「ショート」5番の男
「おい、大丈夫か?5番」
「はぁ、はぁ、ぜい、ぜい…うん、まだ何とか生きてるよ。はぁ、はぁ……」
陽気な8番の男が最近体調がすぐれなさそうな5番の男に声を掛けた。
暗い排他的な街に12人の男達は住んでいた。水も無い、草木も生えない、生命が感じられない街…
有るのはそれぞれに与えられた狭い部屋だけだった。
12人の男達に名前は付けられていない。
だから声を掛ける時もお互いを番号だけで呼び合う。まるで「死刑」を待つ囚人のように…。
『なんの罪を犯して俺達は此処に居るんだろう?』
12人の男達は思う。
しかし遠い記憶すぎて誰も答えを出せる者は居なかった。
12人の男達に与えられた罰は、ギリシャ神話の天を支えるアトラスのように狭い部屋の天井を支える事だった。
灼熱の夏も
凍える冬も
365日、夏休みも冬休みも有給休暇もGWもない。
いや、むしろ年末年始は忙しかった。
1番の男はプライドが高く他の男達とは、自分は違うのだと一線を引いていた。
2番の男は勉強が趣味のような今どき流行らないインテリな嫌味なヤツだった。
他の男達は皆気さくだが、1番と2番より罪が重いのか頻繁に天からの圧力が掛かった。その度にアトラスのようにぐっと両手に力を入れて天井を支えなければならなかった。
ある時は黒い飛沫や茶色の飛沫が天から男達を襲った。
苦い飛沫や塩辛い飛沫が顔をくすぐっても、男達は天を支え続けなければならなかった。
拷問だ。もう嫌だ!誰か俺達を助けてくれ!
罪の軽い1番の男が珍しく口を開いた。
「なに、もうじきだよ。俺達の寿命が尽きれば、もうこの罰からもおさらばさ」
暗闇に男の究極の結論が、虚しく響いた。
「はぁ、はぁ、ぜい、ぜい…本当なのか?1番」
「多分な」
5番の男はこの罰から逃れる為なら生命が尽きる方を選択しようと考えた。
「ダメだ…みんな、ごめん。俺は限界かもしれない」
その時だった。
5番の天井に大きな圧力が掛かった。
ムギュッ
「さよなら、みんな、お別れだ…」
5番の男は天を支える両手を離した。
ムギュッ
ムギュッ
「あれ?遂に壊れた?5番戻らないじゃない」
sanngoはテレビのリモコンを振ってみた。
「ダメか〜?(笑)コーヒーこぼしたり、お味噌汁こぼしちゃったもんね(笑)」
新しいリモコンを買いにヤマダへ走った。