メディアとダイバーシティ
広告業界団体の加盟会員の代表者に向けた
「メディアとダイバーシティ」がテーマの
特別講演会に参加をした。
1時間くらいの内容であったが
1970年代くらいから現在まで
メディア内のジェンダー表現の変化を
参考事例の動画を見ながら確認をした。
アンコンシャスバイアスの醸成を
広告メディアがいつの間にか加担していないか
実に考えさせられるものだった。
自分のメモとして以下に記しておく。
事例としてCMがいくつか挙げられていた。
「24時間戦えますか」に代表されるように
主に飲料系CMが働き盛りの男性を応援し
女性は化粧品CMで職場の飾り役として表現される。
ジェンダーの役割がはっきりとしたCMが続く。
1970年代
『男は黙ってサッポロビール』
資生堂の『君の瞳は10000ボルト』
男性女性の役割が職場においても
かなり明確に分かれている。
その他にも「私作る人、僕食べる人」など
ジェンダーが固定化された表現は当たり前の時代。
1980年代
カネボウの『君に、胸キュン』では
「夏は寝冷えと痴漢に注意」と
いまでは考えられない表現が
普通にテレビCMで流れている。
バブルから1990年代
女性がだんだん元気になり
CMソングではドリカムのように
同性から好かれるアーティストの起用が始まる。
男性職場の飾り役であった女性も徐々に変容。
2000年代
女性はビューティーからハンサムへ
少しずつ中性的な要素が混ざってくる。
可愛らしさからかっこよさの演出へ。
メディアは時代を表すと同時に
生活者のアンコンシャスバイアスに
与える影響が大きいと
改めてその責任を感じながら拝聴した。
女性だけに性差別があるわけではない。
男性への偏見も相当なもの。
高度成長期を支えてくれた感謝はどこへやら。
たとえば流行語となった夫不要論の事例は
面白おかしい言葉遊びとも捉えられるが
不快な人も存在するだろう。
・粗大ゴミ
・亭主元気で留守がいい
・家庭内離婚
・濡れ落ち葉
・わしも族
・主人在宅ストレス症候群
・卒婚
・男捨離
夫が家にいることで
妻のケアワーク労働時間が
増加することを揶揄している。
他にもこんな事例
海外では日本の女児のメディア扱いに敏感で
鹿児島県志布志市のふるさと納税CMの
未成年の象徴であるスクール水着を着た少女が
小児性犯罪につながるという見方がある。
本当に広告表現は難しい。
ある側面で見た時に良かれと思って
誰かを応援したつもりが
別の角度からは「あり得ない」と刺されてしまう。
その他、旭化成研究所の『妻の家事ハラ白書』の話
ルミネの働く女性応援のダブルバインドの話
昨今の動きとしてLGBTQへのまなざしや
ノンバイナリージェンダーの表現として
トヨタの『常識に尻を向けろ』や
資生堂の『メーク女子のヒミツ』
共働きの環境を支え
若い男性の育児参加意欲を表現している
パナソニック『ふだんプレミアム』
大塚製薬『オロナイン』も続いた。
こうして見ると、時代とメディアは密接だ。
そのメディアで流すためのコンテンツを
クライアントと共に企画制作する我々は
生活者の幸せや豊かさにつながるように
日々頭を悩ませる。
散々悩んで、よしこれだ!と
誰かを励まそうと思って作ったつもりが
結果的に他の人を傷つけてしまうことがある。
社会的にも大変責任のある仕事であると
改めて感じた講演会であった。
メディアとダイバーシティというテーマ。
講演会参加者は業界の名だたる企業の代表者ばかり。
それにしても参加者リストの44名中
女性の代表者は私含めてわずか2名。
ほとんどが50-70歳くらいの男性で
全員が黒スーツに身を纏っている。
こうした場面において
ひとりカラージャケットの私が目立たなくなるくらい
広告会社の代表にもダイバーシティがほしいと感じた。