわする気持ちを抑えながら、大量に単勝を買い、平静を装いながら後ろの席に着きます。

スターターが壇上に登ります。メジロマックイーンは中々ゲートに入りません。

この辺りから、ナニかが良い感じで回り始めているのを感じます。

レースはメジロパーマーがタイトに引っ張ります。

4コーナーで先頭で競馬をしていたメジロパーマーにメジロマックイーンが並びかけます。

それに小さいライスシャワーは必死で食らいついていきます。

直線で先頭にたったメジロマックイーンにライスシャワーが並びかけます。

ちょっとライスシャワーが出たかなと思ったところから、後は差が開くだけでした。

私はいつのまにか後ろの席から大きなテレビの前に出てきて絶叫。

気がついた時は、周りから冷たい視線を受けていました。

しかし、このレースから私は血統に対し、確信を持つようになります。

続く、ダービーでは母父マルゼンスキーを持つウイニングチケットが登場。

ここでも単勝とビワハヤヒデとの馬連を買って大勝します。

その後も母父マルゼンスキーを持った馬たちが活躍します。

メジロブライト、スペシャルウィーク、ロイヤルタッチ、プリモディーネなどです。

マルゼンスキーの他にも母父に入ると、スピードとスタミナを伝えるネアルコ系の種牡馬がいる事に気づきました。

ブラッシンググルームです。

また、ノーザンダンサーやボールドルーラー、テスコボーイなど初期のネアルコ系種牡馬はスピードとともにスタミナを伝えていた事も分かってきました。

他にミスプロ系の馬でもミスタープロスペクター、ミスワキなどもスピード、スタミナを伝えているのが分かりました。

この経験から私は競馬がやめられなくなっていきます。

競馬ブックを買っては、馬柱や血統表を見て、またライスシャワーに出会う事を夢見るようになるのです。

そして、私はテイエムオペラオーに出会うことになります。











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