窓のない店から外に出ると、辺りは海の底のような色をしていた。
「走るよ!」とジェイが叫ぶ。
「えぇっ!? 危ないよ、そんな高いヒールで!」
夜明け前のオックスフォードストリートをハイヒールで走れば水色の風がついてくる。朝の気配を感じて湧き出してくる夜の抜け殻たちを上手くかわしながら、風と共にジェイは走った。始発前のミュージアムステーションまで。
「アハハハハハッ」
「バカだねぇ」
「アハハハハハッ」
「ねぇ、言葉が違っても笑い声って同じなんだね。」
芝生の上で笑い転げながら、私たちは朝を待っている。