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くたばれ!ファイナルファンタジー! 〜クライヴ・ロズフィールド33歳〜(FF16感想)

FF16の2週目をクリアしたので感想を書こうと思います
今更すぎますが一応ネタバレ注意です




■2周目の方が面白かったゲーム

FF16を初見でプレイしたときの印象は
「普通に面白いゲーム」
という印象だった

前作FF15※より面白かったけど俺のゲーム史に残るような作品かというとそうじゃない

※一応断っておくと俺のFF15の評価は世間のそれほど低くなく、むしろかなりの名作だと思っている

料理のグラフィックは明らかにFF15の方が良いの、いかにFF15が狂ってたか思い知らされる


すごく完成度は高いんだけどファイナルファンタジーってそれだけじゃないんだよなぁ〜
手堅く面白いゲームにしちゃってさぁ〜
ファイナルファンタジーといえば基本的な面白さを担保しながら「剣と魔法とオープンカー」みたいなヘンテコさも欲しいよなぁ〜

というなんとも言えない中途半端な評価だった


とはいえ、2周目要素があるとやりたくのがゲーマーの性
短いロードやテンポの良いストーリーにアクションの手触りの良さ等
基本的なプレイングフィールが快適なこともあってアルテマウェポン欲しさに2周目を始めた

ちなみに2周目クリアした翌日に武器スキン変更アップデートがあった

そして気づいた
あれ?このゲーム最高傑作級のファイナルファンタジーじゃね?と


■アクションゲームとしてのFF16


FF16といえば「FF初の本格アクション」※と銘打たれていたのでまずはアクションについて触れるが
このゲーム目に見えない"調整"の部分が凄まじい
前述した基本的なプレイングフィールの快適さからは、開発者の裏話聞かなくとも「プレイヤーへの配慮」を感じ取れるし、クリア後限定の高難易度モード(ファイナルファンタジーチャレンジ)がなんとも程よい難易度なのだ

俺はコントローラー捌きという意味でのプレイヤースキルは低いが程々に手応えは欲しいタイプの人間だ
そんな人間にとってファイナルファンタジーチャレンジの難易度は本当にちょうどよい
(後々知ったことだが当初はファイナルファンタジーチャレンジがデフォルトの難易度だったらしい)

※個人的にはFF15もFF7Rも充分「アクション」だったし、クリアするためにプレイヤーに求められるコントローラー(キーボード)捌きという意味ではFF14の方が遥かに高い水準なので、FF16を殊更「アクションゲーム」であると強調することには違和感がある


そもそもだがこのゲームは「クライヴ・ロズフィールド強すぎ問題」を抱えている

特に「回避(ドッヂ)」が馬鹿みたいに強い

オート系アクセサリは使わずプレイしていたのだが
オートアクセサリなどなくても、攻撃モーションキャンセルできるわジャスト回避の猶予フレームがえらい長いわで誰でもそこそこスタイリッシュに戦えてしまう
格ゲーとかもっとシビアなアクションゲームだったら一回使うたびになんらかのゲージを消費するレベルの技が無限に使える

しかも特定のアクセサリを装備すればジャスト回避成功時ズッシャァ!とカッチョいいスライディングを行い、攻撃が一定時間(割と長い)リミットブレイク状態になることもできる


そして仮に回避し損なったとしてもノーモーションでゴリッと回復できるアイテムが結構たくさん持てる

なのでファイナルファンタジーチャレンジモードではHP残量を見誤ってワンパン即死みたいなことは良くあるものの、ジワジワ詰んでいくみたいなことはほぼなかった


防御面だけでなく攻撃面でもなかなかぶっ飛んでいる

「敵を一定時間凍らせ一切の行動不能状態にする」みたいな技が(カウンター技とはいえ)いつでも何度でも出せるしラスボスにすら効く
ギガフレアやダイヤモンドダストみたいな大技が意外にクールタイムが短くアクセで強化しなくても連発できる

というかそもそも大抵の敵は
斬鉄剣 相手は死ぬ

実質的なクールタイムである斬鉄剣乱舞のクールタイムもそんなに長くない

パーマネントフロストで凍らせる
ライトニング斬鉄剣※でZantetsukenゲージを最大まで貯める
斬鉄剣
で大抵の状況はなんとかなる
※ライトニングロッド+斬鉄剣乱舞


全体攻撃+雑魚敵なら即死するダメージを叩き出す斬鉄剣が
Zantetsukenゲージさえ貯めてしまえば何度でも打てる


ローマ字でZantetsukenと表示されているシュールさと裏腹に
このゲームを支配するほどの存在感を示すZantetsukenゲージ

Zantetsuken最高ー!!

とはいえ他の召喚獣が弱いかと言うとそんなことはない
開発陣によれば「ラスボスに挑む時、みんなビルドが異なるように調整した」らしいがまさにそんな感じ
高難易度モードであっても好みで選べるくらい全召喚獣に強みと弱みがある
(ただしラムウとバハムートのフィートだけは使いこなせなかった)

敵の強さも程よい
防御性能が半端ない代わりに喰らうと結構痛いので戦闘に緊張感がないわけではない
回復アイテムも余るほど拾えるが、前述したようにワンパン即死が結構あるので、ポーションガブ飲みでヌルゲーということもない
攻撃性能も高いがボス級は結構硬いのでコンボを工夫する楽しみもある(逆に雑魚は斬鉄剣で一掃できるのでダルさもない)

とにかく「主人公を動かしていて気持ちいい」というアクションゲームとして基本中の基本の部分が完璧なゲームだった


■ファイナルファンタジーの本質は「シリアスな笑い」なのではないか


アクションの話の次は各種演出面について語りたい
FF16で結構聞く不満点として
暗すぎるストーリーと画面
戦闘中のQTE
等がある

個人的にはストーリーの暗さは「そういうもの」と受け入れられたし
画面の暗さは俺の環境ではそこまで気にならなかった


ただQTEは正直「ダセェーーー!」と思っていた
一周目は


FF16には定期的に「召喚獣合戦」が勃発するのだが
とにかく演出の力の入り具合が凄い

召喚獣同士がぶつかり合うたびに
建物は崩れ
大地は抉れ
都市一つくらい余裕で消滅する

飛び交うダメージ値も文字通り桁違いにインフレしていく


暗くて地味なストーリーの鬱憤を全て吹き飛ばすド派手な召喚獣合戦
そこまでやるならむしろリミッターを外して馬鹿馬鹿しくなってしまうレベルでいい

考えてみて欲しい
さっきまで硬派なダークファンタジーだったのに
気づいたら宇宙空間でビーム撃ち合ってる馬鹿馬鹿しさ
『ゲーム・オブ・スローンズ』がいきなり『機動戦士ガンダム』になるレベルの振れ幅



絶対召喚獣合戦作る時

偉い人「召喚獣合戦でやりたいことある人、手あげて〜」

脳みそが中学生と化した開発陣「「「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!!!!」」」
「俺タイタンとオラオララッシュしたいっス!」
「俺は宇宙でバハムートとビーム鍔迫り合いしたいっス!」
「俺はオーディンの斬鉄剣を白刃取りしたいっス!」

偉い人「う〜ん、全部採用!」

みたいに決めただろ


バルナバスの口から「斬鉄剣究極奥義 大斬鉄」みたいな文字列が飛び出すのがもうズルい

普段のシリアスさと召喚獣合戦の温度差でヒートショック起こしそうになる

そこに祖堅ミュージックが加わりさらにテンションを上げてくれる

タイタン戦が話題になりがちだけど
個人的にはフェニックスのBGMが一番ソケンがマサヨシしてる感じがして好き

※このPVの曲

ここまでくるとパチスロの演出みたいなクソダセェQTEも「むしろそれがいい」になってくる



そして重要なのはこんなアホみたいな演出の戦いなのに登場人物は超大真面目
自分の命を削って召喚獣の力を行使している

これってまさに「シリアスな笑い」ではないか

俺は冒頭に
"すごく完成度は高いんだけどファイナルファンタジーってそれだけじゃないんだよなぁ〜手堅く面白いゲームにしちゃってさぁ〜ファイナルファンタジーといえば基本的な面白さを担保しながら「剣と魔法とオープンカー」みたいなヘンテコさも欲しいよなぁ〜"
と偉そうなこと書いたが、このファイナルファンタジーに求めている「ヘンテコさ」の正体は「シリアスな笑い」のことなのだったのだ

そして「シリアスな笑い」こそが"ファイナルファンタジー"の本質なのだ



ここで次回作(ナンバリングではないけれど)のPV見ていただきたい

冷静に考えるとめちゃくちゃおかしくない?

クソデカバスターソード担いだ金髪ツンツン頭と
身の丈以上の長さの日本刀振り回す銀髪ロン毛が戦うシュール過ぎる絵面

そもそも往年のスクエアチックなギャグ要素が(最近の作品と比べると)多めのFF7をPS5のグラフィックでリメイクするという無謀さ

でも作品としてはすっごいシリアスで、ギャグみたいな見た目の主人公やライバルキャラにもそれなりに重い設定がある


これ
これがファイナルファンタジーなんじゃないかと思うわけ

ファイナルファンタジーといえばグラフィックやストーリーの良さにフォーカスされがちだけれど
今の時代そんなものは海外のAAAタイトルが軽く上回ってくる

じゃあそんな中"ファイナルファンタジー"のアイデンティティとはなんなのか
繰り返しになるが、それこそがこの「シリアスな笑い」なのだ



そういう意味ではFF16はかなり"ファイナルファンタジー"を体現していたしていた
ラスボス戦はまさにその集大成という感じだ

最終幻想(ファイナルファンタジー)と
究極幻想(ファイナルファンタジー)がぶつかり合い
くたばれぇ!!!!!
メキョォ!!!!!
カチカチカチカチ!(ボタン連打QTE)
99万9999ダメージ!!!


馬鹿じゃねえの

からのこのエンディング

いや、温度差エグいて(笑)

FF16はこの温度差が病みつきになる作品だ
まるでゲーム版サウナである

よりによって召喚獣合戦がないステージのSSしかなかった

病みつきになりすぎてこの赤いマークが出現するだけで興奮するようになってしまった


一周目はその暗すぎる設定で気付けなかったけど
FF16はしっかりと「シリアスな笑い」を提供しつつ
高品質なグラフィック、素晴らしいストーリーが存在する
"ファイナルファンタジー"に求められているものにしっかりと応えた作品である


■クライヴ・ロズフィールド33歳

最後にストーリーやキャラクターについて

FF16ってストーリー自体は結構シンプルかつ王道
各地のクリスタルを巡り(破壊し)、新しい技を覚え、最後はみんなの声援を受けながらラスボスを倒す

クライヴーーー!

ストーリーのテンポもいい

当初吉田プロデューサーは「FF16は復讐劇である」ということを強調していたが、実際復讐要素はそんなになかった

ほとんどのプレイヤーが「弟を殺した相手に復讐するって、イフリートはお前やん。というかどうせその弟もフェニックスなんだし生きてるんやろ」と思っていたと思うが
そのあたりはあまり引っ張らず割と早めにストーリー中でも明らかになる

顔が良すぎるロズフィールド家男子の遺伝子


発売日発表のPVではここぞとばかり復讐劇であることをアピールしているんだけど

発売直前のPVでは「これはクリスタルの加護を断ち切る物語」になってる

一応かなり初期のPVでも「クリスタルの加護を断ち切る物語」だと言われているが、締めで「復讐劇」であることをアピールしている

多分この「復讐劇」アピールはなんらかのミスリードを狙ったものだったのかもしれない

広義の意味ではこんな世界を作ったアルテマに対する復讐劇とも言えなくもないが…

サブクエもいい
ゲームのサブクエを褒めるとき
「単純なおつかいではなくサブクエストを通して世界観を深めることができる」
みたいな言葉が定型文のように使われるけど
「そうはいってもまあまあダルいおつかいだったよな」と思うことがほとんどだ

でもFF16のサブクエストは実際に「世界観…深まったわ…」と思えるものだった
(お使い要素がないとは言ってない)

FF16のサブクエストは
世界各地の問題を召喚獣の力を自在に駆使する最強のドミナントクライヴが大活躍して解決する
っていうより
本当に"手伝い"としてクライヴが活躍する
もともと各地の人々が自分で問題に直面し解決しようと行動してるんだけど、自分たちでどうにもならないところをクライヴに手伝ってもらってるという感じだ
もちろん"手伝い"としてクライヴが果たす役割はめちゃくちゃ大きいんだけど
主要なサブクエストの結末は「クライヴすげー」じゃなくて
周囲のみんながクライヴがいなくても自走していけるようになるみたいなものが多い
だからこそ世界観が深まるのだ

ただ、それはそれでゆっくりとクライヴが死に向かっていっているようで切ない…


さて、個人的にそんなにストーリーや世界観の考察語りみたいなのは好きではないので、ストーリーそのものはあんまり深堀りせずキャラクターの話をしたい

俺がFF16において最も好きなキャラクターがクライヴ・ロズフィールドだ


正直最初はファイナルファンタジーの主人公としては地味すぎて
「大丈夫?『ディシディア』とかで他の主人公達と並んだとき空気にならない?」と要らん心配をしてしまうくらいだった

濃すぎるメンツ


だが、プレイしていくうちにこのクライヴ・ロズフィールドというキャラクターはなんとも味がある素晴らしいキャラクターだと思うようになった
なのでここからはクライヴ・ロズフィールドの好きなところを語ります


①端々に育ちの良さが垣間見える
ガタイの良さとボサボサの髪と無精髭で忘れがちですが
クライヴってロザリア公国の王子なんですよね
そのおかげかマジで人格者だしノブレス・オブリージュの精神を持ち合わせている

「教養がある人間」としてヴィヴィアンの話し相手になってるって設定もいいよね

とはいえただのお坊ちゃんじゃなくて、十数年に渡りベアラー兵として、一般人以下の文字通り"底辺"の生活も経験しているし、現実のシビアさみたいなのも理解している

それでいてちょっと天然だったりお茶目なところがあって親しみも持てる

ノブレス・オブリージュの精神を持ち
現実も理解していて
親しみの持てる人間性

これってまさに理想の指導者像なんだよね
「シド」として一味のリーダーではあったけれど、クライヴは"リーダー"というよりは"指導者"の器を持った人間だ
大公の後継者はジョシュアだったけれどもクライヴがロザリア大公になる未来があったら素晴らしい国になっていたんじゃないかと思う

そもそもだが
クライヴはちょっと自分で背負いすぎな部分もあるし、ジョシュアはどことなくヤンデレ臭がするけれでも
兄弟揃って人格者過ぎる


なんであの母親からこの兄弟が産まれてきたんだ?

マジでコイツのやったことって
「子ガチャのリセマラするために、自国を夫と子供諸共壊滅させま〜す」
「魔法使えるヤツはキモいんで専用部隊作って虐殺しま〜す」
だからな

なんらかの悪人なりの大義があるとか、さらに上位の悪い奴に操られてるとかじゃなく
純粋に私利私欲と己の感情で、実際にそれを実行してしまう
「欲望」と「実行」までのハードルがバグってるサイコパス
RPG史上に残る毒親

性格が悪いだけでなく
死んだと思った息子が眼の前に現れたら「化け物ォ!」とか叫びながらビビり散らかして自害する小心さ
ドミナントに覚醒しなかったことを理由に切り捨てた長男は実は全召喚獣の力を操るミュトスパワーも持ったイフリートのドミナントであったという見る目のなさ
など、"格"も低さも凄まじい

マジでこの母親からクライヴとジョシュアが産まれてきたのがFF16最大の謎
エルウィン大公偉大過ぎる…


そんな父親に対する尊敬は当然としても、兄弟揃って母親に対してあまり憎しみを募らせてないのも育ちがいい感じがする

ベアラー兵として長年青年期を過ごしてきて精神も相当荒んでてもおかしくないのに
アナベラの悪行を目の当たりし続けても
「母上…何故こんなことを…」みたいなテンションなのいくらなんでも育ちが良すぎる
普通の人間なら
「毒婦アナベラ!!貴様などもはや母親ではない!!」
くらいのテンションでルサージュ卿と一緒にカチコミに行っててもおかしくないのに


ただ、想像でしかないけど、クライヴ達が一人っ子だったらアナベラのことモブキャラ並みに容赦なくぶっ殺してたか、そもそも殺す程の興味すら失せてたんじゃないかと思うんだよね
いくらゴミカス女でも尊敬する父の妻であり、愛する兄弟の母親
お互いに「一応ジョシュア(兄さん)の母親だしな…」という意識があったから最低限の尊重をしていただけなんじゃないかと思う
自分の母親がクソであってほしくないというより、ジョシュア(兄さん)の母親がこんなクソ女であるはずがないという意識

だから兄弟それぞれからしたらアナベラみたいなビチグソゲボゲボ女なんてどうでもいいんじゃないかと思う
アナベラの最期、ジョシュアが手を差し伸べる時の「しょうがない」感すごいし、クライヴはちょっと離れたとこで見てるだけだし、死んだあとも「眼の前で実の母親が首切って自害した息子の反応」とは思えないくらいあっさりしてる

ほんと何故この女がクライヴ達の母親なのか理解に苦しむ
絶対にクライヴが妾の子とか言われたのアナベラ自身のせいだろ
誰だって「何故あの母親からこんな子が…」って思うもん


アナベラの話が長くなったが
そんな育ちが良さを端々に感じる男が、外見はめちゃくちゃワイルドで、時々「くたばれ!」みたいな荒々しい言葉が飛び出してくるのがたまらない

ああ、もう面倒くさいから使い古された言葉で言ってしまうが
要するに「ギャップ萌え」だ

②等身大の33歳
ところでクライヴについて語るときに言っておかないといけないことがあって

それは
クライヴ・ロズフィールド、33歳!
俺、34歳!
めちゃくちゃ同世代!!!

ということだ
平均寿命が明らかに違う現代日本とヴァリスゼアの30代を同世代とするのは些か乱暴かもしれないが、まあ許して欲しい




で、同世代としてクライヴを見て思うのは
「めちゃくちゃリアルな"33歳"だなぁ〜」
ということだ

一昔前よりは改善されてきた気がするが
日本のアニメ・ゲームには
「"大人"キャラクター老け込みすぎ問題」
が存在していると思っている

日本のアニメ・ゲームでは主人公たちが10代半ばなので、20代、下手したら10代後半のキャラクターが成熟した"大人"の役割を担っている
アラサーのキャラともなれば10代の主人公たちを息子や娘のような目で見ている

でも現実的にはアラサーでそこまでのメンタリティを身につけるのは難しい

繰り返しになるがもちろん過去15歳が成人年齢で「人生40年」だった時代があったので、単純に数値上の年齢で比較はできないかもしれない
でも仮にそうした事情も鑑みた設定なのであれば20歳前後のキャラクターの成熟ぶりに比例して10代半ばの主人公たちもそれなりに大人として成熟していなければおかしい
だがアラサー程度の年齢設定のキャラが初老のおじさんみたいな役割をこなしているのに対し、10代のキャラはしっかり10代だ
なので多くの作品においては"大人"の役割を与えられたキャラクターが老けすぎていると言える

もちろん30代が「おじさん」ではないなんて烏滸がましいこと言うつもりはない
ただ30代は良くも悪くもおじさんとしては「初心者」の年齢だと感じている

現代日本の30代というと
まだ完全にマネージャーではなくプレイヤーとしての役割もこなさなければならないみたいな年齢
それに合わせて「俺がやらねば」みたいな意識もありつつも「後進の育成」にも気を配る必要がある
自分の子供は親(自分)が面倒みてないと日常生活もままならないくらい小さいので、高校生くらいの年齢の人たちのことを自分の子どものような目で見るメンタリティにはなっていない
なので十代半ばの少年少女に対しては「すごく年下の人」か「自分の子も将来あんな感じになるのかなぁ」みたいな感覚だ

ともかく30代は「自分」優先から「他者(後進)」優先への過渡期の年齢であり
自分より優先すべき「背負うもの」を持ちながらも、それの活躍を後ろで見ながら目を細めてるほど「自分」を捨てきれてないし、捨てれる状況でもない

そんななんとも中途半端な年齢が30代なのだ


で、クライヴはそんな中途半端な年齢を見事に体現したキャラクターだった
シドとして皆を率いる立場でありながら、リーダーとして指示を出すというよりも、最前線で戦っている
でも戦っているのはクライヴだけではなく、クライヴは数ある戦場の一つを担っているに過ぎない

みんなの幸せを求めながらも、それはとても控えめに、自分の幸せも求めている
でも最終的には「人が人として生きていける世界」のために自らを犠牲にして戦う

衛宮士郎のように判断基準の中にそもそも「自分」がいないのではなく
「自分」は確かに存在しているのだけれども、天秤が「他者」の方に傾いている感じが
俺の中の30代の人間としてのあるべき姿であり
クライヴをリアルで魅力的な33歳足らしめているのだ

そしてヒロインのジルも30歳
クライヴに対する深い愛情を持ちながら
クライヴの背負うものの重要さも理解していて
クライヴが死地に赴くのを許してしまう
クライヴが往かねば世界が終わってしまう
それは理解している
何故なら"大人"だから
でも完全に割り切れるほど"大人"にもなれていない
結果として送り出してしまうんだけれども!

このシーン俺も「行かないでくれ…クライヴ!」ってなってた

普通に少年少女のカップルだったらこうはならない
多分一緒に戦うことを選ぶんじゃないかと思う

でもクライヴ達は"大人"だから"託される"し"託す"
愛情や親しみもしっかりあるんだけど、それでいて"信頼関係"でも成り立つカップル像
30代の理想のカップルですよね

最後の離れた場所でジルに語りかけながら「月を見ていた」のも良すぎる

ところでクライヴの生死についてはいろんな意見があるけれど俺は死んでる派だ
最後のシーンは「(己の生命も)全てを燃やして月を見ていた」シーンであって欲しい



俺は、あんまり特定の登場人物に感情移入するタイプではないんだけれど
クライヴにはめちゃくちゃ感情移入した
FF16はクライヴ・ロズフィールドという男の魅力を最大限に引き出すための作品だった
日本のゲームで「30代のおっさんがめちゃくちゃ感情移入できる主人公」というのはなかなか稀有な存在なのではないかと思う
しかもそれが"ファイナルファンタジー"ってんだから驚きだ


ところて、ストーリーに関して忘れてはならないのが「アクティブタイムロア」である

ストーリーや登場人物や世界観についての解説がゲーム中に見れるという、説明だけ聞くと別になんてことない、『スーパーロボット大戦』シリーズ等では割と昔からあったシステムだただ他と比べてアクティブタイムロアの素晴らしいところは「(ほぼ)いつでも」「短い文章で的確な」解説が見れるということだ

大人になると集中してゲームに向き合うまとまった時間をとるのは難しい
一本のゲームをクリアするのに数ヶ月かかったりプレイとプレイの間が1週間以上空いてしまうということもザラにある
そこに加齢に伴う記憶力の衰えも重なり「あれ?今どういう流れでこんな展開になってたんだっけ?」「今喋ってる◯◯ってなんだっけ」みたいなことが頻発する
そうなるともうストーリーに没頭できない
図鑑機能があるゲームでもたいていメニュー画面か、下手したらタイトル画面まで戻らないと見ることができないので、カットシーン中にわからない単語がでてきてもどうしようもない
前述した『スーパーロボット大戦』シリーズは基本的にいつでも図鑑機能にアクセスできるが、解説文のボリュームが凄まじく、ストーリーが中断された感が強い
外部に頼り、一時停止してネットで検索するとネタバレを踏む危険性がある


それに対して「アクティブタイムロア」は一部のカットシーン以外ならいつでも確認することができるしプレイヤーがそういうときに確認したいのは「設定資料」ではなく、「概要」であるということも加味された程よい分量の解説文でストーリーが中断されている感もない
あと「思い出す」だけでなく新しい登場人物や単語について「ん?ちょっと良くわかんなかったぞ?」となったときも補足確認できるのも良い


今作はアクションゲームということで、全員にストーリーを楽しんで欲しい(エンディングに辿り着いて欲しい)という想いから、ストーリーフォーカスモードやオートアクセなど数々の支援システムがあるが個人的にこのゲームのストーリーを楽しむことに一番貢献していたのはアクション部分と関係のないアクティブタイムロアだったと思う

主人公といい、アクティブタイムロアといい
とにかく中年に優しいゲーム

アクティブタイムロアは様々なゲーム、特にストーリーとストーリーの間が強制的に1ヶ月以上空いちゃうようなオンラインゲーム等(それこそFF14なんかに)にもぜひ実装して欲しい機能だ

■FF16は「ファイナルファンタジーの最新作」として最高のものを提示してくれた


FF16は2023年に発売するファイナルファンタジーのナンバリング作品としては最善にして最高の答えを提示してくれたと思う
ファイナルファンタジーはただ面白いだけではない
ファイナルファンタジーは常に"挑戦"も求められている
しかしながら人類の可処分時間を強奪していくスマートフォンという強力なライバルが存在する中、莫大な開発費をかけてコンソールゲームで「品質」と「挑戦」を両立するのは非常に難しい

そんな外部環境の中見事に「品質」と「挑戦」の"ファイナルファンタジー"をやり遂げたFF16に
俺は今後の日本のゲーム業界への希望すら感じた

FF16は
俺の
「もう日本のゲームはもう海外に勝ち目ないよなぁ〜」
とか
「ファイナルファンタジーといっても昔ほどのブランド価値ねぇよなぁ〜」
みたいなヒネた価値観に
くたばれ!!と顔面グーパンブチ込んでくれる素晴らしいゲームだった


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