違和感解消のリフレクション
誰かと話している時に
スーッと過ぎていく言葉と
なんだか一瞬モヤモヤする言葉がある。
そのモヤモヤしたものが頭に残ったまま話が進むと
相手の話を聞いているようで
その後のことは聞こえなくなってくる。
感情が会話の邪魔をし始めるからだ。
でもこの感情が自己理解の大きなヒントとなるので
その時はそのまま素通りさせるにしても
後からちゃんと向き合いたいもの。
特に仕事での打合せや議論、
誰かとの会話で感じる心のざわめきは
多様な人がいればいるほど起こりうる。
議論の時は限られた時間という状況もあるだろうし
誰かの話の流れを止めないように
自分のモヤモヤをやり過ごすこともあるだろうけれど
後でちゃんとその感情を消化させた方がいい。
いわゆるリフレクションというもの。
リフレクションをすると
誰かの意見になぜ違和感を覚えたのかが見えてくる。
ただしその時にやってはいけないのが
違和感の矢印を相手に向けるということ。
その意見を言った人に矢印を向けると
負の感情がその人に対して湧いてしまって
有効な関係が構築しづらくなるし
建設的な議論をするのに邪魔になる。
モヤモヤした瞬間に向き合う例え話
例えばモヤモヤの感情は仕事以外でも
日常の些細なコミュニケーションでよくあること。
先日参加したオンライン勉強会で
チームワークを醸成する意図もあったのか
自分たちのチーム名を決めるプロセスがあった。
ただのチーム名と言えばそれまでで
人によっては何でもいいという人もいた。
ただ自分に関わる名称は、私にとっては重要だったらしい。
一生自分について回るチーム名でもないのに
候補に上がった名前に心がざわざわ、気持ちがモヤモヤした。
理由はそのチーム名候が
あるアイドルグループと同じ名前であるということを知った時。
ここでちょっと、その時の自分の感情の推移をたどって
リフレクションをしてみる。
(なんで自分達とは関係のないアイドルの名前が候補名に入ってくるのだろう)
--どんなアイドルかもネット検索してみて--
(え!? こんなに若いメンバーで、全然関係なくない!? 唖然)
(うわぁ、まったく自分やチームメンバーとリンクできない)
(いやだな、こんなチーム名に決まったら)
--議論は進み、自分の意見を言いつつ悶々と--
(でもその言葉がもしアイドルの名前についていなかったら嫌ではない)
(むしろその言葉の響き自体は好きかも)
(てことは、私はアイドルが嫌なのか!?)
(うーん…)
(いや、アイドルが嫌なのではないかも…)
(既に存在する何か、固定イメージがある何かと一緒なのが嫌なのかも)
(誰かと一緒とか、何かと同じという感覚は私が一番嫌いなこと)
(そうか、オリジナリティを大事にしている自分にとって、既存のイメージがくっついているのに抵抗あるのかも)
(そうか、自分が大事にしているのは「オリジナリティ」だ!)
ということで、ひとり脳内壁打ちをしながら
私は個性的なもの、オリジナルなものが大好きである
という自分の価値観に改めて気がつく。
どこにモヤモヤしていたか気がつくと
アイドルと一緒のチーム名への拒絶も薄らぎ
なんならその名前への愛着も次第に出てくる。
そういえば、昔から誰かが持っているブランド物や
大衆的なみんなと同じものが大嫌いだった。
それよりも「世界にたった一つ」とか
「個性的な」とか「独特な」とか「変わっている」とか。
そういうのが好きなのだった。
アートが好きなのも
唯一無二の世界観が感じられるからなのかも。
大事にしている自分の関心を改めて認識。
やったー!また自己理解が深まったゾ。
モヤモヤを連想ゲームで遊ぶと面白い。
という一連のリフレクションの例えがここまで。
もしここで、私がそのチーム名候補を言った人に矢印を向けていたら
無駄な、非建設的な心の攻撃が始まっていたことになる。
どうでもよい日常のモヤモヤを例に挙げるとキリがないが
違和感を感じることは、仕事のコミュニケーションでも頻繁にある。
特に仕事では利害関係も絡んで複雑なモヤモヤが生じる。
そういう時に、相手に矢印を向けそうな自分を見つけたら
その指の方向を自分の関心に切り替えると良い。
モヤモヤは価値観を教えてくれる
ある瞬間に自分がモヤモヤした言葉に向き合って
なぜそう感じたのか
その背景にある自分の体験や思い込み、信念は何か
そこから読み取れる自分の価値観は何か。
違和感を突き詰めていくと
自分が大切にしている価値観に辿り着く。
そうして、少し自分の理解が深まっていく。
自己理解はいちばん難しい。
みんな自分で自分のことを
いちばん分かっていると思っているけれど
そう簡単ではない。
だからと言ってどこかに自分探しの旅に出ても
自分は見つからない。
それよりも日頃自分が話したり聞いたりする言葉を
もっと大事にしたほうがいい。
特に、自分の好きなものよりも
実は嫌なことへの心の反応こそ
自分が大事にしているこだわりに気づくことができる。
自分のこだわりの理解が進むと
「他人も同様に大事にしているものがあるのだ」
ということを認識できるから他者理解にもつながる。
他の人の意見にも多少寛容になれる。
その意見を形成している価値観に気がつくと
発言を跳ね返さずに受け止めることができる。
「こういう価値観だから、こんな意見になるんだな」
と思えると、無駄に攻撃的にならずに済む。
これは我々のようなコミュニケーション業で
ヒアリングをする時、議論をする時にとても重要な姿勢。
対話による他者理解の力を高めるために
リフレクションで自己理解から始めるとよい訓練になる。
モヤモヤは消化し、昇華させることができる。