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#4 風をあつめて/はっぴいえんど

松本隆-細野晴臣は私のハジレコ「ハイスクールララバイ」を作った。
大瀧詠一は【ロンバケ】から【イーチ・タイム】をリリースし、
「風立ちぬ」「探偵物語」「冬のリヴィエラ」の作者。
鈴木茂は五十嵐浩晃や佐々木好の道内アーティストに関わっており、
松田聖子のクレジットでも認識をしていた。

83-84年当時、はっぴいえんどの4人は音楽業界の泣く子も黙る売れっ子だった。85年には国立競技場「オール・トゥゲザー・ナウ」でまさかの再結成を果たす。私の世代にとって、あの4人がバンドを組んでいたとはにわかに信じがたい事実だった。

80年代前半は伝説のバンドとして、よくラジオで特集が組まれていた。しかし、国原や玉光堂でレコードを探してみても、オリジナルアルバムは見つけられなかった。かといってセコハン屋でも在庫はない。発売当時、あまり売れていないため、さもありなんである。

廃盤状態だったのか、単純にカタログ在庫がなかったのかは不明だが、のちにサディステック・ミカ・バンドや大滝さんソロを捜す際にも同じ目に遭うこととなる。時期が悪く、謎のベスト盤しか見つけられないのである。なぜもっと早く生まれなかったのか、と悔やんでもしかたがない。ようやく、ベルウッドから出ていたはっぴいえんどのベスト盤に出会う。もうコレしかなかった。

ジャケット正面には、大きなベルウッドの樹と鈴のロゴがそびえている。ベルウッドから発売されたのは、LA録音のラストアルバムだけだが、URC時代の【ゆでめん】【風街ろまん】からの楽曲も入っていて、お得な内容だった。

気になっていた「風をあつめて」の歌詞を読んだ。衝撃的だった。ちょうど漱石の「こころ」や鴎外を読んでいた頃だったので、なぜか日本語の仮名づかいに体が反応してしまったのだ。

起き抜け、靄ごし、摩天楼の衣擦れ、伽藍とした・・・。こんな漢字を書くのだなあと感心しきりで、まったく遭遇したことのないファンタジーのような風都市の世界観を想像して聴く。路面電車が海を渡るように見えるのか。なんて美しい景色なのだろう。

細野さんの歌声もステキだった。「12月の雨の日」の大滝さんと、「花いちもんめ」の茂さんの声はどことなく似ていたが、細野さんはまったく違った。蒼空を翔けたい割には朴訥としている。いやむしろ朴訥とし過ぎていた。翔けているのではなく、翔けたいのである、まだ翔けていないのである。

細野さんの声でスイッチが入り、リスナーは蒼空を滑空できるよう背中を押してもらえるシステムになっている。声がいい人、声量がある人、音程が正確な人が、歌がうまいわけではない。聞き手の心を揺さぶることができる人こそ、歌がうまい人だと思う。細野さんの歌声に私は何度も心を揺さぶられてきた。そして、これからも細野さんのプロダクツに心を動かされ続けるのだろう。

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