バランガルーと呼ばれる眺めのいい丘に立つ。バランガルーとは、この辺りに住んでいた先住民のリーダーの名前だ。ヨーロッパ人が彼女に会ったとき、年の頃は40。最初の夫と子供達を疫病で亡くし、二度目の夫は25だった。
記録によれば、バランガルーは、世慣れていて賢く、自由な精神を持ち、ヨーロッパにいる女の誰とも違っていたという。
魚を捕るのが上手く、分け前をもらっていた男たちは、みんなバランガルーの言うことを聞いた。
ヨーロッパ人からの貢物は受け取らず、洋服を着ることもなかった。植民地を訪れたときには、鼻に飾りの骨を通し、体に白い粘土で化粧をする先住民のやり方で礼を尽くした。
夫に殴られたとき、バランガルーは思い切り殴り返した。
ある日、囚人が彼女の漁の道具を盗んだ。彼女は役人に、囚人を罰しないと約束させた。ここにあるものは全て誰のものでもないからだ。