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最近の怪盗グルーシリーズはしんどい

「怪盗グルーのミニオン超変身」を見たので感想を書く。

私は「怪盗グルーの月泥棒」から怪盗グルーシリーズが好きだ。スピンオフシリーズの「ミニオンズ」シリーズも好き。怪盗グルーシリーズは大人(現在)のグルーが主人公なわけだが、このグルーがアニメーションの主人公としては子どもウケしないキャラクター設定なのがいい。笑福亭鶴瓶を吹き替え版声優に持ってきてやっとおかしみが演出できるくらい、嫌がらせが好きで皮肉たっぷりの感じ悪ーいおじさん。もちろん子どもの好きそうな小道具を使いまくるのだが、大人から見ると「なんだこのヤバい人…」となる。ビジュアルも、変わった体型とスキンヘッド、横長の顔に高い鼻。シリーズにはあまり外見の整ったキャラクターが出てこないが、それは悪者=ブサイクみたいな公式があるからなのか?と思ったりもする。

脱線したが、先ほど2024年夏公開の「怪盗グルーのミニオン超変身」を見た。あらすじは、グルーが学生時代のライバルの恨みを買ってグルーの赤ちゃん(今作で生まれた)が狙われ、潜伏先の隣人の娘ポピーの初悪党デビューの手伝いを赤ちゃんを盾にされてするというもの。ミニオンは反悪党同盟の実験台にされて5体が強みを持ったメガミニオンズにされる。
「大脱走」もそうだったのだが、悪党と戦う/家族を守る/ミニオンが全部バラバラの文脈になっている。それは前作に引き続きなので特に文句を言わない。

今作にはしんどいシーンたくさんある。映画館で見なくて正解だったと思うくらい、正視できない描写があった。

新しい隣人にコミュ障で嫌がられるグルー
グルーはコミュ障だ。適切な社会的距離感とかはよくわかっていない。それはミニオンズフィーバーで幼いグルーがからかわれる描写でも示唆されていた。友達はいないけど偉そうだしミニオンズはいることでバランスを取っていた。前の作品でも悪党銀行の人やライバルたちにバカにされていた。でも、それはコミュ障がゆえではなく、悪党としての実績のショボさであった。グルーは基本的に嘘やハッタリが苦手なので、「潜伏先で偽名と嘘の経歴でお金持ちタウンの住人たちにうまく馴染め」なんてうまくできないはずなのだ。それを無理に隣人とコミュニケーションを取ろうとし、挙げ句トークの下手さでウザがられ、時間切れというように立ち去られる。この間のグルーのトークはきちんと聞けていないが、必死にとってつけて、とんでもない不審さだったはずだ。
極めつけは一番上の娘のマーゴに「イタすぎる」と言われてしまうところ。悲しくて胸が締め付けられる。

日本かぶれのカラテの先生
今時叩かれてもおかしくない、子どもの教育に悪そうなカラテの先生が出てくる。教室には銅鑼がおいてあって、壁にはカンフー系の映画ポスターがぺたぺた貼られている。バンダナと黒縁メガネでおそらく「日本」好きなオタクのようなビジュアル。子どもにセンセイと呼ばせ、子どもに薙刀を向け、髪の長い子どもには髪を切ることを強要し、子どもにアシスタントの真似事をさせたりする。日本のカラテ道場にもたしかにいそうだし、「礼」を間違って学習した外国人がやりそう~と思ったりもするのだが、この一連の描写が限りなく不愉快。さらに、グルーの末娘のアグネスが偽名を名乗れずに「言えません…」とかやっていると、厳しく当たって罰を与え、最終的にレッスンを受けずに道場の隅に座っているように命じる。ここも今日び日本でもこんなカラテ道場流行らんやろ…と思わせる不快さである。最終的にイネスがボコボコにするのだが、それにしても日本のことを誤解しているのかバカにしているのかわからない描写が嫌な気持ちになる。

かわいそうなメガミニオンズ
今回ミニオンズは反悪党同盟で働かされる。選ばれた5体がそれぞれ実験台になり、強い/硬い/目からビーム/軟体/飛行の特長を持たされたメガミニオンになる。メガミニオンたちは人助けをしようとするが失敗し、街から追放され、反悪党同盟をクビになる。彼らは人を助けるために改造され、よかれと思って人助けをするのに、ミニオンであるが故に失敗するのである。それに、超変身した5体のミニオンたちはあまりかわいくないのだ。こんなのあんまりだろう。クライマックスではお情け程度の出演シーンがあるが、お情け程度。ちなみにエンドロールでも変身は解かれない。かわいそう。

最悪なルーシー
ルーシーは潜伏先に美容院が選ばれ、美容師として働く。反悪党同盟によって盛り盛りに盛られた経歴のせいで即戦力だと思われてしまい、ちょうど来店したおばさんの担当にさせられてしまう。美容師としての知識はまったくないルーシーはおばさんの髪を発火させ、店もめちゃくちゃにしてしまう。おばさんの髪が熱で泡立つシーンがあるのだが、それを見た瞬間にルーシーは逃げ出す。その後おばさんとスーパーで出会うのだが、謝りもせず、おばさんを悪者にしてスーパー内を逃げ回り、これまためちゃくちゃにして退店する。
隣人の妻は人の話を聞かずに自分の話を一方的にするタイプの人で、自慢も多く空気もあまり読めないが悪い人ではないし、グルーのこともテニスに誘ってくれる。それなのにルーシーはうんざりして立ち去るときに彼女のジュースまで飲み干してしまう。アニメにムカついてどうするんだという指摘は甘んじて受け入れるが、今回のルーシーの振る舞いは流石にどうなの…と思ってしまう。

気の毒なメローラ
メローラはルーシーに髪の毛をぼろぼろにされたおばさんだ。メローラはたしかに感じが悪いしクレーマーっぽいが、悪いことはしていない。それなのにルーシーに髪の毛をぼろぼろにされて、悪者にされて、小麦粉をまぶされ、バターを踏まされ、冷凍庫に飛び込まされ、自動ドアに叩きつけられる。これが気の毒と言わずになんと言おう。

かわいそうなレニー
レニーは今回ポピーに拉致されるミツアナグマで、グルーの母校リセ・パ・ボンの校長室で飼われていた。リセ・パ・ボンはノイシュバンシュタイン城をモデルにした建物で、グルーと、今回ライバル関係にあるマキシムの因縁が始まった場所である。本編はリセ・パ・ボンで開かれた同窓会で、グルーがマキシムを逮捕するところから始まる。レニーは臆病がゆえに獰猛な動物で、校長に対して異常な怯えを見せる。夜は体のサイズに見合わず小さいケージに入れられていた上に、あまりよい待遇を受けてなかったのだろう。レニーはグルーの赤ちゃんに赤ちゃん用のおやつをもらってグルーの赤ちゃんに懐くのだが、最終的にはポピーに飼われることになる(ポピーが求めたので当然っちゃ当然だが)。赤ちゃん用のチューブを咥えたレニーはすんなりポピーに抱かれていて、食べ物で人間に懐いたと解釈するべきなのだが、なんとなく釈然としない。

操られるジュニア
赤ちゃんが洗脳されて操られているのは心が痛む。本当にしんどい。

よかったこと
・ネファリオ博士が最後に出てくる
・ラッキーがアグネスのことを忘れていない
・今までのライバル級の登場人物たちが出てくる

それでも私はシリーズが好きだし、続編を待つだろう。そして文句を言いながら続編も見るのだろう。

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