【DAY 4】お家に帰るまでが旅です。最終日も気を抜かずに旅をしましょう。
これ、ロシア出国できないやつやん。笑えない。
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遡ること、2時間半前。タクシー代を無事両替し終えたわたしは、宿泊していたAirbnbからウラジオストク空港へ向かっていた。
車酔いしやすいこと、酔うと気持ち悪くなるのではなく寝てしまうわたしは、できる限り20分以上のタクシーには乗らないことにしている。が、しかしここはロシアはウラジオストク。ガイドブックに
「旅行者がウラジオストク空港と市街を行き来するときにはタクシーを使うのが一般的です」
と書かれている。ちょうど良い時間の Airport express がなかったこともあり、しょうがなくタクシーを使うことにした。
タクシーの車窓から街を眺める。3日間、筋肉痛になるまで歩いた街並みを眺めながら名残惜しくなる。市街地から離れると、たくさんの団地が続いていく。徐々に旧ソ連の面影が残る景色へと姿を変えていく。
。。。
乗車開始約20分、案の定わたしは爆睡した。
目を覚ますと、目の前にはウラジオストク空港。あくびをしながら安堵するわたしにドライバーさんが「よく寝ていたね。でも、女の子がタクシーで寝るのは危険だよ」と呆れている。いや、良いドライバーさんにあたってよかった。
チップを含めて少し多めに払ったのに「小さな女の子からチップなんてもらえない」と言われ1ルーブル単位でお釣りを戴く。いや、いい人すぎでしょ。そんなに小さくもなければ「子」でもないのだけれども。騙してしまったのなら申し訳ない。
そんなこんなで、無事離陸2時間半前に空港へ到着。ヒヤリハットはあったものの、まぁ上出来。
さて、出国。審査の前にちょっと緊張しながら確認をする。
パスポート、よし。
入国時にもらったカード、よし。
航空券、よし。
これなら大丈夫。パスポートケースを外して、堂々とした顔をしていざ出国審査へ。
自信がないと疑われるんじゃないか。とビビリな私は、そのビビリを隠すためにドヤ顔でパスポート一式を机に出した。
とそこで、彼女が私の方を向く。パスポートはまだ彼女の手元。口元を見ると
VISA please
ああ。VISAね。
え、VISA?
あの、成田で見せて入国審査の時にも見せた、あのVISA?
完全に思考が停止した。今考えれば必要なのは当たり前なんだけれども、すっかり頭から抜けていたわたしは軽くパニックになって荷物をひっくり返す。
ない。
ない。
ない。。。。。。
彼女の顔が、こわばってくる。後ろで待つ人たちの顔が、どんどん歪んでくる。
やばい。出国できない。
とそのとき、思い出した。VISAは大事だからと財布に入れたことを。
記憶の通り、財布の中には折りたたまれたVISA。ビビりながらも、そのビビリを隠すためにドヤ顔でVISAを出す。(ここで謙虚になっておけばよかった)
なんとか出国スタンプを押してもらい、足早に審査デスクを後にする。ああ、おそロシア。
無事にゲートを見つけて、荷物を整理しようと座ろうとしたとき。私は気付いた。
ない。
日本のSIMカードを挟んだパスポートケースが、ない。
改めて荷物をひっくり返すも、ない。思い当たる場所はただ一つ。
あの、悪夢の出国審査デスク。
まじか。あそこに戻るのか。。。ありえない。でも、SIMカードは必要だ。深呼吸を5回くらいして引き返す。
審査してもらったデスクを見ると
あった。
SIMカードを入れたわたしのパスポートケースが、キラキラと光って見える。
さて、あれをわたしはどう回収したらいいのだろうか。審査デスクにあるパスポートケースを眺めながら右往左往していると、ちょうど今審査をしているめちゃくちゃかわいいロシア女子がわたしに気付いてくれた。
パスポートケースを指差す彼女に首を縦にふる。首がもげそうになりながら何度も。
パスポートケースを手にした彼女は、さっとまるで忍者かのようにわたしへパスポートケースを手渡してくれた。
これは、うまくいった!
そう思った次の瞬間、出国審査官に声をかけられる。これは、おそロシア。
おわった。今度こそ、出国できない。
このパスポートケースが自分のものであることを必死に伝えるが、彼女の表情は険しいまま。とそのとき、あのロシア女子がロシア語でこの状況を伝えてくれ、私は解放された。
彼女は、神なのだろうか。お礼を言いたかったのだが、いかせん慌てふためきすぎて彼女の顔をまともに見ていない(でも、かわいかったのだ。ロシア人女子は、基本的にみんなかわいい。)
本当にあのときは、動揺しかなかった。
兎にも角にも、タクシー・VISA・SIMカードと3回の危機を乗り越えてようやく日本へ向かった。はぁ、おそロシア。
〔教訓〕
お家に帰るまでが旅です。最終日も気を抜かずに旅をしましょう。