#家族について語ろう 「告白」
いつか、この事実を話したかった。
三歳,の時に両親が離婚した私には父方に弟が二人、母方に妹が二人居る。これは上の妹の話だ。
遠い昔に走り書きした物が出てきたので、殆どそのまま書き写した。
まだ表現力が足りない事は許して欲しい。
ピカッ、ゴロゴロ〜ドッカーン
ベチャ、ベチャ、ベチャ
三月だと言うのに稲妻が光り雷鳴が辺り一面に響き渡っていた。地面を叩きつけるように容赦なく降り続ける雨、雨……
時折、稲光のせいで遠く白尾山の山肌までが鮮明に見える。一瞬の光と闇のコントラスト。
ベチャ、ベチャ、ベチャ
安西 沙希は自分の部屋の灯りもつけず、ブルブルと震える手で同じ動作を繰り返していた。
さっきから?さっきからとは何時からだろう。
何時間、いや何日も何週間も前から、そうしていたのかもしれない。しかし覚えていない。
ベチャベチャベチャベチャベチャ…
沙希の動作のスピードが上がる。
もう自分が何をしているのか、分かっていなかった。
炬燵の天板中に広がる金と銀の紙屑。
18歳だと言うのに口のまわりをギトギトベトベトにして一つ、二つ、三つ…
小さくラッピングされた包み紙を開ける、口に放り込む、その二つの動作の虜になっていた。
銀紙を開ける、口に放り込む。
銀紙を開ける、口に放り込む…
チョコレート、そうチョコレートだ。
年頃の女の子が日本のお菓子メーカーの作戦にまんまと引っ掛かり、今では猫も杓子も其の日に贈る、バレンタインデーチョコレート。
沙希もご多分に漏れず、バイトで稼いだお金を注ぎ込んで2月14日を待たずに数週間も前から用意していた立派な本命チョコレート。
しかし、そのチョコレートは無惨にも彼の口に入る事はなかった。
約束の日 2月14日も沙希は今日と同じようにチョコレートとプレゼントを用意して彼からの連絡を待っていた。一日中、次の日も、また次の日も…
カレンダーはめくられ三月になっても彼からの電話は鳴らなかった。
ベチャ、ベチャ、ベチャ
チョコレートに掛けられたリボンを自分で解き封を切った瞬間、沙希の中の何かが弾けた。
ブチッ
そして昨日まで自慢だった私の妹は此方の世界の住人では失くなった。
打ち寄せる波打ち際で作った砂の城が、あっという間に崩れるように、高く高く積み上げた積み木の塔の一つが歪だったためにガラガラと音を立ててペチャンコになるように。
彼女の心の中の何かが均等を失い粉々に砕け散った。天がまるでこの悪夢を一緒になって演出してくれているかのような夜だった。
どんな思いでそのチョコレートを一つ、一つ口に運んだのか、今はもう尋ねる言葉を誰も持たない。
この後を続けるかどうかは、まだ未定。
虎吉さん、よろしくお願いいたします。
※妹の昔の彼が先日「詐欺罪」で逮捕されたので、この記事を上げる気になった。
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