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音の世界と音のない世界の狭間で

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聴覚障害のこと。わたしのきこえのことを、つらつらと。
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2020年10月の記事一覧

きこえにくいからこそ、「そこに行きたい」ただそれだけの理由で空を飛べるのかもしれない。

世界を旅するたびに、ふと感じることがある。わたしたち聴覚障害者にとっての海外旅行って、日常生活の延長でしかないんじゃないか、と。 わたしは自分のきこえを説明するときに、よく海外旅行を例に出す。 「わたしの耳は全く聞こえない訳ではありません。音としていろんな音は入ってくるけれど、相手の声を【言葉】として認識する点で困り感があります。 例えるなら、あなたがアラビアの国にポンと送り込まれて、アラビア語の嵐を耳に入れ続けるようなものです。音として耳には入ってくるけれど、言葉とし

マスクと、ソーシャルディスタンスと、日本語と。それでもわたしは、音のある世界をも大事にしたいから。

まぁ、そんなもんだよね。 友達と待ち合わせてカフェに入り、店員さんが放った 「感染症対策のため、お席は横並びでお願いします」 の一言に、特に憤るでもなく「しょうがない」それ以上でもそれ以下でもないと感じた。 もちろん、騒がしい店内で初対面のマスクをつけた店員さんの声はわたしの脳内には届かなくて、友達の復唱を頼りに知った一言なのだけれども。 聴覚障害と言っても人それぞれで。 わたしときこえは、左右でだいぶ差がある。 左耳は補聴器をつけていて、ある程度聴き慣れた人の声であ