「エッセイ」あるスナックの戯言〜本当にあったこわい話〜
このお話は本当にあったこわい話です。
こわいお話が苦手な方は、此処で踵を返して他のnoterさんの記事にいくことをお奨めします……
現在の私の職業をお知りになりたい方は↓この辺りをザックリと(笑)
それは先週の台風が日本に上陸するとかしないとか天気予報が騒いでいる日だった。
ミユと私は最後のお客さんを一人送り出すと
「これじゃあ、開店休業だよね」
閑散とした駐車場を見回した。
私達の店は、スナックやShot Barが軒を連ねる店舗街の一角に位置する。
「不要不急の外出をしないように」
との市内放送も出されていた。
「行っちゃう?」
イタズラっ子のようにミユが私を突つく。
「行っちゃおうか(笑)」
長年連れ添った相棒同士は意思の疎通が早い。
「じゃあ、私が片付けるからミユちゃん電話しておいてよ」
「OK!」
十数分後、私達は友人が経営する店のカウンターに居た。居酒屋スナックとでも言おうか、友人の作る料理はちょっとスパイスが効いていて、とても美味しい。だからいつもは混んでいるのだが、その日はご多分に漏れずカウンターに一人の女性の常連客が居ただけだった。
Kちゃん(友人ママ)はマスクをして辛そうな顔をしている。
私達「何?どうしたの?」
Kちゃん「コロナじゃないから安心して。この間からツイて無くて扁桃腺腫れちゃったのよ」
私達「あら、大変!」
Kちゃん「大変よ〜、先週は私のお姉さんの旦那さんのお父さんが亡くなってお葬式でさ」
私達「うんうん」(合ってるかな?結構遠い親類だよな)
Kちゃん「その前の夜にね、生ビールの樽を足の上に落としたの!!」
一同「えーーーー?!マジ?」
Kちゃん「もう痛いし、足は腫れちゃってぱんぱんでパンプス履けないからサンダルでヒョコヒョコびっこ引いて行ったわよ(泣)」(差別用語ごめんなさい)
Kちゃん「お葬式で誰よりも目立っちゃうわ、笑われるわ、恥ずかしいったら、ありゃしない」
私達「それは確かにツイてないわ〜」
Kちゃん「でしょう?」
いい肴に有りついた私達はゴクゴク生ビールを空けていく。
Kちゃん「香典は出るし扁桃腺腫れて39度も熱出して店は休むし、踏んだり蹴ったりだったわよ。全くツイてないわ~」
私「で、病院は行ったの?」
「行かないわよ、痛いもん」
(痛いから行くんじゃないのか?)
ミユが身を乗り出して
ミユ「病院行かなきゃダメだよ!」
あ〜でもない、こうでもないと説得を始めた。
ミユ「私がここ!骨折した時はね……」
そう、私がまだnoteを始める前、昨年の12月28日、うちの店の常連さんの家で餅つき大会があった(遠い目)ミユはNさんと買い出し係だった。
その時、某Max Valueの駐車場の縁石に蹴躓いて、肩からダイブしたのはコイツだった(あぁ、こんな美味しいネタ!noteやってたら逃さなかったのに)
ミユは熱弁をふるっているが、当の本人も
『大丈夫、大丈夫!』
と言って年末年始飲み歩き、病院行ったのは1月5日だったくせに……
私は隣でニヤニヤ笑っていた。
ミユ「だからね、絶対病院行きなよ〜。私なんて右手が上がるようになるまで一月半も掛かったんだから〜」
(その間、一人で店を切り盛りしてたのは私なんだけどな〜、まぁ、いいか〜)
ミユ「とにかく病院行ってレントゲン撮ってもらいなよ!」
ミユは骨折の先輩風をふかし大威張りで忠告している。こういう気のいいところが私は好きだ。
「本当、人生何が起こるか分からないから、気を付けようね」
女4人で頷き合う。
どんな話の流れでそうなったのか忘れたが、
Kちゃんはいきなり
「見る?」
スカートをたくし上げ、カウンターの向こうで紫に腫れ上がった右足の甲を高々と上げている。
あ〜ぁ、これだから女同士の飲みは……
楽しい(笑)
私「ところでお姉さんの旦那さんのお父さんって、何で亡くなったの?」
Kちゃん「あれ?言わなかったっけ?」
私「うん、聞いてないけど」
Kちゃん「いいのよ、93だから〜」
私「大往生だね〜、老衰?」
Kちゃん「回転寿司の〇〇あるじゃない?」
Kちゃんは地元の有名寿司店の名前をあげた。
Kちゃん「あそこでお寿司食べてて喉に詰まらせてチーンよ」
一同「えーーーー!」
女性常連客「それって、そのお店、警察沙汰にならないの?」
K「大丈夫だったんじゃない?93だし(笑)」
ミユ「その前に93でよく回転寿司に行けたね~」
私はネタが鮪だったのか、サーモンだったのかが気になっている。いや、イカか?それとも……
K「いいんじゃない、好きなお寿司食べて死んじゃうなんて」
人生、全く何が起こるか分からない。
すると老人介護をしていたミユがポツリと言った。
ミユ「あそこのシャリ、老人にはちょっとコワいものね〜。のみ込めなかったんだね」
一同「あ〜、確かにコワい、コワい。」
合掌
完
※私の地方では「コワい」は硬いと言う意味で使う。
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