新型コロナの今を知るためのメーター 実効再生産数とはなにか?
連日ニュースでは新型コロナの新規感染者数が報じられています。しかしこの数字だけでは、今後の感染動向を予測することは出来ません。
そこで使われているのが実効再生産数です。この数値は感染症の状況を把握する指標として優れており、一時期NHKニュースでも使われていました。しかし前提知識が無いとその意味するところが理解できないためか、最近は使われていません。
前提知識と言っても、決して難しいものでは無いのですが、ニュースの時間枠内で伝えるのにはちょっと無理があるボリュームなのです。
今日はその前提知識含め、実効再生産数について簡単に記してみたいと思います。まずは前提知識である感染症のメカニズムからはじめます。
感染症のメカニズム
新型コロナのような感染症は、人から人へ感染することで拡大していきます。感染した人は、感染後の一定期間感染力を持ちます。感染力を持っている期間に接触した人にうつすことで、感染が拡大していくのです。
新型コロナの場合、感染力は10日程度持続すると言われています。
遺伝子は長期間検出するものの,感染力があるウイルス排出期間は 10 日以内 ※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第5.2版より
極端な話、一定の期間「日本中の全員が他人と一切会わない」という状態にすれば、新たな感染者数は発生せず、感染力を持った人も居なくなり、感染症は消えて無くなります。
現実的に考えるとこんなことは無理ですよね。でも大丈夫、感染者がうつす人数を1名未満に抑えた状態を継続させれば、感染を収束させることができます。
具体的な数値でみていきましょう。今1000人の感染者がいるとします。
# うつす人数1名以上の例
一人の感染者がうつす平均人数が2名の状態を継続させると
1,000 → 2,000 → 4,000 → 8,000 と感染は拡大していきます。
# うつす人数1名未満の例
一人の感染者がうつす平均人数が0.5名の状態を継続させると
1,000 → 500 → 250 → 125 と感染は縮小していきます。
両方同じ感染者数1000名からスタートしているのですが、うつす人数が違うことでその後の展開に、こんなに差が出てきます。
「うつす人数を1未満に抑える」非常にシンプルですが、これが感染症対策の最大の目的です。マスク着用、3密回避など行動変容の呼びかけ、緊急事態宣言、蔓延防止重点措置などの対策は、すべてこれを目指しています。
実効再生産数とは何か
感染者がうつす平均人数は前述の対策、ウィルス自体の特性の変化など様々な要素で変動していきます。「ある時点での、一人の感染者がうつす平均人数」を表すのが実効再生産数です。その時点での感染力を表す指標として用いられます。
実効再生産数 1未満の状態を継続すれば感染は収束していきます。この値が1未満か否かは、感染の拡大収束を見極める重要な指標となるのです。これが実効再生産数が使われている大きな理由です。
実効再生産数に関するよくある質問
Q1 : 実効再生産数はどうやったら分かるか?
A1 : 現時点の各都道府県の実効再生産数(簡易版)は、東洋経済のサイトで確認することが出来ます。
ここで公開されている実効再生産数は、一般の人が大まかな傾向を把握するための簡易指標という位置づけです。疫学者など予測の専門家は複雑な数理モデルと感染症に関する深い知識を駆使して、これよりはるかに高度できめ細かい予測を行っています。今後の記事でその概要を説明予定です。
Q2 : 実効再生産数が1未満になったらもう対策止めていいのか?
A2 : いいえ。対策を行った結果、実効再生産数が1未満に抑えられているケースでは、その対策を止めると数値は再度上昇します。
去年前半「実効再生産数が1未満になっているのだから、緊急事態宣言は意味なかった」という論がありました。これは理論として全くの誤りです。坂道でスピードが出しすぎ危険な状況、ブレーキかけて減速しはじめたからといって、もう安心とブレーキ離す人はいませんよね。十分に減速して安全な状態になってからブレーキを緩めると思います。それと同じです。
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